クリスマス夢 | ナノ

可哀想な新入りの話

!注意!
一発オリキャラがいます。





こんにちは、皆さん。新しく白ひげ海賊団に入った、タウロンバックです。イゾウ隊長がいる十六番隊に所属してます。
長いし噛みそう。と二番隊のエース隊長に言われ、仲間から「タロウ」と呼ばれています。
今日は泣く子も黙る白ひげ海賊団のお話をしようと思います。

憧れだった白ひげ海賊団に入団できて凄く興奮したのを今でも覚えている。
だから俺も隊長や、他の隊員達の足手まといにならないよう、努力中!
特に一番隊のマルコ隊長が強く、その技は思わず見惚(みと)れてしまうほど。
エース隊長も強いし、ジョズ隊長も強い。能力者ではないビスタ隊長やイゾウ隊長、ハルタ隊長、サッチ隊長も強くて、やっぱり白ひげ海賊団は凄かった!

でも隊長だからと言って偉そうな人は誰一人いない。
新入りの俺にも気さくに話しかけてくれるし、隊員達は隊長達に遠慮することなく、皆で笑いあう日々。
家族がいない俺にとってここは素敵な家だ。そしてこの素敵な家族をくれた親父には言葉にできないほど感謝している。

しかし、俺には一つの疑問があった。
白ひげ海賊団…というより、海賊船に似つかない女の子がこの船に乗っていること。
まだ話したことはないが、よく隊長達と一緒にいるところを見かける。
不思議に思って、大部屋で一緒に寝ている先輩達にその子のことについて聞いてみた。


「ああ名前な。あいつはこの船の末っ子だよ」
「ガキのくせにこの船に忍び込んだ度胸のある奴でよ、射撃の腕もそれなりにすげェんだぜ」
「隊長達と仲いいし、俺達とも普通に話すが…。お前まだ喋ったことなかったのか?」
「挨拶はちゃんとしとけよなー。一応あいつのほうが先輩になるんだからな。多いから大変だけどよ!」
「あ、でも名前を泣かすなよ。泣かしたら死ぬより辛いめにあうぞ」
「でも可愛いんだよなー。素直でいい子だし、飯はうめェし」
「自慢の妹だよな!」


どうやら先輩達とも仲がいいみたいだ。
だから今日、一番話しかけやすいサッチ隊長とエース隊長に、あの女の子のことを聞いてみた。


「あァ、そう言えばタロウには言ってなかったな」
「だな。すっかり忘れてたぜ。エース、名前呼んでこいよ」
「おー」


エース隊長が「名前ー」と大声を出しながら歩き出すと、遠くから「何ですかー?」と大きく手を振っているのが見えた。
どうやら他の仲間達と釣りをしていたようだった。


「新入りの紹介すんの忘れてた。ほら、挨拶しとけ」


駆け寄ってきた女の子と目が合うと、女の子は照れ臭そうに笑ってエース隊長に引っ付く。
「挨拶しろよー」と女の子の頭を乱暴に撫でるエース隊長は少し楽しそうだ。


「初めまして。俺、名前って言います」
「よし、よく言えたな!」
「こ、これぐらい言えますよ…!」
「照れてるくせに」
「うるさいですよ、エースさん」
「なんだと!?」
「ざまーみろ、エース。嫌われてやんの!」
「うるせェぞサッチ!」


怒ったエース隊長がサッチ隊長の胸倉を掴むと、そこでちょっとしたケンカが始まった。
どうしたらいいか解らない俺のもとに、女の子が距離を取って近づいてきた。
シンプルな服装だし、髪の毛はボサボサだし、年頃の女の子とは程遠い感じ。
可愛いと思うけど、先輩達や隊長達が溺愛するほどではないと思う…。


「あの、名前は…?」
「あ、ごめん、なさい。タウロンバックだ、です」


一応、俺より先に乗ってるし、丁寧に話したほうがいいのかな?
でも年下だしな…。
すると女の子は不思議そうな顔をして首を傾げた。


「話し方普通でいいですよ?」
「あ、…そう。じゃあ…そうさせてもらう」
「お願いします。えっと…、タウロンバックさんは何歳なんですか?」
「タロウでいいよ」


皆そう呼んでるし、俺達家族だし。と付け加えると、嬉しそうに笑って「解りました」と元気よく返事をする。
……素直だな。素直な子供は嫌いじゃない。
女の子、名前の質問にいくつか答えてると、服装が乱れたサッチ隊長と鼻血を流しているエース隊長が名前を挟んで左右に座った。
二人を見た名前は「そこまでしなくても…」と呆れた顔をしている。


「つい熱くなっちまった」
「若いってのやだねェ…。何にも考えてねェんだから」
「サッチも途中からマジになってただろ」
「まさか。ガキ相手に本気になるかよ」
「んだと!やるかクソリーゼント!」
「次で決着つけてやるぜ!」
「はァ…。タロウさん、あっち行きましょうか…」
「え?あ、うん…。いいの?」
「いいんです。それより危ないんでマルコさんところに避難しましょう」


ね?と笑って、ごく自然に俺の手を取る。
驚いて思わず手を振りほどくと、名前は目を見開いて俺を見てくる。


「な、何で手ェ繋ぐんだ…?」
「すみません、イヤでしたか?」
「いや、…別に、そんなことは…」
「そうですか。じゃあ行きましょう!」


暗かった表情をすぐに明るくさせ、また俺の手を取る。
……海賊なのにこんな甘ちゃんでいいのか?
疑問に思ったけど、イヤな気分にはならなかったのでそのまま手を繋いで、甲板を歩き出す。
途中仲間から、「死んだらちゃんと海に流してやるからなー」や「新入りのくせに度胸据わってんな…」と言われた。
い、意味が解らない…。名前と手を繋いだらダメなのか?でも名前から繋いできたわけだし…。


「あ、マルコさんいた!イゾウさんもいる!」


悶々と考えていると、名前がマルコ隊長とイゾウ隊長を見つけた。
もう片方の手でブンブンと振りながら、二人の名前を呼ぶと、二人は気づいてこっちを見る。
と、同時に殺気も向けられた。何で!?


「テメェクソガキ!名前に何してんだい!」
「名前ちゃんから離れろ!それとも殺されてェのか?!」
「ひいいいい!」


マルコ隊長に引き離され、イゾウ隊長に銃を突きつけられた!
意味わかんないから!俺何もしてないから!


「名前、あいつと何してたんだい?何で手なんか繋いでた?」
「挨拶してたんですけど、エースさんとサッチさんがケンカしたのでタロウさんと逃げて来たんです。タロウさんもいい人ですね!」
「そりゃあどうだか」


名前を見せないよう背中で隠し、ゆっくりと振り向くマルコ隊長。
その目は獲物を見つけ、今まさに捕食しようとする猛禽類の目だった。
殺される!と覚悟して生唾を飲み込みと、その間にイゾウ隊長が割って入ってくれた。


「わりィなマルコ。俺んとこの新入り、まだ躾不足なんだ」
「ちゃんとしろよい。それとも俺がしてやろうかい?」
「手を借りるまでもねェよ。さァタロウ、今から楽しいお勉強タイムだ。しっかり、みっちり詰め込んでやるから覚悟しやがれ!」
「は、ハイッ!」


その場に正座させられ、銃を突きつけられながらこの船でしていけないことを教えてくれた。
最初は「白ひげ海賊団の掟」だったが、しだいに「名前との関わり方」へと変わっていく。
時々イゾウ隊長による「可愛い末っ子の話」を聞かされたが、足が痺れてそれどこではない。
しかし話を聞かないと発砲されるので、涙を飲んで耐える。


「つーわけだ。しっかり覚えたな?」
「わ、わかりました…。気をつけます…!」


ひとつ。名前に仕事を押し付けてはならない。自分のことは自分でしろ。
ひとつ。名前を泣かせてはならない。泣かした場合すぐに隊長に理由を報告すること。
ひとつ。名前を甘やかしてはならない。甘やかしていいのは親父と隊長とナースのみ。
ひとつ。名前の前で下ネタや性的なトークはするな。殺すぞ。
ひとつ。名前の教育上よくないものは持って入らない。外で盛れ。
ひとつ。名前を一人の女性と見た場合、テメェの命はないと思え。


「ひ、一つ質問が…」
「おう、何だ」
「名前が甘えてきて「アァ?」もしもの話です!もしもの話!「ッチ」(怖い…)もし名前が甘えてきて、それを断って泣いた場合、……どうなるんでしょう?」


ようやく足の痺れも抜け、疑問に思ったことを質問すると、イゾウ隊長は眉間にしわを寄せ考える素振りを見せる。
末っ子バカな隊長達が怖い…!俺の今までの隊長達に対するイメージを返せ!返して!


「テメェが悪い」


キッパリと言い放つイゾウ隊長に、「名前に関わるまい」と心の中で強く決心した。



2010.12.22




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