platonic heart | ナノ


 


 別れ宣言



何事にも限度がある。
自分にも彼女にも言い聞かせたい言葉やった。


platonic heart
sweet.3-1 別れ宣言


「お、今日はちゃんと居るんやな」

『当然じゃーん!昨日蔵と約束したし!』

「うん偉い偉い。で、名前は財前と何してるん?」

『逆しりとり!最後に“ん”が付く言葉を言い合ってんの』

「逆しりとり…名前が楽しいならええけど…」

『うん!燃えるよ!』

「そか」


昨日、氷帝から帰って来るなりテニスコートの真ん中に名前と財前を座らせて部活時間を全てお説教に当てた。それだけの時間怒るっちゅうのはこっちも疲労度が半端無いけど、その甲斐あってか今朝はちゃんと部室で大人しくしとる。
本人には偉いって言うたけどそれが普通やし、油断は出来ひん。朝は学校居ってもいつの間にかフラッと消えるのが名前や。散々叱って外出禁止令を出したから1週間は大丈夫やと思うねんけど…それでも、なぁ。

況してや昨日はおでこの文字も勝手に消しよったし、財前が迎え行ったとか俺を敢えて怒らせたいとしか思えへん。一応は普段通り折れたけど、財前っちゅうキーワードのお陰で今日も内心引きずってるのが本音やった。


「ほな朝練終わりやでーパパッと片付けて授業行きや」

『お疲れ様でした!』

『蔵ー謙也ー!早く教室行こうー!』

「ちょう待ってな」


朝練が終わってもちゃんと居るな。相変わらずマネージャー業は適当やけど此処に居るならこの際良え。
部員全員が各自教室へ向かったんを確認して、ニコニコ笑顔を振りまく姿に1人頷いて鞄を持った瞬間やった。


「!」


不意に眼に入ったのは名前の首にある赤い跡。あーあー、そういや昨日俺が思わず、ってそんな訳あるか!自分が付けたなら忘れたりせえへん。っちゅう事は何や…昨日は無かったんやから今朝か?
朝、言うたら財前と一緒やったけど………。


『流石に名前も今日は家出せえへんのやろ?』

『しないしない!アタシ蔵怒らせる様な事したくないしー?謙也だってそれくらい分かってんじゃん?』

『よう言うわ…まあ良かったやん白石!とりあえず今日は、』

「名前。どういう事や」

『え?』

『し、白石?』

「ええからちゃんと説明しなさい」

『何がー?』


怒気を交えた俺の声に反して当人は『急にどしたの』なんてとぼけた顔をする。あかんなぁ、流石に今日は俺も可愛い、だけでは納得出来ひんで。


「俺に謝る事あるやろ?」

『昨日の事ならもう謝ったけど今日も謝れって言うの?』

「違う。他にあるやろ?」

『えー?課題やらなかった事とか?』

「そんなんどうでもええねん」

『じゃあ何!いきなりそんな事言われても分かんない!』

「俺の口から皆まで言わなあかんの?自分の胸に聞きなさい」

『はぁ?今日の蔵意味分かんないんだけど!』


へえ、あくまですっとぼける気なんやな?知らないの一点張りしたら今回も俺が折れると思ったん?
ハハッ、甘いわ。悪いけど今の俺は昨日の事も引きずってる言うたやろ。拍車掛けて嚇怒する勢いやねんで。世の中やって許される事とそうやない事があるって、それくらい分かってると思ってたんやけどなぁ!


「どうしても認めへんのなら俺にも考えがある」

『何を認めるかすら分かんないのにそんな事言われても困るし』

『お、お前等、とりあえず落ち着きって、』

「謙也は黙っとき」

『はい』

「名前」

『なに』

「今日中にちゃんと反省して謝らへん、っちゅうんなら俺は別れる」

『は、』

「言うとくけど折れへんから」

『な、なっ…!急に訳ワカメな事言い出したかと思えばそれ!?あー良いよ分かりました!勝手にすれば!』

「、」

『白石、』

『訳分からんちんは放っておいて謙也行くよ!』


なんやそれ。ここまで言わせてもその態度は何やねん…!
ほんま頭来た。何が逆しりとりや!大体今までが可笑しかったんや。何しても許される思って我儘放題で、俺も甘やかし過ぎたんや、俺があかんかったんや。
もう甘い事は無しやで、名前が謝ってちゃんと説明くれるまでは絶対口聞いたらへんからな!
どうせ直ぐに『ごめんなさい』言うてくるんやろうし?


「………ちょっとは懲りたらええねん」


別れるなんや言い過ぎたかもしれんけど…1日の猶予はあげたんやし、裏を返せば別れる気なんか全く無いって分かるやろ?
俺はな、いつでも名前が隣に居って俺だけを見てて欲しいんやんか。その気持ち、もう少し分かって欲しいねん。

後悔はせえへん筈やったのに俺を置いて小さくなっていく背中を見ると少しだけ後悔、した。名前が普通の事を普通にしてくれるだけで問題は解消するんやから、早く仲直り出来たら良えなって、そう思ったのに。


『白石、どないしたん?今日はカリカリし過ぎやで?』

「俺やって譲れへんもんがあんねん」

『あーよう分からんけどやなあ…ほら見てみ、名前も1人で寂しそうやん』

「……………」

『何で白石がキレとるんかほんまに分からへんみたいやし理由くらい言うたってもええんちゃうんか?』


普段振り回されるんは嫌や言うてる謙也が憂色を浮かべて俺と名前を交互に映す。そんなん見てたらやっぱり許せへん言うたって大人気ない態度やったんかなって、自分の非も認めようと思ったけど、


『あ。明日から他人になる人だ』

「っ!」

『!!!』


眼と眼が合えばコレや。
明日から他人になる?上等やないか。


「謙也!教室移動行くで!」

『しし白石…!(阿呆名前!)』


付き合うて初めて、闘いの火蓋は落とされたんや。


(20100911)

初喧嘩編、改めて蔵暴走編…
実際蔵はこんな子供っぽく怒らないだろうし本当に好きな女の子なら嘘でも別れるとか言わない筈です。温過ぎるギャグだと思って軽く流して下されば幸いです…!


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