勘違いの妄想は脳内だけで済ませろだって?
誰に向かって言ってるのか分かってるんだろうな?
platonic heart
sweet.4-1 間違い
今日は良い風が入って来る。放課後のテニスでは面白い練習試合が出来るかもしれないな、そう思った昼休み。何だか視線を感じて窓に眼をやると此処に居る筈の無い女の子がヒラヒラと手を振っていた。
『やっほー!ゆっきー元気?』
「…また俺に会いたくなったんだ、名前ってば可愛い可愛いと思ってたけど本当に可愛いよね」
『うん知ってる。だけどブンちゃんと仁王たんは?教室行ったけど居なかったんだよね』
へえ。面白いな。
わざわざ俺に会いに四天宝寺から立海まで来たくせに早速他の男の話しかい?それは気を引きたいって事で良いのかな。少し幼稚だけどそれも可愛いで済ませてあげるからさ。
「名前、今日はこれから体育があるんだけど俺は見学なんだ。ほら、病み上がりだろ?せっかくだし部室でお茶でもしようか」
『アタシの話し無視なの?シカトなの?っていうかあれだけバリバリにテニスやっておいて病み上がりって…』
「そうとなれば早く行こう。真田に見付かると煩いしね」
『本気で無視…!ゆっきーのスルースキル無理矢理過ぎて怖いんですけど…』
何かボソボソ言ってた様だけどこの際それも聞こえなかった事にしてあげるよ。その方がこれからのお茶も楽しい時間を過ごせそうだろう?
俺って見たまんま他人想いな男だからね。特に名前相手なら尚のこと。
「そういえば今日は立海の制服じゃないんだ?」
『急いで来たし着替えてる場合じゃなかったかも』
「そっか…俺と付き合いたい思いでいっぱいだったんだな。嬉しいよその気持ち」
『………アタシもいつ来たってゆっきーはゆっきーだから嬉しいよ』
「ははは、大好きだなんて大胆だな。名前は可愛過ぎて眼に入れたくなっちゃうよ、本当に入らないかな?」
『本当に大丈夫なのゆっきー』
今日はいつもに増してぶっ飛ばし過ぎてるよ、とか、名前の方が話し飛び過ぎだよって話しだけど。まあいいとしよう。名前が1番に俺に会いに来てくれた事、心から幸せなんだ。ついに白石と別れてくれた訳だし……、白石?そうだ白石だ。その話しがまだだった。
部室に備え付けられた冷蔵庫からアイスティーを取り出して手渡すと、俺は彼女に話しを振ってみる。
「名前、白石と別れた経緯はどうだったんだ?」
『別れた?ゆっきーの中ではそこまで話しが進んでんの?』
「そう言ってただろ?」
『冒頭まで戻ろうか、全く言ってないから!』
「じゃあ何?まだ俺は浮気相手のままだって訳?」
『そもそも浮気じゃないんだけど…』
ミルクティーを啜っては眉を歪めて気難しい顔。普段はヘラヘラ笑ってるだけだし、たまにこういう顔見せられるとゾクゾクしてくる。何て言うのかな、男心を燻られるって言うか…そう、彼女の全てを奪いたくなる――――
『え?なに、ゆっきー、ちょ、せっかく顔だけは格好良いのに白眼向いて薄ら笑いで迫られるのは本気で怖いんですけど―!!』
「名前。ちょっと黙ってようか―――」
『あーっ!!本当に居た!名前ちゃん来てるっすよ丸井先輩仁王先輩!』
『クラスの奴が他校の女を見たって言うし、まさかとは思ったがのう』
『やっぱ名前じゃん。この間来てからそんな時間経ってないのに来るってどうなんだよぃ。面倒臭えんだからやっぱ転校したんで良くね?』
「……………………」
名前と俺との距離、残り15センチ足らずになったところで開かれたドアはとんでもない騒音達を舞い込ませた。
『赤也ー!ブンちゃーん!仁王たーん!会いたかったよー!!』
『俺も会いたかったっすよー!』
『つうか幸村と名前、無駄に近くなったか?』
『間の悪い時に入って来たようじゃの…向こう見てみんしゃい』
『うげっ!!』
珍しく2人でゆっくり過ごせると思ったのに。俺の邪魔したからには分かってるんだよな、この後どうなるかって事くらい。
まあ、俺的にはそれでも面白いから良いんだけど?
(20110419)
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