半分は優しさだったり、愛だったり ラクサス・♀
ガジルの体調がよろしくない。 生理中は腹痛、生理後は偏頭痛にいつも悩まされるらしい。 女って面倒くせぇな。 そう言って本気で殴られた上に本気で別れを切り出された事があったので口に出す事は二度とないだろう。 こんな状態になってしまうと仕事を請ける事すら儘ならないらしい。 そんな訳で、ガジルは今偏頭痛に悩まされ、ソファーに座って雑誌を読む俺に縋り付いている。 俺の膝に座り、肩に顔を埋めて抱きついて彼女が動かない状態が、どれほど続いているだろう。 ぎゅう、と抱きつく手に力を込めたガジルの髪を撫でると、やっと顔を上げた。 少しは楽になったか、と安堵した俺の頬は、ひくりと引きつった。
「ど、どうしたんだ、ガジルっ」 「っふえぇ…!」
顔を上げたガジルの瞳から涙が零れ落ちる。 そして、痛いよぉ、と泣き出した。 ぶわり、嫌な汗が噴き出す。 何だ、偏頭痛ってそんなに痛いのか?殴られても泣かないガジルが泣いてるんだぞ?つーかこれ何かの病気なんじゃねーのか? 頭が痛いってだけで良い歳こいた女が泣くなんておかしいだろ!? まぁ、これが病気だったら病気だったで俺は冷静でいられる自信はないわけで。 零れ落ちる涙を拭ってやりながら、俺は珍しく狼狽えた。
「も、やだ、痛い…頭、割れる…」 「おい、落ち着け!あー…ど、どうしたらいいんだ?何か必要なもんあるのか?」 「…ヴァファリン…っ」
めそめそと泣くガジルの頭を撫で、ヴァファリンだな?と繰り返す。 つーかヴァファリンって何だ!!!! って言うかここ俺の部屋だよな?つーことはそんな得体の知れねぇ薬があるはずがない。 こいつが薬を持って来てたようには見えねーし(手ぶらで部屋に来やがったからな) 余計に嫌な汗が溢れる。
「おい、とりあえず落ち着け。な?」 「ふっ…うぇ…っ」
焦る自分自身も落ち着かせようとガジルを優しく抱き締める。 女の涙なんて、ずる賢い小道具に見えて嫌いだった。 泣けば良いと思っているのか、と。 イライラするはずなのにガジルの涙は違った。 いつもの態度とのギャップ?いや、ガジルの涙だから、だ。 腕の中で微かに身動いだガジルを見下ろして背中に手を滑らせる。 壊れ物を扱うように、優しく。
「薬買ってきてやるからベッドに横になってろ」 「…………いい」 「この体勢じゃ辛いだろうが」 「いい……ラクサスの側が一番落ち着く………ラクサス?っひゃ!」
顔が熱い。 ピクリと肩を震わせたガジルを腕の中に閉じ込める。
「ラクサス、どうしたんだよ」 「うっせぇ、頭痛いんなら大人しくしてろ」 「…うん」
不服そうな声を出すも、体を離す気はないらしい。 すり、と額を擦り付けたガジルは、大人しく瞳を閉じた。 今日はガジルの薬になってやろう。 いつもよりか細く感じる体を抱き締めて、俺は苦笑した。
E N D
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