クリスマス夢 | ナノ

依存症の人の話

「名前ー。あ、おい。名前見なかったかい?」
「名前ならサッチ隊長と食堂にいましたよ」
「そうかい」


溜まっていた仕事をようやく終わらせ、きっと寂しがっているだろう名前を探しに甲板に出た。
机にかじりついていたから、太陽がいつも以上に眩しく感じられた。
広い甲板を名前の名前を呼びながら探しているが、名前はどこにもいない。
これぐらいの時間だとエースやハルタと昼寝をしているはずなのに、いつもの場所に行ってもいなかった。
近くを通った仲間に名前の居場所を聞くと、食堂だと言われ、踵を返して食堂へと向かう。
よりによってサッチとか…。
あいつは名前に余計なことばかり言うからあまり一緒にいてほしくない。
歩くスピードをあげ、食堂へと急いで向かう。
モビー・ディックは広くて便利だが、こういうときは困る。


「名前」
「おー、マルコ。久しぶりだな。仕事終わったのか?」


扉を開けると同時に名前の名前を呼んだが、海賊船に不釣り合いな容姿はどこにもおらず、何人かの仲間とサッチだけがいた。
舌打ちをすると「え、何でいきなり」とサッチが言ってきたが無視。


「サッチ、名前見なかったかい?」
「名前なら結構前にビスタと出て行ったぞ。なんかマルコがどうとかって言ってた気がする。それより見ろよ!俺の最新さ「そうかい。ありがとよい」


名前の居場所が解ればそれでいい。サッチに興味はねェよい。
食堂を出て甲板に戻り、近くにいた仲間にビスタと名前を見なかったか聞くが、誰も知らないと首を横に振る。
サッチと一緒にいるよりビスタと一緒にいるほうが安心だが、ビスタは無駄に名前を甘やかすからダメだい。あいつは保護者向きじゃねェよい。


「俺がどうとかって言ってたな…」


そう言えばサッチがそんなことを言ってた気がする。
……そうか、やっぱり寂しがってたのかい。それもそうだ、ここ二日ぐらい挨拶もロクにしてねェからな。
だからこそ早く見つけて顔を見せたいのに、……どこ行ったんだい…。
甲板を見渡し、名前がいないことを簡単に確認して、ビスタの部屋へと向かう。
ビスタは絵が得意だから名前と一緒に部屋で絵を描くことがある。
そんなことしなくても、名前は絵がうまいのにな。(親バカ発動中)


「お、マルコ」
「ビスタ。名前は一緒じゃねェかい?」
「名前ならちょっと前にイゾウと修行するって甲板に行ったぞ」
「またかよい…」
「そうだ。名前が欲しがってたクレヨンとスケッチブックを買ってやったからな」
「あれほど甘やかすなって言ったろい。何考えてんだい」
「名前の可愛さに負けて等身大のチョッパーマンぬいぐるみを買ってやったお前に言われたくない」


ビスタの部屋に辿り着く前にビスタ本人と廊下で出会った。
その隣に名前はおらず、脱力感に襲われた。どこ行ったんだい、名前…。

会いたいと思って探しても、どこにもいない名前に酷い喪失感を覚える。
早く会いたい早く。と心と身体が焦っても、名前はどこにもいない。すると余計に会いたくなり、足は甲板へと向かいだす。
イゾウと修行ならモビー・ディックの船首でするはず。


「名前ーッ!」
「うるせェなァ!テメェの頭の中は名前ちゃんのことしかねェのかよ!」
「マルコは名前バカだからなァ…」


きっといると思った船首にはイゾウとハルタが武器の手入れをしながら座っていた。
今までのパターンから、名前がいないのはなんとなく予想ついていたが、やっぱりいないと解るとガックリと肩を落としてしまった。


「で…、名前はどこ行ったんだい」
「名前ならエースと一緒にマルコを探しに行ったぞォ」
「まだ修行の途中だって言うのにあのバカが邪魔しに来たんだ。早く名前ちゃんに会って用事終わらせてこいよ。修行の時間が減る。俺との時間が減る」
「名前がどこにいるか解らんねェんだよい」
「マルコの部屋に向かったんじゃねェのかァ?」
「だろうな。用事が終わったら修行の続きしようね。って名前ちゃんに伝えとけよ」


イゾウの言葉を遠くで聞きながら、自室へと戻る。
ああ、何だってこの船はこんなに広いんだい。この距離に焦らされる。

それにしても今さっきから全く名前に会えない。
もしかしてこいつら(隊長達)の陰謀かなにかかい?


「あ、マルコさんだ!エースさん、マルコさんいましたよ」
「おー。どこ行ってたんだよマルコ。ずっと探してたんだぜ」
「名前ッ!」
「うわッ!」


ようやく、エースと手を繋いで甲板を歩いていた名前を発見し、名前と目が合う。
久しぶりに見た名前の笑顔に今まで溜まっていたイライラや喪失感などが一気に吹っ飛び、安心感に包まれる。
駆け寄り、エースと引き離すように抱き上げる。
隣にいたエースが何か言っていたが、名前との時間のほうが大事だい。


「よかった、やっと見つけたよい」
「俺もマルコさんのこと探してたんですよ。お仕事終わりましたか?」
「ああ」
「いいから名前を離せよ!つーか下ろせ!」


エースに言われ、渋々名前を下ろしてしゃがんで視線を合わせる。


「今日は何してたんだい?」
「忙しいマルコさんの為にサッチさんと疲労回復を促すお茶を淹れる練習したり、ビスタさんからクレヨン貰ってマルコさんの絵を描いたり、イゾウさんとハルタさんと修行してました!エースさんとはマルコさんが仕事終わったって聞いたから一緒に探してたんです」


そう言って青い鳥が描かれたスケッチブックを広げ、「これマルコさんです」と自慢げに笑う名前を見て、胸がジーンと温まる。
いつだって自分や相手のことばかり気遣う名前が可愛くて可愛くて。絶対いいお嫁さんになるよい。と言おうとしたが、喉の奥に引っ込める。嫁にはやらん。


「名前、マルコ見つかったし食堂行こうぜ」
「そうですね。マルコさん、お茶淹れるで食堂行きましょう」


手を取り、引っ張りながら前を歩く名前。
反対の手はエースと繋がっていて少しイラッとしたが、まァいいよい。


「仕事終わったから構ってもらえるんですよね?」
「勿論だい」
「やったー!」
「名前、覚悟しとけよ。二日間もお前に会えなかったマルコはデレデレに甘い」


二日も、会えなかったんだい。
どんなことも聞くに決まってるだろい。



どこにもいない君に怯える




2010.12.21



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