▼ お兄ちゃんの玩具2‐04
「ひぁ…っあ…!」
ゆるりと生暖かい舌が耳の輪郭を辿って下りていく。
そして耳たぶまでたどり着くとまた優しく歯を立てられた。
くすぐったさと気持ちよさが入り混じったゾクゾクとした感覚が背筋を走り続ける。
「奈津が嫌なだけなら、もうこういうことは終わりにしないとな」
ここまで好き勝手弄んでおいて、お兄ちゃんはそう言いながら私の体を撫でていた指先をスッと離していく。
「…っい、じわる…!」
「どうして?」
「……っ」
お兄ちゃんのそういう人を試すところが大嫌いだ。
…でも…散々焦らされ続けて体が熱すぎておかしくなりそうな今は感情を押し殺していられる余裕なんてない。
「…っお兄ちゃんに…触られるのは好き、だから…っ」
──そう、好き。
昔から意地悪だったお兄ちゃん。
でも心底嫌いになったことなんてない。
…意地悪されるのも、本当はお兄ちゃんに構ってもらえて凄く嬉しいと思ってた。
最近の意地悪は行き過ぎだけど。
でも、それでも心の奥では喜んでるのかもしれない。
…こんな体になったのはお兄ちゃんのせいだよ。
だからもっとめちゃくちゃにしてよ。
満足するまで玩具にしてよ。
…私が満足するまで遊んでよ。
「悪い子だなぁ奈津は」
私の黒い心の内を読み取ったかのようにお兄ちゃんは意味深げに微笑んだ。
そして起き上がったかと思うと机の引き出しを勝手に開けて何かを取り出した。
「…え…。えっ?! なんでゴムがそこに入ってんの?!」
「こうなるのを想定して。いちいち俺の部屋に取りに行くの面倒くさいから」
「変なモノ私の部屋に置かないでよっ!!まさか他にも何か…っ」
「こら。黙って寝てなさい」
飛び起きようとしたところをタイミングよく肩を掴まれてベッドに押し戻される。
抵抗しようとしたけれど、「暴れたら挿れてあげない」と言われると私は反射的に力を弱めてしまった。
「ほんと、奈津は性欲だけには素直だなぁ」
「んゃ…っ!」
なんの痛みもなくお兄ちゃんの指が秘部の奥深くまで侵入してくる。
それだけソコはドロドロに濡れてしまっているらしい。
滑るように動く指はあっという間に理性を連れ去っていく。
悔しいけれど、お兄ちゃんの言ったことは正しい。
欲が絡むと何も考えられなくなる…。
私はもう、これから訪れる甘美な快楽のことしか頭になかった。
「…じゃ、挿れるよ?」
「ん…っ」
早く、早く…。
全神経がアソコに集中してるみたい。
入り口を押し広げていく軽い圧迫感を感じただけで体はブルブルと打ち振るえて心臓が熱く高鳴った。
「…っは…ぁ、あ、…っあ!!」
中を強引に割って沈み込んできたお兄ちゃんのモノはゆったりと奥まで到達した。
腰が砕けそうになるくらい痺れて、その痺れが全身にまで伝っていく。
「まだ動かしてないのに、奈津の体凄いビクビクしてる」
「…っだ…って…! っんぁう!」
前触れなく奥を重く突き上げられて上擦った声がこぼれる。
クスクスと憎たらしく耳に届いてくるお兄ちゃんの笑い声。
私はまどろんだ瞳でキッとお兄ちゃんを睨み付けた。
「はいはい、意地悪しないから。そんなエロい目で睨むんじゃありません」
「…んくっ…ぅ、あっ! あ、ああ…っ!!」
お兄ちゃんの腰が緩やかに動き始めて、ひと突きごとに速度が増していく。
それに伴って私の体を襲う衝撃の波がみるみる高くなっていく。
「あっ、あああ! やぁああっ!!」
呑み込まれるのはあっという間だった。
全身が性感帯になったみたいに、揺さぶられるたび爪先から頭のてっぺんまで電流が流れて甘く弾ける。
「あああ…っ! おにぃ…ちゃ…っあ!あぁあっ!!」
「…っ声、大きすぎ…っ。もうすぐ母さん帰ってくる時間だぞ?」
「やっ…そ、んな…っ」
抑えられるわけないじゃん!
頭の中で反論しつつも、お母さんに声を聞かれるのはヤバいと冷静になって、私は手の甲を口に押し当てて声を殺した。
「んっ、ふ…ぅ! んんんっ!!」
体の芯を溶かすほどに高ぶった欲情に溺れて、心を全て快楽に委ねてしまうたび口を押さえる手の力が緩んで隙間から淫らな吐息が漏れてしまう。
なんとか声を出すまいと必死で唇を塞いでいると、不意に手を取られてそのまま布団に押し付けられた。
「へ…っ?」
「やっぱり、奈津の声聞いてたいからいい。…その代わり…」
「…ッ!! うあっ!ああぁーっ!」
「…っ早く、終わらせるから…っ」
今までにないぐらい荒々しく中を掻き乱されて意識が途切れそうになる。
私はお兄ちゃんの背中に腕を回して無我夢中でキツく抱き締めた。
「あっ、あ、あぁ! お、兄ちゃ…っ! 駄目、イッちゃうよぉぉっ…!」
「…っ、もう少し我慢して」
「やああっ、んあっ!あぁんっ!!」
呼吸する間も与えられないぐらい激しく欲情を煽られ、痺れに熱まで加わった快感はビリビリと体中を暴れまわる。
「も…っ駄目、やだ…っおかしく、なっちゃうよぉ!!」
「…っ、可愛い声で鳴く奈津が悪い」
「やっ、ああ! あぁああ…っ!!」
身体も理性もぐちゃぐちゃになって煮えたぎった悦びに極限まで追い込まれていると、何かふわりとしたものが頭に降りてきた。
「ふぇ…っ」
それはお兄ちゃんの手だった。
細長い指が汗ばんだ髪に差し入ってきて、クシャリと掻き上げられる。
今までの痺れとは違うこそばゆい感覚にアソコがドクンと反応する。
「ふ、あ…っ!! お兄ちゃ…っイ、イッちゃう! イッちゃ、う…っあ、ああぁああっ!!」
焼け付くような疼きが一気に弾けて全身が波打つ。
「っあ…あ…っお兄ちゃ…ん…」
…そこで、私の意識は滲んで霧みたいに曖昧にぼやけていった。
・ ・ ・ ・
「……」
「あっ。起きた」
「──っ!!」
霞んだ視界にお兄ちゃんの顔が映った瞬間、私は光の速さで意識を覚醒させた。
…私、気絶してたっ?!
「い、今何時?!」
「大丈夫、ほんの数分寝てただけだから」
「は…っ、なんだ…良かった」
「はい、ため息ついてないで着替えますよ」
そう言われて自分の姿を確認するとそれはもう酷い…というか淫らな格好だった。
「全く、そんな格好で無防備に大の字で寝られたらまた襲いたくなるでしょーが」
そう言いながらお兄ちゃんは床に落ちている私の下着を拾い上げる。
「…あ゛っ」
お兄ちゃんの背中を見て私は素っ頓狂な声を漏らした。
…シャツの所々に滲んでる赤い染み…。
確実に私が爪を立ててつけた傷だ…っ
「そっその背中…っ」
「ん? ああ。んもう、奈津ちゃんってば激しいんだからっ」
「ごめんっ痛かったでしょ…?」
「気にしなくていーよ。俺もお返しさせてもらったし」
「……?」
お返しっ?!
「えっ? えぇっ?! 何したのっ!! ていうかいつしたのっ?!」
「寝てる間に。何したかは秘密」
何しやがったこの鬼畜はっ!!
お返し?
お返し…っ?
爪痕のお返し…
…っ、まさか!!
嫌な予感がして私は鏡の前に直行した。
「あああーーっ!!」
首筋に赤い鬱血。
しかも3カ所…っ!!
「なんてことすんのよーっ!こんなとこじゃ服着ても隠せないじゃん!!」
「そ。だからあえてのその場所だよ」
「な…っ」
「これで奈津に手を出すアホもいなくなるだろ」
「アホはお前だーっ!! バカアホ、鬼畜!性病こじらせて死ね!!」
‐END‐
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