狐のお兄ちゃん | ナノ

兄とサッチ

「名前って結構強いんだな…」
「コンコン。少しは尊敬したかい?」
「尊敬はしてねェ!」
「コンコン」


無表情のまま声だけで笑えば、隣にいたサッチも歯を出して笑った。
尾骨から生えている狐の尾でサッチのわき腹をくすぐると、大口を開けて笑いだす。


「おい名前!それはズリィ!」
「狐だからしょうがないよ」
「それとも大量に分身して虐めてあげようかい?」
「サッチは虐められるの好きだもんな」
「もしかしてマゾヒストなのか?俺はどっちかって言うとサディストだから楽しいぞ」
「分身すんじゃねェ!」


悲鳴に似た叫び声を出すも、近くにいた仲間達はサッチを助けようとしなかった。
これがサッチと名前の関係で、このあとサッチが名前にケンカを売るだろう。と皆仕事に戻る。


「テメェ!今日こそぶっ飛ばしてやるから勝負しろォ!」
「じゃあ今日は特別に人型で戦ってやる」
「言ったな?俺が勝ったらお前は今日から俺の部下だからな!」
「コンコン。それでいいよ」


珍しく楽しそうな表情を浮かべる名前。
立ち上がり、サッチに背中を向けて少し離れる。


「さあ、どっからでもかかっておいで」


狩衣で隠れていた手を出し、広げてサッチを誘う。
一度口角を舐めたサッチは甲板を蹴り、正面から名前に向かって突撃した。
名前は左に倒れるように避け、サッチの首根っこを掴もうとしたのだが、しゃがみこまれ掴むことができなかった。


「くらえ!」


しゃがみこんでからの必殺パンチ。
「勝った!」と言わんばかりに笑うサッチだったが、名前はそのタイミングに合わせて空へと跳ねる。
一瞬当たったのかと勘違いしたが、手には感触が残っていない。
すぐに名前の元へと駆け出すのだが、足がすくんでしまいその場に立ちつくす。


「ぐっ、…んだよこれ…」


離れた場所で佇む名前。彼の背中からは異様なオーラが放たれていた。


「人型であっても野狐の覇気は出せるんだ。悪い」


金縛りにあったかのように固まるサッチに近づき、デコピンを食らわすと後ろに倒れる。
甲板に背中がついてからようやく金縛りから解放された。


「ちっきしょー…やっぱ名前はズリィ!」
「能力者になればお前も強くなるだろ」
「じゃあ俺も早く悪魔の実見つけてお前をぶっ飛ばしてやる!」
「コンコン、楽しみにしとく」


頑張れよ。と優しく声をかけながらサッチの頭を撫でてあげた。



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