青春を謳歌せよ ナツ・学パロ
触ると厚い筋肉、手だって大きく力強い。 変声期をとっくに超えた喉仏はくっきりしているし、赤い瞳はいつも誰かを睨みつけている様に、ギラリと鋭い。 がっちりとした身体で俺よりも頭一つは余裕で大きくて悔しい。 喧嘩ばっかで誰もよせつけないのにジュビアだけは親しくしてて、最初は付き合っているのかと思っていた。 何気無くジュビアに聞くと「幼稚園の頃からの幼なじみなんです」って何故か自慢気な返答。 良かった、と理由のわからない安堵と、何故か悔しい気持ち。 時折ジュビアに見せる笑顔が俺を苛立たせた。 顔を見れば、うるせー、暑苦しい、こっち見てんじゃねーよ、と暴言の嵐…何でだよ、何で俺ばっかりそうやって、目の敵にするんだよ。
ずっとずっと我慢してたけど耐えきれなくて、殴り合いになった。 ムカムカして屋上で授業をサボっていたら、タイミングが良いのか悪いのか、同じようにサボりに来たガジルと鉢合わせた。 いつもの通りガジルは俺を見て嫌そうに顔を歪める。
もう、耐えられなかった。
多分俺がしかけたんだと思う。 ガジルは獣を思わせる真っ赤な瞳をギラギラと光らせて、俺を殺さんばかりに睨みつけて、殴り掛かって来る。 心臓がドクンドクンと脈打って、殴られる頬は焼けるように熱くて、何故か口許に笑みを浮かべた。 ガジルが俺を見てる。 感じた事のない昂揚感に俺は夢中になってたと思う。
「はっ…はっ…いってぇ…顎砕くつもりかよ…」
青い絵の具を塗りたくったように晴れ渡った空の下、散々殴りあって、屋上のコンクリートに大の字で横になった。 近くにはフェンスに寄りかかったガジルが袖で口元を拭っている。 どちらともボロボロだった。 口の中は切れて血の味がする。 切れて痛い口の端を気にしながらガジルの前へ座ると、またあの赤い瞳に見詰められた。
「ガジル、大丈夫か?」 「…殴っておいてよくそんな口聞けんな…」 「あ、いや、まぁそうなんだけどさ…」
シャツの袖で血を拭ってやると、真っ赤な瞳が大きくなった。
「保健室行くか」 「いい、俺はこのままここでサボる」 「ダメだって、消毒しなきゃバイ菌入るぜ?」 「だから、誰のせいだと思ってんだ!」
俺の腕を払いのけてガジルが叫ぶ。 そうだよな、いきなり殴りかかって、なのに大丈夫か、なんて。 ごめん、ごめんな? ただ俺を見てほしかっただけなんだ。 その瞳には、今俺だけしか写っていない。
「おい聴いてんのか?」
よく見ると色っぽいな。 睫毛なんかも長いし、唇は濡れてて綺麗だし。 あ、俺が殴ったから、血で濡れてるだけか。 ………うん、やっぱり痛そうだ。 もう一度、グイッと口元を拭ってやると、ガジルは感じた痛みに、ぎゅっと目をつぶった。 その仕草が何かグッときて息を飲む。
やべぇ、好きかも
「ガジル…」
何だよ、と動きそうだった唇にかぶり付いたら、やっぱり血の味がした。
E N D
「ジュビア、保健室行ってくる」
「え、なんっきゃー!!ガジル君どうしたのその怪我!!ちょ、ナツさん気絶してるの!?」
「………頭を強く殴りすぎた」
「頭!?ガジル君何があったの!?」
「……………………殴りあいになったと思ったら、き、キス…さ、れ…っう、ぅ…」
「キス!?ちょっとナツさん起きてください!!ガジル君の純情を踏みにじるなんて…!!」
「ばっジュビア!!」
補足 実はガジルもナツが気になってたけど素直になれなくて、照れ隠しで睨んだり悪態ついちゃってただけ。ジュビアはガジルの相談相手。
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