「え、何処から聞いたの?嫌だな、断ったって」
「断っちゃったの?何で?可愛くなかったのかな」
「いや、皇みたいなのとつるんでると、美的感覚狂うって。皇といるせいか、皇レベルが何かデフォになっちゃってんもん。どうすんだよオレが誰とも付き合えなくなったら。そしたらオレが満足する可愛い子連れてきてよ」
「あははは、厳しいなあ。私が探さなくても可愛い子なんて沢山出てくるって。南野くんモテモテじゃんか」
「はー、皇ほどじゃないよ」

乾いた笑いを浮かべながらも、内心焦って仕方ない。
もうローヴは左膝を通過し、太腿にまで捲られている。チラチラと万里の方を見るが、彼が魔法を解く気配は全くない。

『うそ、どうしよう…誰かに見られたら…!』

まだローヴが被っている右足で覆うように左足を隠すが、多分意味はないだろう。見ようと思えば、簡単に見えてしまう。

『最悪っ、サイッテー!バカバカバカ!』

咲弥がここまで焦るのには訳があった。寮で口淫をされた後、万里に下着のほつれを指摘されたのが原因だ。

「あれ、咲弥、パンツの裾のところほつれてるよ?結構長く穿いてるのかな」
「え?まあ、そりゃ、中一の頃から穿いてるやつだから…」
「中一!?それは年季モンだね。へえ、水属性ナンバーワン様の年季ものパンツなんて絶対ご利益あるよ。ね、これ俺にちょーだい」
「は!?何言って…ああ!もうふざけんな!バカ!バカバカバカ!」

何故か下着を欲しいと言われ、そのまま無理矢理奪われたのだ。そしてお姫様抱っこで登校…
なので、今の咲弥はノーパン状態。その状態でローヴを完全に捲ってしまったら、咲弥は教室で自分のアレを曝すことになってしまう。

『もう!死ね!絶対許さない!バカー!』

太腿と太腿の隙間が現れ、スースーとした風が股間を刺激した。見なくとも分かる。陰茎の先端部分はもう露出されてしまっているだろう。
−ドキドキドキドキ…

「皇、ファンクラブ出来てんの知ってる?」
「うーん、ちょっとだけ知ってるよ」
「校内のじゃないから。他校にも…ってゆーか、全国にもファンいるんだよ。今ネットでめっちゃ騒がれてるし。やっぱ雑誌に載るとファンって増えるよなぁ。しかも、その見た目だし?余計凄くなってる」
「それなら南野くんにだっているでしょ?」
「オレのとは何か違うって。皇のファンは宗教みたいだもん」
「えー、なにそれ」

左手の動きが止まり、今はローヴがずり落ちないようにとガッチリ押さえつけている。
ということは、陰茎から陰嚢から、毛が生えていない陰茎の生え際まで全て出てしまっているということだ。
右足を左足に乗せて足を組むようにして隠すが、それでも100パーセント隠せている訳ではない。
仁が少しでも顔の角度を変えたら…前に座っているクラスメイトが後ろを振り向いたら…絶対に見えてしまう。

『やだやだ、どうしよう。私のアソコ見られちゃう…どうしようっ…』

スースーと涼しい風が当たり、嫌でも外に出しているということを咲弥に示していて、羞恥で顔が赤くなった。心臓は緊張と不安でドクンドクンと大きく響き、痛いくらいに鼓動している。
そのまま何事もなくやり過ごしてほしい。誰にも気付かれずに早く魔法を解除して...

『あ!』

だがそんな願いは万里には届かないのだ。ローヴを捲られる所か今度は両脚を引っ張られるように左右に動き出してしまった。

『嘘でしょ!?何考えてるんだよー!』

ぐぐぐっ、と膝と膝が離れていく。必死に力を入れるけれど、脚は言う事を聞かなくて下品に開脚していくのだ。

『やだ!こんなのやだ!や!』

開脚できるギリギリまで開かされ、これでもかと性器が露出された。右脚はまだローヴに覆われてはいるが、こんなに全開になってしまっては関係ない。陰嚢から会陰までがスースーするほど露出してしまっている。
背中に嫌な汗がビッショリと浮かんだ。

『そんな、みんなが居る教室で...南野くんが隣にいるのに、私はおちんちん出してしまっている...』

恥ずかしくて恐くて泣きそうになり、咲弥はぎゅっと拳を握って耐えた。見られたらどうしよう、前に座っているクラスメイトが振り向いたらどうしよう。そんな不安に押しつぶされそうで、このまま泣き叫びたい。

それでも懸命に表情に出さぬよう懸命に努め、仁との談笑を続けた。

「そういう人間離れした美形?って崇められる系じゃない?芸能人でもキャーキャー騒がれるタイプもいれば、うっとりと見つめられるタイプがいるし。皇は後者だよね」
「あーもーやめてよ。そういう褒められる話得意じゃないしさ。キリがないからやめよ」
「実は俺、そういう話わりと好き。皇のファンって面白いし」
「えー、面白くないよ」