04.
あの人と繋がった気持ち、それは願望であってそうやなった事。
それでも形にしてしまった以上、俺は今までとは違って欲を見せるんやろう。
そんな矛盾を浮かべてた授業中、ボソボソとあの人の声が聞こえた。まさか授業中に聞こえる訳がない、俺は幻聴を妄想するほど自分で思ってた以上に気持ちが昂ぶってたんやろうか。そう思うと窓から視線を感じて顔半分だけを覗かせる阿呆面があった。
「…何やってんねん」
『皆向こうでバレーしてるから抜けて来ちゃった』
「授業くらいちゃんと受けたらどうです?」
『だって光に会いたかったし』
「…運動音痴でバレー出来ひん言い訳に俺を使うの止めてくれます?」
『へへっ、でも光に会いたかったのも本当だよ』
何でこの人はこんなにも阿呆なんやろうか。俺が純な気持ちだけで想いを告げた訳やない事も知らんと浮かれ回って。
好きならそれだけでいい、こっちまで感化される。
「っちゅうか早よ戻らんと見付かったら説教されるんちゃいます?」
『そうなんだけど…ちょっと待って、あったあった』
「何すか」
『光に初めてのラブレター』
「、」
『返事書いてね、メールで良いから!って事で』
「はあ…」
『光に会えて充電されたよ、気付いてくれてありがと!』
「…………………」
色気も無くノートをちぎっただけのメモには今日一緒に帰ろう、その一言だけ。
よくもまあ、これをラブレターなんて言うし、わざわざ授業中に持って来んでええし、俺が窓際でクラスが1階やなかったら意味の無い行動やのに…でも、俺だって知ってた。あの人が授業中俺に会える事も手紙を渡せる事も分かってたからの行動やって。そのくせ有難うとか使い方間違うとるっちゅうねん。
「…あほ、」
最低限抑えてた想いが一気に膨れ上がる。俺だけ見てたらいい。俺の隣にずっと居ればいい。
堪えたかった独占欲まで沸き上がる。
俺が選んだ道は間違いなんや無かったって、自分にもあの人にも思わせたい。
「…悩む必要の方が、無い、かもしれへん」
声には出さへん息だけの独り言を呟いて携帯のメール画面を開く。
“しゃーなし、誘いに乗ったりますよ”
想いと裏腹な文章を手早く打ち込んで思った。間違いにしなければいい。オサムちゃんに依存してるあの人を消せば良いだけだと。
それは自分にしてみれば不満であって遠慮と躊躇いの要因やった。せやけどあの人から向けられる露骨な愛情はホンモノやし、俺がそこに肩入れしてやる義理なんか無い。
それなら俺は、ずっとあの人が隣で笑う様に、俺の情愛を仕向ければ良いだけ、やろ。
(20111203)
←