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「それで、どうシたんだっけ?」
「ああもうだからさぁ、」

そのベッドに横になると、甘いチョコレートの香りがした。本当にチョコが好きなのだな、もしかして寝ながらも食べているとか?
甘い香りのする布団の上を転がってうつ伏せになると、肩幅くらいに足を開き、枕を抱いて振り返る。

「こうだったじゃん。天空くん、後ろからシてたよ」
「それだと………こうだっけ?」

先ほどと同様に足の間に体を入れながら、咲弥の体を挟むように両手を置いて、万里が上体を倒し覆いかぶさってきた。だからすぐに違うと指摘をする。

「天空くんは私の腰を掴んでたでしょ〜」
「腰を掴む……うつ伏せじゃなくて四つん這いかな?」
「普通のベッドでするとしたらそうなるけど、私のベッドは水だよ。私がうつ伏せの状態でベッドに浮かんでて、天空くんは床に膝をついてベッドに浸かってる状態だったじゃん」
「ん?ああ、じゃあ」

やっと思い出した、と言うように万里はうんうんと頷くと、咲弥の腰を掴んだままズルズルと後退して行った。おかげで再びローヴが捲り上がり下着が丸出しになるが、咲弥はそれに気付いていないのか気にしている気配がない。

よいしょ、と言いながら万里はベッドから降りて膝立ちになる。ベッドの縁まで引き摺られた咲弥は、足だけがベッドからはみ出ているのだが、足の間にいる万里に支えられて水平を保たれた。

「普通のベッドで同じ体制になるには、俺はベッドから降りて膝立ちで挿れなきゃ出来ないんだ?こうやって、咲弥のお尻に挿れてたんでしょ?」
「うん、そう。何で忘れちゃうの」
「あはは、ごめんごめん」

股に何だか熱くて硬いものが押し付けられていて、じんじんして気持ちがいい。そう言えば、夢の中でもアソコがじんじんしていて気持ち良かった。本物のセックスはこんな感じで気持ち良いのだろうか、それとも想像しているよりも痛かったり辛かったりするのだろうか。
そんな事を考えながら尻を振ってみると、万里が苦しそうに「うっ」と息を詰めたのが聞こえた。
そう言えば両足を支えられているのだった、いきなり動かれたら支えている側からしたらそれは辛いだろう。
心の中でごめんごめんと謝りながら匍匐前進をするようにベッドに乗り上がって再びごろごろと寝転ぶ。

「咲弥、エッチしたならすっぽんぽんだったよね?服は着てなかっただろ?」
「勿論そーだよー?」
「暑くない?どうせなら脱いじゃえば?制服汗臭くなっちゃうよ」
「えー?」

そう言えばさっきから暑いかも。汗臭くなるのは困るから、言われたとおりにローヴをインナーごと頭から脱いだ。すぽっと脱げたそれを丁寧に畳んでいると、万里が邪魔をするように後ろから抱き締めてくる。

「なんだよ、邪魔くさいよ。…うわ、天空くん朝から大量にチョコ食べたでしょ。甘ったるい匂いするんだけどぉ」
「うん、だって美味しいからさ?」
「チョコばっか食べてたら太るよ」
「その分運動はちゃんとしてるってば。……ねえ咲弥、俺に挿れられて痛くなかった?気持ち良かった?」
「痛くないよ。気持ち良かった…」

腹や胸に触れる万里の手が冷たくて心地良い。火照った体を冷やしていくみたいでもっと触ってほしくて、彼の胸に後頭部をぐりぐりと押し付けると、万里は喜んだように耳たぶにキスをしてくる。
それは擽ったいから要らないんだけどなぁ、と思っても、何故だか今の咲弥はそれを口にはせずにされるがままだ。

「そうなの?気持ち良かったんだ。じゃあ俺はちゃんと咲弥のアナルを馴らしてあげたんだ」
「んー?ならすって何?」
「馴らすっていうのは、こうして、」

長い腕が伸び、足の間にするりと入ったかと思うと、陰嚢の更に奥の尻の穴をつついてきた。下着越しに中指でこしょこしょとされ、むず痒いような擽ったいような感じに咲弥は悶える。

「そんなの知らないよ。気付いてたら挿入ってたんだもん。指で触られてないー」
「え、マジで?それなのに痛くなかったのはやっぱり夢だったからか……」
「服脱いだなって思ったら、いつの間にか挿入ってたの。その間なんて知らない」
「そう…咲弥ダメだよ。本物のエッチの時は、ここを指で優しくほぐしてもらわなきゃ。じゃなきゃ俺のでっかいの、挿入らないからね。何でいきなり挿入させたの?夢だからってそれはダメだよ」

咎めるような口調で言われながら、万里の指がぐっと減り込んできて咲弥は思わず「ごめんなさい」と謝った。あんなに気持ちが良かった夢なのに、簡単に挿入されるのはタブーらしい。気持ち良いからいいじゃないか、なんて単純な理屈ではいけないようだ。
と言うよりも、そもそもたかが夢でそんなルールを押し付けられるのは筋違いだし、何故それを万里に言われなければならないのか判らないが、咲弥はまともに考えることが出来ず、ふわふわとした思考の中で「次からはちゃんとならしてもらわなきゃ」なんてバカみたいな事を決めていた。