▼ 第1話-06
…ねぇ…これで満足なの?
私やこの家を壊すことで満たされるの?
やっぱり間違ってるよこんなの。
彼だって辛いだけなはずなのに……。
「…ひあっ!!やッあっうぅぅぅ…ッ!!」
倦怠感に包まれながら、もっとちゃんと彼を救うことができたら…と考えをくゆらせていると、そんな私に鞭を振るうかのような激痛が全身に貫き渡った。
今まで中を探るようにジワジワと進んでいた彼の凶器が、一気に奥深くまで打ち込んできたのだ。
最奥を叩いた淫茎は引き吊る内部を摩擦しながら再び膣口へと引き返していく。
「だいぶ動きやすくなったな」
「うぁッ…あ…う、うぅぅ…ッ!!」
膣の壁をえぐっては胎内の深い所まで串刺す容赦のない抽挿は次第に加速していき、打ち付けられる感覚を受け止めきれない身体はただひたすらに悲鳴を上げる。
痛い…苦しい…
私の中を犯すモノも、耳にまとわりつく水音も、勝手にこぼれる自分の声も、
全部全部不快でしかないのに…。
「んっ!ん…ッふ…ぁ!あっあぁあ…!」
下腹部に添えられた彼の指が、再びあの劣情を生み出す。
さっきよりも存在感を増したその感覚はあっという間に私の心を蝕んでいく。
「そこっ…やだぁ…ッ! あっあぁ! ふ…ッうぅ、んぅうっ…!」
「何言ってんだよ。嫌じゃなくてイイ、だろ? 触った途端俺の締め付けてきたぞ」
「ッ…うぅ! んっ、んふッ…ううぅッ!」
羞恥を煽る言葉に私は首を横に振って否定する。
それが今の私ができる精一杯の抵抗だった。
羞恥心すらかき消されるほどの熱い衝動が何度も心身を突き抜ける。
甘い痺れに侵された膣が、中を荒らす熱塊からの刺激に卑猥な悦びを感じ始めたのだ。
指の責め立てで感度を高められた膣壁の一部を荒々しく擦られた瞬間、痛みとは違うゾクゾクッとした感覚が弾けた。
それをきっかけに秘部はたちまち卑しい欲肉へと塗り替えられていった。
…違う…! 感じてなんかない!
こんなの私の体じゃない…っ!
そう頭の中で叫んでも、欲望に堕ちた膣内は男の熱を求めてうねり、歓喜の蜜を吹きこぼす。
「いやッ…ゃ…あっ!」
自分が自分じゃなくなるような感覚が怖くて身じろぐと、逃がさないと言うように彼の手が私の腰を強く掴んだ。
「中も良くなってきた?」
全てを見透かす獣の目。
冷たく歪んだ微笑みが更に深まる。
「…じゃあ、もう加減しないから」
「ッ…! ま、待って…嫌っ…あうぅぅうぅぅッ!!!」
鋭い電流のような衝撃が下腹部で弾けた。
これ以上は無理だと思っていたところよりももっと深い箇所を切っ先が獰猛に突き上げては内壁を捲り返していく。
さっきまでとは比べものにならない奮撃に私は真っ白になりそうになる意識をなんとか繋ぎとめながらシーツをがむしゃらに掻いて悶え狂う。
「っふ…!ぁッあ…!くぅ、ううぅッ!」
「イイ声になってきたな。もっと喘げよ…っ下にいる2人に聞かせてやれよ…!」
「や…ぁっ! あッあぅ!うううぅ…!!」
…嫌だ…お父さんにはこんなの絶対聞かせたくない…っ!
全身が淫情に埋め尽くされても私はその気持ちだけは決して揺るがさず、懸命に歯を食いしばって声を押し殺し続けた。
「はあッ、ぁ…あっ!んん…っ!んふッ…んんんっ!!」
手加減のない杭打ちに欲望の果てまで興奮を高められた下腹部がブルブルとわななく。
この全神経を震わす感覚は、ついさっき心身に深く刻まれたばかりだ。「だ、め…っ!また…っおかしくなっちゃ…ッあ!あうぅぅっ!」
これ以上醜態を晒すなんて耐えられない。
けれど口に当てた指を噛んで心を奮い立たせても、規則的に最奥部を打ち付けられる貪欲な快感から逃れることはできない。
「や…ぃや…いやぁッ!あっあ…ああぁぁッッ…!!!」
ドクンッと膣内が大げさに脈打ったと同時に身体の奥で煮え立っていた感覚が一気に溢れ出した。
甘美な痺れが脳天を走り抜けて、無意識に仰け反らせた背中がビクビクと痙攣を起こす。
強烈な法悦に果てて白濁していく脳内。
それでも私の体は、性欲を発散するだけの彼の律動に掻き荒らされ続ける。
「…ッ、締まりすぎ…っ」
ドロドロに溶けた意識の中、彼の切迫した息づかいがふと聞こえてきた。
「ああぁッ!…っは、ア…ッ!!んんっ、んうううぅ…ッ!!」
その声をきっかけに、襲いかかる勢いが一層激しさを増し始めた。
どんどん荒くなっていく吐息。
過敏になった膣内に響く淫茎の脈動に彼の限界が近いことを感じ取った。
「んっんんんッ!!んぅ…っふ…うううううぅッ!!」
撃昂した切っ先が奥深くを突き上げる度に狂悦の高波が体中になだれ込んでいく。
めくるめく熱い衝動に散々喘ぎ尽くした喉が引きつって呼吸すらままならない。
このままじゃ本当におかしくなる…!
お願い、もう止めて…っ!!
グチャグチャになった頭の中でこの不浄な性交の終わりを願ったそのとき、胎内の深くに侵入していた彼の熱塊がビクンッと大きく脈打った。
「…ッ…!」
切れ切れの吐息と共に膨張した淫茎が引き抜かれ、そしてお腹や穿いたままの下着に生温かいものがジワリと染み広がっていった。
「っく…、はぁ…はぁ…ッ」
…やっと解放された…。
けれど今の私に起き上がって逃げ出す気力も何も残っていなかった。
天井を呆然と見上げたまま荒い深呼吸を繰り返していると、彼がフラリとベッドから降りてタンスをあさり始めた。
多分お風呂に入りに行くんだろう。
…私も早く全部洗い流さなきゃ…。
そうぼんやりと考えていると、部屋のドアまで歩いていった彼が不意に私の方に振り返った。
「ここまでされといて、まだ俺のこと助けたいとか馬鹿なこと考えてないだろうな?」
「……っ」
震える腕に力を込めて体を起こして彼を見据える。
苦痛。憎しみ。悲しみ。
彼の瞳には負の感情の全てが詰まっている気がする。
「恨むなら恨め。俺のことも、俺の母親も…そんな母親に言い寄った自分の父親もな」
「っ…! お父さんは関係な…っ」
私が言い終わるよりも先にドアがバタンと冷たい音を立てて閉じられた。
「………」
途端に、胸が締め付けられるほどの静けさが部屋を包む。
「…っふ…、ぅ…う…っ」
緊張の糸が切れたと同時に一気に涙が溢れ出した。
涙は私のめちゃくちゃになった感情を全て吐き出すように次から次へととめどなく流れていく。
…私は、一体何を恨めばいいんだろう。
彼? 花野さん? それとも私自身?
これからどうすればいいの?
…もう何もわからないよ。
第1話‐終
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