▼ ニャンとワンだふる‐02
「リク…っ?」
相手は何年も共に生活してきた愛犬だとわかっていても、見慣れないうえに全裸姿の青年に抱き締められて小春の鼓動はみるみるうちに速まっていく。
上擦った声で名前を呼ぶと、抱き留める腕の力がさらにグッと強まった。
「…ずっと、こうしたかった…」
小春の首元に顔をうずめてリクは絞り出すように言葉を紡ぐ。
「小春…大好き」
「……っ!」
真っ直ぐな言葉が小春の胸の奥を射抜く。
ますます鼓動が高鳴り発熱していく身体。それを誤魔化すために小春は必死に笑顔を繕う。
「もっ…もぉっ…! リクはヒトの姿になっても甘えん坊なんだからっ…」
わざとらしく「よしよし」といいながらリクの頭を撫でる小春。
するとその手を掴んでリクは小春を真っ直ぐに見つめた。
「…キスしてもいい?」
「…へ…っ!?」
「お前だって変な事してんじゃねーか」
吸い込まれそうな瞳に囚われ、ドクンッとひと際大きく胸を打ったその瞬間、それまで大人しくしていたアズキが痺れを切らしたようにリクを足蹴りした。
「何すんだバカ猫!」
「いつまでもベタベタくっついてんじゃねーよ。犬臭いのが小春に移るだろ」
「わっ!?」
そう吐き捨てながらアズキは小春を強引に自分の元へと抱き寄せた。
顎を掴んで自分の方へ顔を向かせて視線を絡める。
深く澄んだリクの瞳とは対照的にアズキの目は鋭く危うい光を潜めていた。
「なんで顔赤くなってんの?」
「えっ…?」
「バカ犬に抱き締められて興奮した?」
「しっ、してないよ! …っひゃ!? ちょっ…アズキ…!」
アズキの顔が首筋に降りてきたかと思うと、熱い舌がそこをくすぐり始めた。
ゾクゾクと騒ぎ立つ疼きを抑えながら小春は慌ててアズキの肩を掴む。
「バカ犬なんかに触られて悦んでんじゃねーよ」
「違っ…やぁっ…! やめて…っ」
「なんで? 感じるから? 小春は首舐められるとすぐスイッチ入るもんな」
小春が男と行為をするのをこの部屋で何十回と見てきたアズキ。
そのときの小春の反応を思い返しながら、どの男よりも自分が一番小春を感じさせてやろうとアズキは彼女の弱点である首に何度も舌を這わせる。
「おい、小春が嫌がってるだろ!」
「嫌がってる? この声聞いてもそんなこと言えんの?」
「きゃっ…! ぁッ、うぅ…っ!」
首元に軽く歯を立てると小春の身体が大げさなぐらいビクンッと跳ね上がった。
小春は一段と顔を真っ赤にしてとっさに手で口を押える。
その様子にクスクスと満足げな笑いをこぼしながらアズキはリクに不敵な視線を送った。
「童貞に出る幕はもうねぇから、首輪外して隅っこで寝てろ」
「……っ」
そう言われてはいわかりましたと素直に引き下がるわけがない。
それどころか、大嫌いな男によって小春がいいように鳴かされているのを目の当たりにしてリクの中の嫉妬心は今にも爆発しそうなほど膨れ上がっていた。
「…自分が一番小春のことを理解してるなんて思うなよ」
「──は?」
「ふあっ…! だっ、だめっ…ぁあ!」
小春の髪を掻き上げ、リクはおもむろに小さな耳の先端を口に含んだ。
軟骨を緩く噛まれ、小春は思わず甘い悲鳴を響かせる。
「首よりも耳の方が弱いもんね、小春は」
「んんっ…! ぁ、あッ…やぁ…っ!」
舌先で耳の輪郭をなぞり、そっと囁くリク。
そして視線をアズキに流すと、フッと勝ち誇ったように笑って見せた。
「調子のんなよクソ犬…っ」
苛立ちを剥き出しにしてリクを睨みつけ、アズキは小春の肩口を舐めるとそこにチュッ…と強く吸い付いた。
「やっ…? あっ、んん…!」
ピリッと刺すような痛みを感じるほどの口付に小春は何度も小さく体を震わせる。
そしてようやく口が離されるとそこには赤い痕が浮かび上がっていた。
「…なぁ小春。俺とアホ犬、どっちの方が気持ちイイ?」
「へっ…!? ど、どっちって…」
刻印に舌を這わせながらアズキは意地悪く囁く。
「僕の方がいいよね?」
「ひゃっ! んっ…うぅぅ…っ!」
リクも小春の耳を責め立てながら熱のこもった声を直接鼓膜に注ぎ込む。
弱い箇所を同時に執拗に弄ばれ、小春は困惑のままただ快感に悶えるしかなかった。
「わ、かんないよ…っもぉ…! ッあ!? だめっ…!」
アズキの手が浴衣に掛かり小春の肩が露わにされていく。
するとそれを補助するようにしてリクの手も浴衣へと伸びた。
すでに乱れていた浴衣はいともたやすく肌蹴られ、小春の力無い抵抗も虚しく二つの白い乳房が曝け出されてしまった。
「やだぁっ…恥ずかしいよ…っ!」
「どっちがイイかはっきり言わないと、止まんねぇよ?」
「ふああっ!」
充血した突起を摘ままれて、小春は堪らず腰を浮かせて嬌声を上げる。
2人の男に責められるという激しくも甘い刺激に小春の身体は戸惑う心とは裏腹に狂おしいほど熱く燃え盛っていた。
羞恥心さえも甘美な疼きに変わってしまうほどの官能の坩堝に、小春は2人の導きによってズルズルと呑み込まれていく。
「ああっ! やッ…あ、あぁあっ…!」
ツンと尖った先端を更に固くさせようと機敏に蠢くアズキの指先。
その反対側ではリクが徐々に舌を下ろして豊満な膨らみをたどり、登頂で震える実を唇で柔らかく捕えた。
巻きつくように優しく舐めたかと思えば時折歯を立て、不規則な刺激を敏感な突起に送り込む。
そうしてそこを散々弄んでからリクは再び乳房に舌を這わせ、真っ白できめ細やかな肌を唇でそっと摘まんだ。
「んぅっ…!」
アズキにされたときと同じ甘痒い痛みが小春の身体を駆け巡る。
「…僕の方が濃い」
ぺろりと唇を舐めながらアズキを見やって挑発的に微笑むリク。
唇をつけていたそこにはアズキが付けたものよりも鮮明な赤い色が印されていた。
「はっ、俺の方が目立つ場所にあるし」
しかしアズキは怯む様子もなく鼻で笑ってみせる。
そうして互いの子供じみた対抗心は留まる所を知らずどんどん加熱していき、2人は相手の出方を探り合いながらほぼ同じタイミングで小春の下腹部へと手を伸ばした。
「ひあぁああっ!」
アズキの指が一息に膣内の深くまで沈み込み、リクの指がキュッと摘まみ取るように陰核を捻る。
目まぐるしい刺激によって限界まで情欲を高められていた陰部は下着から溢れるほどの蜜を湛え、突然浸蝕してきた2つの指を招き入れるようにビクンッと大きく脈動した。
「なんでこんなに濡れてんの? 彼氏とヤッてたときこんな音出てたっけ?」
「やッ…あっ、あっ! だめっ…ああぁ!」
往復する指の動きに合わせてグチュグチュと弾ける水音。
段々と速度を速めて肉壁を抉り、その後ろめたい音を一層大きくさせながらアズキは甘い鳴き声を奏でて仰け反る首筋を舐め上げる。
「駄目なの? ここは嬉しそうにビクビク跳ねて固くなってくけど」
そう笑ってリクは摘まんだ肉芽を小刻みに左右に捻って摩擦する。
「やああぁあっ! や、だぁっ…おかしく、なっちゃうぅ…っ!」
胸の先の突起もリクの口と舌で弄ばれると、小春はいよいよ切迫した声を上げて身悶え始めた。
こんなにもたくさんの箇所を同時に弄られることなんてなかった小春は目くるめく刺激を受け止めきることができず、あまりの狂悦に怖がって涙をこぼす。
「おかしくなっちまえよ」
「もっと感じて、小春」
「ふあぁあっ…! あッ、ああぁ!」
止まない快楽の高波に襲われ、痙攣を続ける秘部から大量の愛液が噴きこぼれる。
ぬめりを増したその蜜をまとわせて2人はより深く敏捷に淫らな媚肉を責め立てた。
「もっ…だめ…! アズキ、リク…っ!」
「どうしたの? もうイきそう?」
「イけよ。エロい顔ちゃんと見ててやるから、顔背けんなよ」
限界を訴える小春の鳴き声を聞き、2人の愛撫は更に勢いを増していく。
膣内を激しく揺さぶられ、過敏な陰核をつぶさにくすぐられ、登熟した身体は一気に快楽の頂点へと突き上げられて行き、小春は全身をぶるぶると大きく震わせた。
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