∴ 1 部屋の空調は完璧なはずなのに蒸し暑い。オレンジ色の暖かな照明が余計に暑く感じさせるしエアコンが壊れたのかと思うほど、もわもわとした熱気がある。 しかしこの熱は自分から発生しているというのにすぐに気付いた。頭上のエアコンは正常だ。 「あ、あん、も、死んじゃう…」 せっかく風呂に入って清めたのに、髪は汗でぐっしょりと濡れているし体中色々な液体で汚れてしまっている。汗や、唾液や、ローションや、精液で… 今だって、自分に覆いかぶさっている鷹臣の汗が顎先から垂れ落ち、白い胸にぴちゃんと着地した。 「いやぁ、もう、抜いてください、やだぁ…」 「はあ、ンなの、無理だっつの」 大きな手で顎をグイと拭う鷹臣は、頬を少し紅潮させて片目を眇ながらも口元に笑みを湛えている。桜介同様に何も身に着けていない逞しい肢体の筋に流れる汗の量は、物凄いことになっていて、ベッドシーツにシミを作った。 「だって、僕もう、イキません…ひっ、それに、脚痛い… 」 所謂正常位の形で鷹臣を受け入れている桜介は、自由な両手で両目を擦って涙を拭う。生理的な涙なのか、犯されている悲しさの涙なのかもう判断がつかない。中途半端に勃起している陰茎が、行為の激しさや回数を物語っており「こんなにシてしまった」というショックで恐怖すら覚える。 つまり、桜介の精液はもう底を尽きているのだ。 それくらい鷹臣にイかされ、蹂躙されてしまっている躰をもう桜介は庇うことも癒すことも出来ずにいて、いいようにされていた。 突かれるだけ突かれ、そのまま達し、また突かれる…一体、いくつのコンドームを消費したのだろうか。 「じゃあ今度はうつ伏せになりゃいいだろ。脚閉じていいぜ」 「ひっ、ふ、うぅ…」 一度抜かれて、体制を立て直される。 ずっと大きく開脚されていたからか、閉じる時にグキッと関節が鳴った。軽く痛みを覚えながらノロノロとうつ伏せになって脚を閉じる。これはいいかもしれない、脚が痛くないし鷹臣に顔を見られないしこっちも彼を見ないから、まだ気持ち的に楽だ。 だが、桜介の中で黒く渦巻いている罪悪感が和らぐことはないのだ。 アキラを裏切っているという事実は、桜介の中に澱を作る。 この躰はもうアキラのものと誓ったのに、鷹臣に許してしまっている。いくら心までは許していないとは言っても、躰はこの様だ。昨日、アキラとあれだけ散々愛し合ったのに、もう無理というくらいに躰を重ね合ったのに、鷹臣に簡単にその跡を上書きされていってしまっている。 ほら、今も小さく息を吐きながら桜介に跨り、閉じられた肉の間へ己のそれを捻じ込むように挿入してきた。 「あっ!んぁ…っ!」 「ン、やーらけ…」 ヌルヌルとしたそれがゆっくりと感触を楽しむように挿入ってくる。尻肉に触れられたかと思ったら媚肉に割り入り、すっかりと解れたそこに生き物のように侵入した。 「ぁ、はあ、あんっ、あぁ…」 ピタリとフィットし、攻撃的な律動とは違う粘膜と粘膜のつるつるとした柔らかな揺さぶりに、桜介の躰がジィンと痺れていく。酷い、この躰は自分の心を容易く裏切る。 『あ、どうしよう…これ、前もあったやつだった…ぁ、やだ、やぁ…』 この体位は知っていた。前にも鷹臣にされたことがあり、「反応いいじゃねえか」なんて言って鷹臣が楽しんだ体位だ。ああもう最悪だ、何で忘れていたのだろう。 『そうだった…これ、先輩のおっきいのでもそんな痛くなくて、気持ちぃやつだった…うそ、そんなの要らないっ。気持ち良くなくていい。だって、アキラくんじゃなきゃ…アキラくんが僕を気持ち良くしてくれる人だもの。先輩じゃダメなのに…!』 やっぱりこれじゃなくていいです。そう訴えようと頭を動かすが、気持ち良いところ全てを優しく撫でていく動きに、桜介は言葉を飲み込んでいやらしい声を上げてしまった。 「ぁん!あっ、あぁっ…!」 「ノリ気になってきたか?」 ローションや色々なものでヌルヌルになって溶けたゼリーのように柔らかな粘膜は、嬉々として鷹臣のそれに吸い付き快感を与えてしまう。 女のそれとは違うのに、まるで女性器の如く勝手に濡れて求めるように収斂する動きまでしてしまい、桜介は枕に顔を埋めて感じながら小さく奮えることしか出来ない。 「そういや、好きだったよなこれ…ハア、ほら、いー感じにぐちょぐちょになってきてんぜ?メグのケツマンコ」 「ぁぅ、やらぁ、ひどい、ひどぃ…」 「なんも酷ェことしてねぇだろ。ん、気持ちぃことしかしねぇよ俺は…ああ、もう飽きないなこれ。ずっとハメてられるわ」 「そ、な、そんな、ずっとなんて、やです…やめて」 「いいじゃねぇかよ。風呂とトイレ以外はメグとハメっぱで過ごして、何回も何回もメグいかせて俺とのセックスしか考えられなくさせてやるよ…」 「いや、そんなのこわい、やだぁっ…ひん!あっ!」 |