lark | ナノ


 


 04.



必然的に口が緩んだのは
あの人が阿呆やから。


lark
incident.4 緩む口に溜息


結局アイスを買わされて、コンビニの前で頬張ること3秒後。またあの人はベラベラと口を走らせた。


『1番最近付き合ってた元彼なんだけどね』

「はあ」

『今までで比較的良い人だったかもしれない』

「どんな男すかー」

『うーんとね、顔は可愛い系だけど社会人で、出逢いはアタシん家』

「は?」

『宅急便のお兄さんだったんだよ』

「あー…」


家っちゅうから強盗とか詐欺師とか変なもんが浮かんだけど宅急便か。ちょっと面白味に欠ける。
この人なら幾ら犯罪者でも顔が良かったら問題無いって言いそうやから余計やな。


『普通にね、遊園地連れてってくれたし買い物も付き合ってくれたんだー』

「せやったら何で別れたんです?」

『……付き合って1週間後、いつか旅行したいねって話してたら突然…』

「……………」

『僕には妻と子供が居るんだ!すまない!って3千円渡された……』


安っ。3千円て手切れ金っちゅう事やろ?それで3千円て。
まあ大方この人は妻子持ちって知らへんかったんやろうし、1週間やし、宅配業やし…それが妥当な金額なんか?相手も出来心で不倫してみたけど結局罪悪感から逃げたくなったと。男も男やけどほんま…


「痛いっすわ」

『え?』

「あ、こっちの話しなんで気にせんで下さい」

『そうなの?』

「っちゅうか男見る眼が無いのは十二分に分かりましたけど、」

『いやー!言わないでー!』

「その内捕まると思いますわ良え男」

『財前君……』


その勢いで突き進めば嫌でもいつかはまともな男に当たるやろう。多分。
多少性格に癖があっても顔さえ良けりゃ大した問題ちゃうんやろうし。


『財前君!本っ当良い人!アタシ財前君大好き!ね、光って呼んでいい?いいよねいいよね決定ー!』

「どうでもええんで抱き付くんは止めて下さいアイスが制服に付く」

『あ、忘れてた、っていうか溶けてるー!』

「……………」


何でこうも逐一めんど…、煩いんか。キャーキャー騒ぎ立てる女はテニス部に入ったお陰で嫌っちゃほど見てきたけどそれとも少し違う。キャーキャーよりギャーギャー。ブリブリよりネチネチ。(死語か)
鬱陶しい様でそこまでとは思えへんあの人に、失笑しながらタオルを渡してやった今日やった。

そして翌日。昨日と変わらへんテンションで朝練前の部室にやって来たあの人は眼が合うなり飛び付いて来た。


『ひかるーおはよう!やっぱり朝はヤル気無い顔してるね!』

「名前先輩は朝でも喧しいんは変わらへんすね」

『有難うー!』

「褒めてないんやけど」

『あれ、そうだっけ?』


早朝やろうが化粧はバッチリ、髪もグルグルに捲かれて今日も気合いだけは十分。ある意味、女としては良い心掛けなんやろうけど…そんな事を考えてると周りからは厭な視線。


『お、財前いつの間に名前ちゃんと仲良うなったんや?良え事やで』

『ほんまやで!意外な組合わせでビックリしたけど良えコンビかもしれへん…まさか、つ、付き合うてるとか…!?』

「部長はともかく謙也先輩…興奮するんは勝手やけど付き合うて無いで妄想は止めて下さい」

『だ、誰が妄想しとるっちゅうねん!!』

『あははっ!光は皆と仲良しだねラブラブ!』

「気色悪い事言うな」


こっちは朝から溜息吐きたくてしゃーないねんけど。そんな事なんやお構い無しにあの人は続ける。


『今日は光に報告があって!アタシ彼氏出来た!やったーおめでとー!』


何でやねん。
昨日あれから今日までに何があったんや。やっぱり堪えられんと大きな息が漏れた朝の部室。


(20101115)


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