兄と三人 入団したてのマルコ、サッチ、イゾウが白ひげ海賊団にすっかり慣れた頃。 名前は変わることなく毎日をのんびり過ごしていた。 いくらマルコに「仕事しろ」と言われようが己の時間を大切にする。 いくらサッチが「俺の部下になれ」と言おうが返り討ちにして力を見せつける。 いくらイゾウに「邪魔」と罵られようが名前はいつものように頭を撫でてあげる。 いくら三人にバカにされようが、彼から三人を拒絶することはなくなった。 「テメェも随分丸くなったじゃねェか」 「父様。その言い方だとまるで昔の俺が不良だったみたいじゃないか」 「そうだろうが」 いつもは人型で過ごしている名前だが、今日は気分を変えて獣型の白狐タイプへと変身していた。 今いる海域は人型だと少し肌寒い。しかし、狐へと変身すれば快適な温度へと変わる。 今日もたっぷり寝たというのに、瞼は次第に重くなり、深い眠りへと旅立った。 「お前んとこの隊員も驚いてたぜ」 「コンコン。それは心外だな。俺は弟思いのいい兄で有名だ」 「グララララ!まァ今はそういうことにしといてやらァ」 次に目を覚ませば、背中とお腹と尾に違和感を覚えた。 眠気眼でまずはお腹を確認すると、自分を抱き枕のようにして寝ているサッチがいた。 分身を作って今の状況を第三者の目で見ると、尾に絡まって寝ているイゾウと背中合わせで寝ているマルコがいた。 多少のことでは動じない名前だがこれには驚いた。何せあの三人が自分に近寄ってきただけでなく、一緒に寝ているのだから。 この状況を見た白ひげも楽しそうに笑いながら名前をからかう。 「冗談はそれぐらいにして。どうしてこうなったか父様は解るか?」 人型に戻ることなく、狐の姿のままで白ひげに経緯を聞いたが、白ひげも今来たばかりなので解らないと首を横に振った。 「何にせよ、これを機にもっと弟達の面倒を見たらどうだ。まんざらでもねェんだろ」 「コンコン。気分がいいときだけな」 それだけ言って名前は再び目を閉じた。 ▼ 「名前ー、どこだー?今日こそ俺が勝ってお前を部下にしてやるから勝負しろォ!」 「サッチ、うるせェよい。仕事は終わらせたのかよい」 「当たり前だろ!今日の四番隊は掃除だから早めに終わらせたんだぜ!」 「それでちゃんとできてなかったらオヤジに言いつけてやる」 「そういう一番隊は仕事終わらせたのかよ!」 「今日の一番隊はお休みだよい」 「あの野郎は毎日がお休みだけどな」 「あ、そうだ。なァ名前を知らねェか?今日こそ俺が勝つんだ!」 「知らねェし知りたくもねェ」 「あいつなんて隊長辞めちまえばいいだい」 「何で二人は名前に対して冷たいんだ?隊長だろ?」 「好きで入った訳じゃねェよい」 「俺も」 「でもあいつ強ェじゃん。俺だったら毎日修行つけてもらうのになー…。あ、いた!」 「騒々しい奴だよい…」 「全くだ。ろくな大人にならねェな」 「違いねェ」 「なんだよー、寝てんのかよ。いっつも寝てるよな」 「……」 「………狐って温けェのかな?よし…」 「おいサッチ、お前何してんだい?勝負するんじゃなかったのかよい」 「やべェぞマルコ!こいつ温けェ!もこもこだ!」 「男にくっついて何が楽しい」 「イゾウも寝てみろって!結構気持ちいいぞ!」 「断る。こいつに抱きつくなんて想像しただけでも吐きそうだ」 「さて俺は本でも読みに行くかい」 「マルコもこい!」 「イヤだって言ってんだい。おい、離せよい」 「抱きつくのがイヤならクッションにすりゃあいいだろ。イゾウも尻尾ならいいだろ?」 「…。まァ枕にしてやらんこともねェな」 「そうだな、背もたれに丁度いいよい」 「俺ここで寝よー!」 「「(これぐらいなら甘えたってバレねェよな…)」」 ( ← | → ) ▽ topへ |