短編[甘] | ナノ


▼ お兄ちゃんの玩具2‐03

「…な…んで…っ」

「今日は早く終わりました。奈津こそ、なんでもう帰ってきてるの?」

相変わらずの涼しげな笑顔でイヤミったらしく私に問い掛ける。

…私がどんな目に合ったのかもしらないで……

「…同じクラスの男子に犯された」

私の中では今やどうでもよくなった出来事だけど、あえてお兄ちゃんに告げてみた。

未遂じゃなく最後までやられてしまったような悲壮感を出して…。

これでこの鬼畜野郎もさすがに自分の行いを反省するだろう。

ペコペコと私に平謝りしてくれることを期待しながら私は重い声色で話を続ける。

「コンビニでエロ本買わされたとき、写メ撮られてた。それで脅されて…言う事聞けって…」

……。

短い沈黙。

そしてお兄ちゃんから返ってきたのは「へぇ」の一言だけだった。

「…へぇ、って…!」

それだけ?!

実の妹が酷い目に合ったっていうのに…っ

「で、気持ちよかった?」

「…はぁっ?!」

心無い言葉に怒りを込めて見上げるとお兄ちゃんの視線がやけに鋭く刺さってきた。

反射的に背筋にゾクリと寒気が走る。

何…お兄ちゃんの表情…。

笑ってるのに、全然目は笑ってないみたいな不気味な感じ…。


──ギシッ

「っあ…!」

怯んでいる間に私はベッドに乗り上がってきたお兄ちゃんにあっさり押し倒されてしまった。

「こんな風に簡単に体許したんだ?」

「……っ」

近距離で視線が絡むと軽い恐怖さえ感じた。

唇が震える…。声がうまく出せない…。

私はなるべく目を合わせないように首を振って投げかけられた言葉を否定した。

「どうせアンアン言ってよがってたんだろ?」

「ち、が…っ ぅ、あ!」

下着の上から割れ目を乱暴に押し広げられて入り口を刺激される。

胸の快感ですでに濡れていたソコは途端に恥ずかしい水音を響かせた。

「なんでこんなに濡れてんの? そんなに良かったんだ、そいつに犯されたの」

「や…っ! あ、あぁ!」

違う!

そう叫びたくても、口からは甘ったるい声しか出てこない。

グリグリと下着越しに擦られて、敏感になっている胸の先端を痛いくらいに噛まれる。

激しすぎる感覚に自然と涙が滲んできた。

「いやぁ…! 痛いよ…っやだ!」

「乱暴にされた方が感じるだろ? 変態だもんなぁ、奈津は」

「あぁっ! やぁ…っあ」

必死に首を横に何度も振る。

その拍子にポタリと涙がこぼれた。

流れ落ちた一粒を追うように後から後から涙が伝い落ちる。

するとようやくお兄ちゃんの動きが止まってくれた。

でもその代わりに今度は涙が止まらない。

悲しかったとか怖かったとか色んな感情がごちゃ混ぜになって涙になって溢れ出す。


「…ぬふぇーーーっ」

「ほゎっ?!」

突然、よくわからない気の抜けた声と共にお兄ちゃんの頭が私の胸に乗っかってきて、私もよくわからない声を上げてしまった。

「…お、兄ちゃん?」

「…ごめん…。目の前真っ赤になって…暴走した」

「まっ、真っ赤?!」

「そう。赤は危険色…警告色。…踏み入れてはならないデッドゾーン…」

「えっと…お兄ちゃんっ?」

「その他にも赤は情熱や活気など生命力溢れるイメージを表し、食欲や性欲を増強させる色でもある…」

「……」

…あ、わかった。お兄ちゃん、気が滅入ってるんだ。

昔からの癖。酷く落ち込んだりするとこうやって意味不明なことを呟く。

…こんなお兄ちゃん久しぶりに見たなぁ…。

そんなことを考えてる内にいつの間にか気持ちは落ち着いていた。

というより、自分のことよりもお兄ちゃんの方が気にかかる。

「…どうしたのさ…大丈夫?」

「大丈夫じゃない。無理。貝になりたい」

「えぇっ?!」

「はぁ…っ。奈津がアホ男にあんなことやそんなことされたのかと思うと…ああああ…っ」

「あ…それはその…」

「でも元はと言えば俺のせいか。あぁ…俺は奈津の調教師失格だ…。責任をとって自決するしかない」

「自決っ!? もう、変な事言うのやめてよ! …ていうか調教師って何っ!?」

「…よし、じゃあそのアホ男を拉致して学校の屋上から逆さ吊りにしよう」

「ちょっ!何言ってんの馬鹿! 駄目!絶対! ていうか未遂だからっ!」

「…未遂?」

「ちょっと胸触られただけなのっ! 携帯も今私が持ってるし…っ!」

「…胸は触られたんだ」

「でもっ全然平気だから! 携帯に入ってたキモいエロ画像とかで逆に脅し返してやるつもりだし…っ」

「………」

「な…何、その目」

「…胸は触られたんだー…はぁー…」

「あんただってベタベタ触りまくるくせに、なんなのそのリアクションッ」

「嫉妬」

「…は…っ?」

「アホが奈津の胸触ったことも腹立つし…何より、可愛い声を聞かれたのが…ああぁ…」

「そんな声出すわけないでしょうが! 気持ち悪いだけだったんだからっ!」

「えぇー、まさかぁ。奈津が胸を触られて無反応なんてあるわけが」

「嫌な奴に触られて感じるほど変態じゃないわっ」

「…本当に、感じてない?」

「本当だってば!しつこい!」


…実を言うとちょっとだけ反応しちゃったけど…。

いやでもそれはお兄ちゃんが胸にこんな変な細工したせいだから!

これさえなければ100%感じなかったもんね!

きっぱりと断言すると、叱られた子供のように沈んでいたお兄ちゃんの表情がみるみるうちに元の不敵な顔に戻っていった。

「へぇー…」

イヤミったらしい笑いを含んだ声。

どうやら完璧に本調子に立ち直ったらしい。

「じゃあ俺に触られてるときは?」

「……っ」

さっそく降りかかってきた意地悪な問い掛け。

さっきまでのヘタレお兄ちゃんはどこへ行ったのやら…。

…ああ、やっぱりあのままへこませておくべきだったのかも。

「気持ち悪いだけ?」

わざわざ聞かなくたって、わかりきってるくせに…っ。

「こういうことされても全然気持ちよくない?」

「っん…!」

赤くなっている胸の先を指の腹でそっと撫でられると一瞬で甘やかな快感が沸き起こった。

優しく摘まれ、クリクリと小刻みにひねられて、くすぶっていた欲情に再び熱い火が灯る。

「っあ…! …は…ッあ!」

「その声は演技?」

「…や…っ」

「奈津は俺のことも嫌いなんだよね?」

笑い声が耳をくすぐる。

耳元で囁かれるだけで私の体は恥ずかしいくらい大げさに揺れ動いてしまう。

羞恥心を振り切るように顔を背けるとお兄ちゃんの唇はすぐに追い掛けてきて、逃がさないとでも言いたげに耳の軟骨の部分を甘噛みしてきた。

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