今日も馬鹿ップルに付き合わされて、
今日も無意味に疲れるだけ。
platonic heart
sweet.5-2 正体
いつも通りな学校生活と変わらへん今日、休憩時間に便所行って教室へ戻ると、白石が辛うじて原型を止めてるくらいの物凄い形相でこっちを見てきた。
な、なんや…まさか名前の阿呆がまた家出したんか…?!と思ってみたものの、名前は呑気な顔でチュッパチャップスを喰わえて席に座ってる。せやったら何があったっちゅうねん。もしも喧嘩なんやしてたとしたら、それこそ名前は家出してるやろうし…。
あんまり関わりたないっちゅうのが本心ではあるけど、心優しい俺はついつい白石に声を掛けるんやった。
「白石、何かあったんか?」
『何でそう思うねん』
「何でって…そんなモザイク掛かる寸前な顔で言われても」
『俺の顔が汚いとでも言いたいんか阿呆謙也は』
「き、汚いやなくて怖いねんて!」
普段なら端正な顔を崩さずに笑顔で嚇怒を見せてくるのに、あからさま機嫌が悪いのを面に出すのは珍しい。どっちにしても恐ろしいんに変わりは無いねんけど…
そう思いながら尋ねると白石は『フッ』と鼻で笑って窓から見える空に視線を映した。一体何やっちゅうねんほんまに。
『なあ謙也…名前の可愛さは万国共通やっちゅう事くらい分かってたつもりやねん俺は』
「………は?」
『名前が可愛いって思われんのはしゃーないねん。それが世情ってもんや』
「白石お前大丈夫なん?」
『せやけどや!!』
「っ、」
『あんな外人もどき、謂わば○ー大芝もどきに可愛いとか言われたないねん!!』
「し、白石、ちょ、落ち着きて、」
『何がラブリィハリケーンや!全てを奪ったって何やねん!名前は俺の全てを奪って俺が名前の全てを奪ったんや!!』
「や、せやから、ちょ、待、」
『ほんま腹立つわー!!』
俺の胸ぐらを掴んでブンブン揺らしてくる白石はいつもの冷静さを全く無くして訳の分からん事言うてたけど。
つまり、名前が変な男からラブレターを貰ったんが気に入らんらしい。名前が他の男にちやほやされんのは今に始まった事やないけど今回は勘に触るとか兎に角気に入らへんみたいで。結局、呼び出しを受けた昼休みに俺と財前も駆り出されるんやった。(前置き長いわ!)
「……ちゅーかな、思ってんけど」
『何や』
「校内やったら名前と白石が付き合うてるんも公認やろうし、変な男なら尚更心配無いんとちゃうん?名前やってそんな男相手にせえへんやろ、覗き見せんでも…」
『阿呆!甘いわ謙也!!』
「え、」
『そうですわ…名前先輩が好きやとか吐かす阿呆は津軽海峡に沈めたりますわ』
「……お前もやろ財前」
よう分からんけど無駄に気合いが入った約2名に付いていけへんまま約束の時間が訪れて、桜の木の前で待つ名前の元にひとつの影が近付いた。
これだけ見れば学園生活お決まりの青春ページに見えんねんけどな…珍しく名前も名前でしゃーなし行くけど乗り気やないって感じやし。是が非でも喜んでるかと思えばそうでも無いねんな、意外過ぎや。
『ほんまに来よったでアイツ…どの面下げて手紙なんや書いたんか見といたるわ…準備はええか財前』
『いつでもええすよ』
「何の準備やねん!そのロープはどっから出て来たんや!何に使うつもりや!」
突っ込み役が1人しか居らんちゅうのも疲れるもんや。ハァ、と溜息を吐いたら早速男の声が聞こえてきた。
(来てくれて、有難う)
(…?)
(俺が手紙書いた本人だ)
(え゛!)
(驚くのも無理は無いな、俺達は初対面だし…)
『何や名前の顔が引きつってへんか?』
『あの男、後ろ姿からしてガタイええしビビってるんちゃいます?』
「…アイツ、もしかして鬼君ちゃうか?」
『鬼君?誰なんそれ』
「1個か2個上やったかな、テニスが上手い従兄弟が居るとか言うてたけど本人は料理部部長やで」
『料理部部長…?』
「俺も知り合いちゃうからな、多分そやったと思うけど」
『あんないかついナリして料理部部長なんか…一筋縄ではいかへん気するわ』
『深そうな男すね』
「何がやねん」
何をそこまで考える事があるんか、あくまで意味不明な会話を続ける2人を前に俺はもう先に教室に帰りたくなったけど、
(あの、本当に貴方が手紙書いたんですか…)
(何か可笑しいか)
(そ、そうかな、可笑しい、かな…っていうか、アタシ付き合ってる人居るから!だからその、)
(知っている。白石だろうテニス部の。だが俺はそれでも…)
(、)
(伝えたかったんだ、君にフォーリンラブ!ラブ、ラブ、ラブ!ラブアーンドベリー!)
(……………………)
俺等んまで見える角度から、ウインク付きでそう言い切った鬼君を見れば白石の口から撤収と告げられた。
…まあ、あのナリであれはちょっと。無い思うわ。
(蔵…アタシ男の子が怖いって思ったのは初めてかもしれない)
(それが普通やから大丈夫や)
(名前先輩、つらい時は泣いてもええんすよ)
(お前等どうなんそれ)
(20110116)
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