女主男主コネタ | ナノ

コネタ部屋
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 グータラ海軍日誌。その15

年に一度、「海軍による海軍のための運動会」というものがある。
「運動会」なんて可愛い言い方だが、演習を含めた熾烈な運動会である。
日々、どれだけ己を磨きあげ、どれだけ戦い慣れているかを試される競技で、三チームに別れて一位を決める。
一位になったら、それはもう言葉では表せないほど「いいこと」があり、最下位になったら一年間雑務の仕事が押し付けられるという。
なんてことがあるが、子供ではないのだから必死になることなんてない。赤犬チーム以外は。
赤犬チームに所属している海兵達は赤犬の恐ろしい殺気にあてられ、色んな意味で必死。負けたりでもしたらどんなめに合うか考えただけでも恐ろしい。
逆に青雉チームはゆるい。まあ負けてもいいじゃね?の雰囲気で和気藹々と毎年この行事を楽しんでいる。
それは黄猿チームもそうで、大将である黄猿は「ケガしないようにねェ〜〜」と優しかった。

そんな三チームによる運動会が今年も始まりました。


『選手宣誓。代表、クザン大将』
「よっこらしょっと…」


アナウンスに従い、青雉がだらりだらりと列から抜け、マイクが置かれた台へと向かう。
ついたと思ったらすぐに横になり、今回雑用をしているコビーが慌ててマイクの高さを青雉に合わせた。


「あー…なんだっけな。ああ、宣誓すんだろ?」
「は、はい」
「あれだ、あれ。俺昨日その紙読んだんだ。えーっと……………」
「ちょ、寝ないで下さいよ!」


宣誓だと言うのに台の上で寝息を立て始める青雉に海兵達は騒ぎ始める。
これが終わらないと運動会が始められない。


「はい!」


そんな中、一人の青年が腕をピンッと伸ばし、大きな声で何度も「質問いいっスか」と言い続けた。
いい加減うるさい青年に、最高責任者であるセンゴクが「なんだ」と溜息混じりに青年の名前を呼ぶ。


「すみません、能力者が能力使うのってありなんですか?」
「ああ、ある程度の使用は可能だ」
「それって卑怯じゃないっスか?能力者じゃない人間のほうが多いんスよ?能力にかまけてどっかのバカ上司が命を狙ってくることだってあるんス」
「……」
「ほらめっちゃ睨んでる」
「そうだな…。能力は今回禁止ということにしよう」


センゴクの発言に、数名が舌打ちをし、青年を睨みつけた。


「青雉、起きろ!」
「―――あれ、センゴクさん。どうしました?」
「さっさと宣誓せんか」
「ああ、解りました。まあ…、それなりにやります」


ダラけきった宣誓後、モモンガ大佐によるラジオ体操が始まり、すぐに第一種目が始まった。
第一種目は二人三脚。青年も出場することになっており、その相手は彼の上司だった。


「マジ勘弁っス。なんでスモーカーさんと…がたいのいいおっさんと組まねェといけないんスか…!」
「それはこっちの台詞だ。おい、俺に一切触れるな。解ったな?」
「足組む競技だって言ってんだろ!?どうすんだよ!」
「足は百歩譲って我慢してやる。身体は絶対に触れるな」
「俺様とかマジねェよ…。そんなんだから上のおっさん達に嫌われるんス。つーかそれこっちの台詞っス。どうせならヒナさんと二人三脚したかった…」


文句を言いながらも二人の足を布で巻き、順番を待つ。
布で結んだ状態でスタートラインから100M走るだけの至ってシンプルな競技。
今のところ赤犬チームが一位をかっさらっており、二位に黄猿チーム、三位に青雉チームと続いている。


「で、どっちから先に足出すんスか?」
「左だ」
「了解」


二人の順番がやってきて、スタートラインに立つ。
肩を組むことも、腕を腰に回すこともなく走る準備を整える二人。
そして、審判の合図とともに二人は一歩を踏み出し、


「いっ!?」
「あ!?」


同時に、倒れた。
左右にいた相手選手は転ぶことなく二人の前を走り続けている。


「ちょ、何してんスかスモーカーさん!左足だってあんたが言ったんだろ!?」
「俺の左足からってことだ!だからテメェは右足からだ!それぐらい理解しろバカ!」
「はああ!?お前どんだけ俺様だよ!ふざけんな!足いってェし!」
「いいからさっさと起き上がれ!」
「じゃあ少しは手伝えよ!あんた無駄にでけェんだから動きにくいんだよ!」
「あ?手伝って下さいだろ?」
「うっわ、ムカつく。絶対ェ言わねェし。ふんっ!―――だー、くそ!起きれねェ!マジこの上司邪魔!」
「さっさと起き上がれ。テメェのせいで走れねェんだ」
「何でもかんでも俺のせいにすんな!メタボになって死ね!」
「……」
「うおおおおお!まだ起き上がってもねェのに走り出すなチキショー!」
「ふははは!テメェがゴミのようだ!」
「覚えてろよ!」


二人三脚の結果。
一位、赤犬チーム。二位、黄猿チーム。三位、青雉チームとなった。
次の種目は玉入れ競争。
前の競技で片足を負傷した青年だったが、青雉、スモーカーに「出ろ」と命令されたので治療される前に駆り出された。
ブツブツと文句を言っていたが、先ほどの怒りをこの競技で発散させることにした。
競技が始まる前にたくさんの青い玉を持ち、投げる準備は万端。


『始め』


審判の声に、チームメイトは持っていた玉をカゴめがけて投げ入れる。
しかし、青年だけはカゴを狙うことはなかった。


「死ね!今さっきの恨みだ!」


同じく参加していたスモーカーに向かって玉を剛速球で投げつけた。
しかし、煙の能力のせいで玉は身体を通り抜ける。
意味がないというのに青年はスモーカーに向かって投げ続ける。


「おい鬼上司!能力は禁止だって言ってんだろ!?」
「クソ部下!玉はカゴに向かって投げやがれ!どんだけテメェの脳みそは退化してんだ!」
「ああ、それはサーセン。カゴってスモーカーさんのことかと思ってました。あながち間違ってないと思うんスよ。いいからさっさと能力解けよ!」
「誰が解くか!」
「センゴク元帥!ルール違反がここにいるんスけど!」
「ルール違反はいかんな。青雉チーム、失格」
「おいバカ!何自チームを潰してんだ!」
「正直、チームの勝利よりスモーカーさんを潰すことのほうが大事っス」
「ふざけんなクソ野郎!」
「あららら、まーた最下位か…。お前らもっと頑張ろうぜ」
「「寝転んでるあんたにだけは言われたくない!」」
「手厳しい部下だな」


玉入れの結果。
一位、黄猿チーム。二位、赤犬チーム。三位(失格)、青雉チームとなった。
次の競技は借り物競走。しかし、青年は最初の競技より引きずっていた足の治療のため欠席。
代走としてたしぎが走ったのだが、持ち前のドジっぷりを披露し、あえなく撃沈。
今回も三位となった青雉チームに、スモーカーは青年を殴りつけた。


「テメェが走ってりゃあ今回は勝ててた。この役立たずが」
「ふざけんなよ煙野郎!俺ケガしてんの!煙のお前と違ってケガするの!もっと人間を労われチキショー!つーか全部の競技に参加させるってどうよ!」
「それしか取り柄がねェから仕方ねェだろ。四の五の言わずさっさと行ってこい!」
「お前マジでお昼覚えとけよな!」


スモーカーの命令により、午前の競技は全部参加した青年。
特に走る競技は得意で、誰にも負けることなく一位をとり続けた。
そのたびに救護班テントにいるヒナのところに行き、自慢げに話す。
またそのたびにスモーカーに殴られ、青雉チームのテント内に強制送還された。


「学習しない子だねェ」


ヒナの隣で見ていたつるもただ溜息しか出てこなかった。
そんなことがあった午前も無事終わり、今はお昼ご飯。
各要所に設けられた出店や、持ってきたお弁当と広げ、楽しい時間を過ごす。
とは別に、相変わらずギスギスとした雰囲気を繰り広げている一角があった。
メンバーはスモーカーとその部下とたしぎといったいつものメンバー。
仲が悪いというのにこれである。


「俺、今日の為に頑張って作ってきたんス」
「前の記憶からしてすでにいい予感はしねェな」
「少佐が作られたのですか?実は器用なんですね」
「実は。は余計だ!いいから黙って食え!」


重箱を三つほど取り出し、意気揚々と開けると、真っ白なもの……白米が所せましと敷き詰められていた。
前回より酷い手抜きに、スモーカーは一つ葉巻を落とした。


「頑張って敷き詰めました!」
「いつも思うんだがよォ…。テメェの「頑張る」は使いどころが違うんだよ…ッ!」
「でもほら、運動後には炭水化物がいいって言うじゃないっスか。あれ、運動前?まあどっちでもいいや。ってなわけで食っちゃって下さい」
「食えるか!」
「えー…。おかず欲しいんスか?ワガママっスねェ…」


そう言って取り出したのはもう一つの重箱。
既にいい予感はしないが、スモーカーもたしぎもどんな中身か気になる様子だった。


「どうぞ」


青年がお弁当を開くと「アンアン天国」と書かれたものがバン!と目に写った。ただのエロ本である。


「厳選した一冊っス!どうぞ、オカズに」


してやったり!と笑いながら二人に声をかけると、たしぎは悲鳴をあげて逃げ出し、スモーカーは顔を赤くしながらそれを投げ飛ばした。
すぐに青年の胸倉を掴んで揺さぶるが、青年はスモーカーの赤くなった顔が面白く、あまりきかなかった。


「むっつりは突然のエロに弱いっスからね!マジでその反応気持ち悪ィっス!」
「オカズの意味がちげェだろうが!」
「え、じゃあスモーカーさんは何をオカズにしてんスか?あれ俺のお気に入りの一つなんで今度貸してあげますよ?」
「いらねェよ!ああもう殺す!今殺す!」
「赤くなったスモーカーさんに脅されたって全然怖くねェし!」
「スモーカー、お前こんな日にエロ本持ってくんじゃねェよ」
「あ、クザンさん!」
「違います!それはこいつのです!」
「あららら。お前のだったの?なかなかいいセンスしてんじゃないの」
「ですよねー。それの22ページにいる女の子とか超可愛いっスよ。恥らってる姿がなかなかクる」
「あー…こりゃあたまんねェな。この子だけの持ってねェの?」
「ありますよ、ばっちりっス!」
「じゃあ今度持って「テメェらいい加減にしろ!」


こうしてお昼も楽しく過ごし、午後の部が始まったのだった。





もうネタがないから続かない。
これだけが打ちたかった。

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