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はじめは同じだった。
そう、他のヴァンパイア達と同じで、血を求めてどこまでも強欲になれる獣。
そう思っていたのにそれが変わったのは、いつからだったのだろうか
「零!」
幸子の口からこぼれる俺の名前はひどく甘いのにそれにすがることすら許されないのだ。
「今日ね、夜間部で夜会があるの!優姫ちゃんもくるみたいだし、その…零も来てくれる?」
少し頬を赤らめる姿すらこんなにも愛おしいのに
「お前達みたいなのが集まる夜会なんて、行くわけ…ないだろ」
こんなことしか言えない自分がいっその事違う人間なら良かったのに
「そっ…か、ごめんね?零が私達のこと嫌いなのは知ってるのに…。私、から回ってばっかりで、だから零にも嫌われちゃうのかな…」
あんなにひどい言い方をしたのは俺で、むしろ俺が嫌われてもいいくらいなのにそれでも自分が悪いと辛そうに目を伏せた幸子に我慢ができなくなる
その白く小さい手にゆっくりと触れようとした、刹那
「ああ、幸子。こんなところにいたのか。もうすぐ夜会が始まるよ」
玖欄枢
奴のせいで触れそうになったては遠のいてしまった。
「あ、枢!でもまだ零くんとお話ししてるから待ってて!」
困ったように眉を下げて奴に弁解する幸子の手を今度は迷わずとった。
「悪いが、俺はこいつに用事があるんで」
突然のことに動揺している幸子の手をやや強引に引き、憎たらしげに俺を見ているであろう奴の鋭い視線を背中に受けながら月光に照らされた道を歩いた
「ぜ、零くん?どうしたの?」
こいつが困惑するのは当たり前だ。
今まで散々酷いことを言っておきながら今更になって思わせぶりな態度をとっているのだから。
だけどさっきの奴の目をみて改めてこいつへの想いへのタイムリミットが迫ってることが分かったのだ。
さあ、夜会を始めよう。
こいつへの想いを乗せて俺は幸子の手をとり片膝をついた
「Shall we dance?」
月の下でワルツを
(今宵はあなたへの想いをこのワルツにのせ)
(最高の夜をあなたに送ります)
(お手をどうぞ、お姫様)