熱の条件 | ナノ







流石にそこまでは…と言葉を濁されたが、まあ十分だろう。三島アキラの矛盾が一つ確定したのだから。これが絶対にキーポイントとなるに違いない。

『あとは高月に任せようか。僕がこれだけ働いてやったんだから、もうアイツのターンだぞ!』
「はあ、最初、のぞみさんから話を聞いた時、いつも見る金髪の人かと思いましたよ。そしたら全然違う人で少しビックリです」
「あのよく見るイケメンの人でしょ?外人みたいな顔で背が大きい人。あたしもそう思ってさあ、それならよく見るよって思っちゃった。でも違うよね、この人の方が顔があっさりしてるし」
『だからそれは鷹臣だ』

女子二人でおしゃべりしているのを他所に、鴻一は片手を上げて断りを入れると、高月へとメールを作成する。もう少し三島アキラを調べろという内容を打ち込みながら、彼女達の会話を聞き流した。

「それにあの背が高い人は大和の人だから違いますしね。その人も同じ日に見かけたので始め聞いた時はその人かなって勘違いしました」
「あ、そうなんだ。いつものカワイイ男の子と一緒だった?」
「確か一緒だった気が…シフト同じだった大野さんがキャーキャー騒いでたから面白かったです。さっきのカッコイイ人と、いつも見る大和のカッコイイ人とどっちが好きですか?って訊いたら選べないって言ってました」
「あー、大野さんイケメン大好きだもんね!」
「そうなんです。目がハートになってましたよ」

−…今、彼女はなんと言った?
児島あさみは今、なんと言ったんだ……

「えっと、児島さん?」
「へ!?は、はいっ」

思わずあさみの手を掴み、こちらを向かせる。ギョッとしたのぞみなんて無視だ。
心臓がドクンと鳴り、パズルが解けた時のような興奮が鴻一の背中を走っていき、体を熱くさせていく。
胸の奥と、頭の中が期待で膨らみ痛くなっている気がした。

「"いつも見る大和のカッコイイ人"ってこの人?僕の先輩なんだけど」

震えそうになる指をどうにか落ち着かせながら、スマートフォンを操作して桜介と一緒に写っている鷹臣の画像を出した。
それをあさみに渡すと、のぞみと一緒に画面を覗きこみながら「そうです」と言う。

「彼は白河鷹臣というんだけど、その白河も山田太郎くんを見た日に見かけたんだよね?あ、横にいる小さな男の子も一緒だった?」
「は、はい。この二人も見ましたよ。大野さんが騒いでたから、間違いないです」
「大野さんっていうのは?」
「同じバイト仲間で、えーと、カッコイイ人に目がない、ちょっと面食い?な人です…」
「その大野さんって人が、山田太郎と白河を見たんだよね?同じ日に」
「はい、多分…」
「………」

恵桜介と三島アキラが同じ日にF市のショッピングタウンにいた。これは、絶対になにかがある。
絶対に逃すな、と鴻一の中にある本能がサイレンを鳴らしながら何度も何度も命令してきた。