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「好きなの…?」
「好きじゃなかったら、咲弥は今頃暴れて俺にパンチを食らわせてるよ」

好きなのかどうなのか判らない。判らないけれど、万里に慰めてほしい。彼に甘えたい。
そう思った途端、舐められている耳が急に熱くなって、そこから熱が全身へと駆け抜けて行った。

「あっ、んっ、もぅ、ゃ、ぃやっ」

ビクビクと大袈裟に肩が跳ねてしまって、バスタオルが落ちていく。それを慌てて片手で抑えるが、白い薄い肩は剥き出しだ。
万里は今度はそこに目を付けて、唇を下降させていく。
しなやかな長い髪を大きな手で束ねるように上げられて首筋を噛まれる。そのチクッとした愛咬の刺激に、思わず声が漏れて眉間にきつくシワが寄った。
その間も万里の陰茎を刺激する動きは止められることはなくて、咲弥は逃げるように腰を引かせる。

「逃げないで?」
「お、ぉ願い…手をはなして…」
「何で?俺の触りたくない?」
「恥ずかしい…こんなの、シたこと、ない…」
「そっか。恥ずかしいだけで嫌じゃないんだね?」

陰茎をまさぐるように大胆に動かされてヒッ、と短い悲鳴をあげて目をぎゅっと閉ざした。今まで散々触られてきたけど、触らされたことなんて無いし、同性のこんなところなんて初めて触れる上に凄いことになっている。

「ふ、うぅ…や、」
「ああ泣いちゃった。かわいい…」
「だって、こんなに、固くておっきぃの…ひっ、ふっ、」
「咲弥のことが好きだからだよ。好きだから大きくなるんだ」
「ほんとに、好きなの…?」
「何回も言ってるでしょ」

スエットからゆっくりと手を抜かれて、そっと握られる。視界いっぱいに万里の顔が広がったその刹那、口端に柔らかな感触が。
−ちゅっ
唇に触れるギリギリのラインにキスをされたのだ。

「ぁ、天空、くん…」
「ちゅっ、ちゅっ」

同じように鼻先や頬、目尻にキスが降りてくる。

「好きって言って」
「あの、」
「言って」

両手が背中へと回り、バスタオルを退けられてとうとう現れた背中を抱きしめられた。力強い包容に息を一瞬詰まらせると、額と額を合わせてじっと見つめられる。

「俺のこと好き?」

そしてあの目だ。黒髪の向こう側で光る炎のような綺麗な金色。

「……すき」

その金色が歓喜したようにギラリと光ったかと思うと、至る所に触れていた唇が、ここだけは避けていた場所に漸く着地した。

「んん!」

水分をたっぷりと含んだ柔らかなそれが強引に重なった途端に、唇をこじ開けられて彼の熱い舌が捩じ込んでくる。何が何だか分からずに受け入れると、ずっとおあずけをされていた末に解き放たれた犬のように噛み付く勢いで唾液を啜られた。
その感覚に咲弥は目をぎゅっと瞑って息を漏らすが、口端から漏れたその呼吸すら許さないのだろうか、口付けはより深いものへと変化し、咥内を蹂躙する。じゅるじゅると音を立てて啜られ、咥内から直接鼓膜に伝わるその水音に脳が痺れていった。

「あ、あまぞ…うっ、んんっ、や、んっ」
「んっ、ぢゅぅ、ちゅうっ」

湯に浸かったように体が火照り出し、額や背中に汗が浮かんできて暑い。空調は変わっていないのに、勝手に体温が上がっていってしまって恥ずかしくてやめてと首を振った。
でもびくりともしなくて、舌を痛いほど吸われてしまう。

『頭、おかしくなっちゃう…』

バスタオルはもう完全に落ちて腰の所でグシャグシャになってしまっていた。だから裸の上半身が直接万里の肌に触れているのだ。そして万里の体も熱いことを知って、咲弥の息が自然と上がっていく。

「は、ぁ、ふぅ、」

溢れた唾液がこぼれ顎を伝う感じにすら何だか感じてしまって、もぞもぞと胸を万里の胸に押し付けてしまう。この咥内を犯されている感じをもっとほかの部分に欲しくて…いつものようにアソコを舐めてほしくなってしまって、心臓がドキドキと高なった。

「ふ、うう、あま、ぞらくん…」
「咲弥に好きって言われるまで、キスを我慢してたんだ」
「ぁ、キス…?」
「そうだよ。キスしたって分かってる?」
「………あっ」