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煮えたぎった体はもう拒めない。後戻りなんてとうに無くなっている咲弥は、恥ずかしそうに下唇を噛んでこくんと頷く。

「ん…ぃ、いれ、て…」

すると、万里の欲望を映しているかのように金色の瞳は炎の如くゆらめき、その奥にある渦巻いている黒いものを一瞬、咲弥に見せた気がした。
燃え盛る業火の中から、デビルがこちらに手を伸ばしているようで、あの悪魔に支配されるのだと思うと腹の奥が疼く。

『やっぱり彼は悪魔なんだ』

舌舐りをして、口角を上げて笑む万里の表情を見ながら体制は正常位へと変わる。華奢な太ももを掴み挙げられ、黒い茂みの中から突き出た赤黒い陰茎が、これから咲弥を貫こうと喜々としてテラテラと光っている。

「咲弥、好きだよ」
「私、も…」

いつの間にかまとわり付いていた温水は取り払われ、後孔に当てられた陰茎の熱をダイレクトに伝えられた。くちゅりという粘ついた音は、おそらく万里から出されているカウパーが溢れているせいだろうか。

『あ、グチュグチュしてる…』

挿入しようと切っ先を擦り付けられ、具合を確かめるようにぐっと押せられると、とうとうそれはめり込んだ。

「あっ!」
「っ…」

指とは比べ物にならない程の質量が咲弥を襲う。
めりめりと肉襞をこれでもかと広げながら侵入するそれは、体の中に挿入るととてつもなく巨大に感じて、心臓まで届いているのではないかと錯覚する程だ。

「あっ、やっ…苦しいっ…!」
「ああ、これが咲弥の中…」

大きいとは思っていたが、ここまで圧迫感があるとは想像していなかった。硬くて太くて熱くて…本当に人の物かと疑いたくなる程なのに、それはちゃんと人の粘膜独特の柔らかさもあって、きゅうきゅうと密着している。
下半身だけでなく、体中が万里の性器に支配されたみたいで、悲しくもないのに涙がボロボロと止まらない。

『なにこれ、なに、』

ピタリとくっついた粘膜と粘膜が擦れていくのが怖いのに気持ちが良いし、ゆっくりと着実に腰を進めるその感触に肌が粟立って歓喜しているようだ。
両手で顔を覆い、涙を拭いながら必死に堪えていると、万里は目を細めて腹の底から吐息し感動した。

「はあ…咲弥、やばい。サイコーだよ」
「あっ、うう、んっ、あぅ…」
「めちゃくちゃ名器だね」
「知ら、な…」
「きゅうきゅうしてて、これだけでイキそうって意味」
「うぅ、わかんな、や、苦しい…」
「苦しい?痛くないよね?じゃあ大丈夫だよ」

全く大丈夫ではないのに、万里は汗を垂らしながら恍惚と微笑むと、足を抱え直した。両脇腹にくるようにぐっと抱え込み、上体を逸らしたかと思うと、予告なく抽挿を開始したのだ。

「!?」

ぱん!と皮膚と皮膚がぶつかる音と同時に、内壁を太い切っ先で擦られて目の前に星がちかちかと飛んだ。
あまりの勢いに一瞬息を忘れ、「ひぃ!」と言う悲鳴のような呼吸音が響いて止まる。
暴力的なその突き上げに体が驚き、逃げるようにベッドの上で跳ねたが、万里にしっかりと掴まれているせいで刺激からは逃げることは出来ない。

「ひっ!ひあんっ!」

熟れてぐちゅぐちゅになっている中は、今までに味わったことがないくらい気持ちが良くてどんどん煮えて蕩けているようだが、全身を支配されて、万里が動く度に体の中のものが移動してしまっているような、体中を掻き回されているような感覚は、咲弥の瞳をより涙で濡らすのであった。

「あん!あ!だめっ、だ、めぇ…!」
「ごめ、無理…っ」

ベッドは激しく軋み、ぱんぱんとリズミカルに鳴る音は止まらない。シーツを掴んで引っ張って堪えるが、容赦の無い律動には喜び悶えているようにしか見えず、万里の興奮を更に煽った。

虚は全て埋めてやるというような抽挿に、本当に万里のものになってしまったという事実を叩き込まれ、咲弥は自身の真っ白な体が悪魔の黒に染まっていくような気持ちになり、その背徳感に背筋をぞくぞくとさせる。

「はげし、やぁ、そんなのやだぁ…!」
「っ、嘘だよ。悦んでる…っ」
「こんな、ひっく、ふっ、だめだもんっ、変になっちゃう!」
「いいんだよっ、変になりに来たんだから、やばっ、一回出すねっ」
「やぁ!なに、出すって!?」

盛り上がった硬そうな胸筋から、でこぼことした腹筋まで汗が滑り落ちるのを見届けると、万里は一層眉間のシワを深くさせてぐっと腰を押し付けた。