80万打部屋 | ナノ

今日は真面目に戦闘手術

!ワンクッション!
コネタ「患者を求めて」シリーズより。
白ひげ医者男主で家族夢。

手術的な意味での軽いグロい表現あり。





大砲音や銃撃が轟く海上。
白ひげ海賊団にケンカを売ったバカな奴らに、目に物を見せてやる。と隊長達を筆頭に、団員達が嬉々として敵船に乗りこむ。
モビー・ディック号は穏やかな時間が流れ、敵船では煙があがったり、悲鳴が聞こえたりと、もう既に混乱しているようだった。


「子供のようにはしゃぐマルコ達も可愛いな!」


モビー・ディック号でお留守番をしているのは医者の名前と船長の白ひげ。白ひげを守るために一番隊の隊員も複数人いる。
うんうん。と頷き、遠目で敵船の様子を見ていたが、次第に胸がうずうずしてきた。
医者である前に自分も海賊だ。本音としては自分も一緒に戦いたい。
だけど医者でもある。医者はケガをした皆を助けるのが役目。


「テメェも行ってくりゃあいいだろうが」
「ダメだ、おやっさん。俺が行ってる間にケガをした仲間が来たらどうするんだ!俺は医者だからな!」
「たまには暴れねェとストレス溜まるぞ。ストレスを溜めるのはよくねェんだろ?」


常日頃から仲間達の健康に気を配っている名前。
健康とは、「心」も「身体」も健やかであるべきだ!と言って、色々なことを考えては実行しているのだが、その行動で皆にストレスを与えているとは名前本人、気がついていない。


「さすがおやっさんだ!言うことが違う!そして格好いいぞ!」
「ああ、いいから行ってこい。テメェが行く前にあいつらが全部倒すぞ」
「容赦ないマルコ達も格好いいな!じゃあおやっさん、俺も行ってくる。もしケガ人が帰ってきたら教えてくれ!どこにいてもおやっさんの声なら耳に届くからな!」
「グララララ!名前の耳は便利だな」
「おやっさんを愛してるからな!」


白ひげにウインクをして、名前も敵船へと向かう。
モビー・ディック号の手すりからトーンと空へ飛び、隣接する敵の船へと降り立って、自分も獲物を探すのだが、暴れまくっている隊長達のせいで立っている者は誰もいなかった。


「これはエースだな。さすがに若いだけあって元気だな!その元気っぷりがまたいい!」


エースやマルコがつけたであろう焦げた跡や、爪跡に満足そうに笑って次の船へと向かう。
その調子でどんどん進んでいくにつれ、銃声などが強くなる。
敵の悲鳴を聞いて興奮するのも解った。やっぱり自分は海賊なんだと自覚して、一番激しい船へと渡る。


「おー…!皆やってるな!どいつもこいつも格好よすぎるぞ!」


戦う仲間を見て、今さっきとは違う意味で興奮する名前。
その油断をしている名前を狙って、剣を持った敵が横一閃に攻撃。
気配で解っていた名前は前へと倒れ攻撃をかわす。しかし少し遅かったせいで後ろの髪の毛が何本か切られてしまった。
そのまま甲板に両手をついて、地から足を離し、敵の顎に蹴りを食らわす。


「脳震盪には勝てねェだろ?」
「―――おい名前!」
「あ、エースじゃないか!どうした、ケガでもしたか?それとも俺に会いたかったのか?!できれば後者であってくれ!」
「今ほどケガしてェって思ったことはねェよ」


人体の急所、顎を蹴られた敵はその場に倒れ、名前はトドメを刺すため白衣の裏側からメスを取り出したのだが、後ろからエースに呼ばれ嬉々とした顔でメスを戻した。


「つか何でテメェも戦闘に混じってんだよ!」
「ムラムラした。あ、間違えた。モヤモヤしたからストレス発散だ!」
「お前マジでぶっ殺すぞ」
「ああ、エースにならいつでも殺されていい!」
「一人で死ね」
「最近のエースはマルコに似てきたな!少し前までは俺から逃げていたのに…。ああ、人間の成長って素晴らしい!」


ここが敵船であるにも関わらず、名前は自分ワールドを全開に広げた。
話しかけるんじゃなかった。と後悔するエースだったが、本当に遅い。
一人で喜んでる名前を無視して、戦闘に戻ろうとしたのだが、敵が名前を狙って銃を発砲してきたので、名前の腕を掴んで攻撃からかわす。


「エース…。お前から触ってくるなんて初めてだな!今日はお赤飯だ!」
「黙ってろよ変態!」


イライラをぶつけるように敵を倒し、名前の腕を掴んだまま少し離れた位置で戦況を見ているマルコの元へと向かった。
マルコが名前の存在に気がつくなり、露骨に嫌そうな顔をしたが、名前にはそんな顔すら萌えらしく、さらにテンションをあげた。


「テメェ何で来たんだよい…」
「戦況を読むマルコも格好いいな!さすがだマルコ!格好いいぞ!」
「エース、何で連れてきた」
「だって邪魔だったから…」
「心配してくれるのか!?エースはなんていい子だ!さあ、頭を撫でさせてくれ!」
「止めろ!マジでテメェも一緒に燃やすぞ!」
「エース、面倒は最後まで見ろよい」


そう言ってマルコは二人を邪魔だと言わんばかりに小言を呟きながら手で払った。
そしてエースは知らない。名前は実は結構強いことを。
とは言っても能力者には勝てないが、自分や仲間を守るために日々己を鍛えている。
演習だってちゃんと参加しているし、白ひげに見てもらうこともある。
だからそこらへんの海賊には負けない自信もあった。


「いいか名前。お前は医者だ。医者は下がってろ!」


名前の戦う姿を見たことがないエースは、名前をその場において「大人しくしてろ」と何度も言いつける。
名前はエースの言うことに全部「解った」と返事をして、笑顔を向けた。心配してくれるのが嬉しいし、成長したエースを見れて嬉しい。
言葉には出さないが名前の考えていることを全て感じとったエースは、げんなりとした様子で背中を向け、再び戦場へと戻ろうとした。


「あとからちゃんと迎えに来るからな」
「エース…ッ!なんてたくましい背中なんだ!今の瞬間でお前に惚れてしまった。さあ抱き締めてくれ!」
「邪魔だって言ってんのがわかんねェのか燃やすぞ!」
「恋にいつでも焦がれている」
「うっぜェエエエエ!」


この場に似つかない会話を聞いていたマルコも、脱力する。
その油断をした瞬間をつかれ、銃弾を何発か浴びてしまった。
いくら再生、復活をするマルコだが、撃たれれば痛いし、すぐに止血するが血だって出る。
銃弾が背中を突き抜け、マルコの血が、近くにいた名前の頬に少し散った。
隣ではすでに青い炎に身をまとったマルコが再生していた。


「……………おい…」


血を浴びた瞬間、目を見開いた名前。
マルコに銃弾を浴びせた犯人を探し当て、ジッと見つめる。


「マルコ、大丈夫か?」
「ああ。それよりここから避難するぞい」
「へ?何で?」
「いいから他の仲間も避難させろい」


言うだけ言ってマルコは鳥になって近くにいた仲間をその場から連れ去った。
エースも混乱しながら仲間を集め、マルコの元へと避難する。
その場には複数の敵と名前しかおらず、敵も混乱している様子だった。


「マルコ、名前一人にしていいのか?」
「巻き込まれるよい」
「巻き込まれる?」
「手術。っと…、こっちは風上だよな?」
「あ…ああ」


マルコ達が避難している場所は名前の風上で、タイミングよく名前に向かって強い風が吹いた。
ゆらり…と立ち上がり、両手を白衣裏に忍ばせ、肩を震わせる。


「よくも…よくも俺の大事な家族に…!」


名前が指に挟んで取り出したのは、大きいまち針。
顔をあげ、敵を睨みつけるとその場にいた敵全員が膝を折って甲板に倒れ込む。


「俺の家族に何すんじゃこの小童がああああ!」


言うや否やまち針を敵の服めがけて投げつけ、甲板に張り付けた。
身動きが取れなくなった敵も混乱するが、その様子を見ていた仲間達も混乱、動揺している。


「小童にはちゃんとしつけしねェとな…。術式・悪い子にはおしおきを」


今度は使い慣れたメスを取り出し、敵の腹部周辺の衣類を裂く。それと同時に腹部も何十センチと大きく裂いた。
血が溢れ出し、敵は慌てふためくが、痛みを感じない。


「名前の奴、何してんだ?」
「だから言ったろい。手術だって」
「……マジでしてんの?」
「さっき風が吹いただろい。そのときに強烈な麻酔を浴びせた。痛みは感じないが、眠ることができない。敵用の麻酔だって言ってたよい」
「実験が好きだって言ってたけど…。このためか!」
「変態だけど、それなりの仕事はしてるよい」


早業でたくさんいる敵の腹部を裂いたあと、中身の内臓が見えるよう鉗子で牽引する。
露骨に見える人間の体内に、仲間の何人かが目を反らし、エースも困惑気味にマルコを見る。


「あいつは優しいからな。殺すことができねェんだい。だからああやって戦意を喪失させている」
「いや、もっとやり方があるだろうよ…」
「「無料体験って素敵な言葉だ!」って言ってたのを思い出したよい」
「殺すことができなくても、人間として終わりだろ」
「「腕が落ちない為にも定期的にしないとな」とも言ってた」
「人体実験か…」
「家族以外に興味ねェ奴だからな」


精神的に追い詰められ、「助けてくれ」と泣き喚く敵に名前は、


「俺の家族に手ェ出すんじゃねェぞ!」


と珍しく怒鳴った。
頷く敵を見て、あっという間に手術用縫合糸で傷を縫合する。
すると敵はそのまま意識を飛ばして甲板は静かになった。周囲の敵船は未だ銃撃戦などが行われている。
しかしそれも静まり、白ひげ海賊団が全ての船を鎮圧することができた。


「マルコ!傷は大丈夫か!?」
「無傷だい」
「ああ、よかった…。血が飛んできたときはどうしようかと思った…」
「俺が殺られるわけねェだろい」
「そうだな!あ、頬についたマルコの血は頂こう。貴重だなから」
「海に投げ落すぞ」
「背中からドーン!といってくれ!」


手術という名の名前式戦闘術が終わり、すぐにマルコに駆け寄る。
いつものように疎まれながらも、名前は安心したかのように何度も「よかった」と呟いた。
マルコは隊員達に指示を出し、積み荷を運ぶ者と敵を縛りつけるものに分かれさす。
名前はケガ人がいないかそこらへんを歩き出し、目を光らせる。


「―――サッチがケガをしたって!?」
「は?」


近くで敵を縛っていたエースにはそんな声、聞こえなかった。
しかし名前はすぐに走り出し、隣の船へと向かう。
エースも名前を追いかけ、隣の甲板を見ると、サッチが軽いケガを負っていた。
あれぐらいなら大丈夫だろ。と、後ろを歩いていたマルコを捕まえ、二人の様子を見る。


「サッチ、大丈夫か!?さあ、俺に診せてみろ!この俺に全てを委ねてくれ!」
「服を脱ぎながらそんなこと言う奴に安心して診せれるか!何で服脱ぐんだよ!」
「熱いんだ!」
「テンションあがりすぎだバカ野郎!」


どこからか取り出した包帯や傷テープ、消毒を手にしたまま興奮気味にサッチを押し倒そうとしていた。
嫌がるサッチを見て、無関係なエースとマルコは人ごとのように「可哀想に」とだけ呟き、エースが名前をジッと見つめる。


「名前の性格があんなんじゃなければいいのにな」
「何でだよい」
「だって普通に強いし、腕もいいし」
「言うなエース。誰もが思ってることだ」


それでも公開手術は二度と見たくない。と苦笑するエースだった。


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