コネタ部屋 - - - - - - - - - - - ▼ グータラ海軍日誌。その10 それは少し前のお話。 青年がスモーカーの部下になり、数週間ほど過ぎたころ、スモーカーはある一つの特注海軍ジャケットを頼んだ。 自分が羽織るジャケットによく似たもので、違う部分と言えば軽装で軽量、そしてフードがついていた。 これが青年専用の「正義」が入った海軍ジャケット(コート)。 「なにこれ」 「お前専用の海軍コートだ。着ろ」 それを青年に投げつけた。 訝(いぶか)しげに受け取ったジャケットを広げ、とりあえず羽織ってみる。 「サイズもピッタリ、おまけにスモーカーさんとお揃い…」 「それがどうかしたか?」 「……スモーカーさん。いくら俺のことが好きだからってペアルックは恥ずかしいですわ」 「その小さい脳みそ今すぐ潰してやろうか?」 「いやいやいや!恋人じゃないんだから服のプレゼントはねェだろ!重たいわ!」 ぎゃあぎゃあと騒ぐ青年の頭を一発拳で殴り、黙らせる。 「いいか、それを着てこねェと本気で捨ててやるからな」 「「俺の買ったもんしか着るんじゃねェ」ってやつですか。俺様系ですか。女性には人気みたいですけど、俺的にはないっス」 「そして二度と社会で生きていけねェように……いや…、二度と朝日を拝めないようにしてやるから覚悟しとけ」 「え、まさかの監禁?いやー…野郎にここまで愛されるなんて思ってもなかったスわ。俺、どん引き。ってなわけで逃げる!自由に向かって俺は今はばたきます!」 「卒業式か。逃げんな!」 「ぐえっ!」 逃げ出そうとした青年のフードを掴み、逃亡を阻止する。 そのせいで喉がつまり、一瞬だけ呼吸が止まった。 走り出した勢いのせいで後ろに倒れ、後頭部を床に打ちつけ二重被害。 「ってェなクソ野郎!何しやがる!」 「便利だな」 「………そのためにフードつけたのかよ!」 「いいか、絶対に脱ぐんじゃねェぞ。本気だからな」 いつも以上に眉間にしわを寄せて睨みつけてくるスモーカーに、青年はぶつぶつ文句を言いながらも素直に従ったのだった。 しかし、フードを引っ張られた時に首が閉まるのは苦しいので前を全開にしたのだが、近くを通った海兵が二人を見てとんでもないことを口にした。 「あれ?大尉、スモーカー大佐とお揃いですか?着方まで一緒だなんて仲がいいんですね」 「おいバカ。今すぐそのチャックを閉めろ。上まできっちりと!」 「やなこった!あんたが閉めろ!俺苦しいのは嫌いなんですー。自由を好む男だから開放的なほうが好きなんですー」 「テメェはいつだって開放的だろうが、特に脳みそ!俺のほうが先にやってたんだ!テメェが閉めるべきだろうが!」 「ぷぷっ!先とか後とか子供かっつーの!じゃあいっそのことこのジャケット脱がせて下さい!」 「それはダメだ!せっかくいいリードを見つけたんだからな!」 「俺は犬か!」 「ああ、とびっきりいい駄犬だ!餌が欲しけりゃあ死ぬまで働け!」 「テメェが死ね!」 「上司に向かってなんて口ききやがる!テメェが死ね!」 「部下をもっと労われハゲ!」 「………ほんと、仲がいいな…」 ( △ | ▽ ) |