冬、卒業 | ナノ


 


 3.5



タイトル、早めのクリスマス。
本文、昨日のお礼と今日雪を降らせたお礼らしい。魔術が使える訳やあるまいし雪なんやたまたまやけど、あの人が笑ってたから、それで良いと思う。

日課と言うより今では義務付けされてる様なブログに光1号の画像を添付してパソコンを閉じた。毎日毎日こうやったああやった言うて自分でもよう続くと思うねんけど今更もう止める気にもならへん。このブログはもう2年以上続けてるんやから。
俺が高校入学して、あの人と出逢って以来1日も欠かした事が無い、から―――………


「は?部長から電話?」


翌日の昼休み、制服のポケットに忍ばせておいた携帯が震動したか思うと部長からの着信を告げてた。わざわざ校内で電話って何やねん。昼休みなんやから教室まで来い、そんな文句が瞬時に浮かぶけど相手は一応先輩な訳やし。
何でもない顔をして通話ボタンを押した。


「なんすか」

『ほんま財前は名前以外に冷たいんやから』

「上っ面では同じや思いますけど」

『俺にはそうは見えへんけどなぁ』

「はいはい、で、何なんすか?」

『……川口って、財前のクラスに居るやろ?』

「は、」

『放課後屋上に来て欲しいって、名前がラブレター貰ったんや』

「……………………」

『要件はそれだけや。ほな俺はちゃんと伝えたからな』


川口、その名前を聞いただけで心臓が止まったかと思った。それと同時に憎悪も込み上げてきた。
昨日は一言、釘を差しておいたし、一歩譲って陰でなら勝手に言うとけばええって、これ以上はシカトしといたろって気持ちがあったのに。本人に手出したとなれば話しは別や。悪かった、それだけや済まさへん。
せやけど部長もほんま厭なタイミングで嫌な連絡してくるもんや。昨日ん事は知らん筈やけど、実は見てたんちゃうかって疑いたくなる。


『財前』

「、」

『ちょっとええか?』

「別に、ええけど…」


席を空けてる川口の机を無意識に睨んでたら今度は頭上に影が出来て見慣れた顔がひとつ。
視線を外しながら神妙な眼をしてたのは謙也先輩で、教室から出ると足を止めた。一瞬どないしたんやろって思ったけど、部長の電話があった今やから、この先に続く言葉は何となく理解出来た。


『お、俺な、』

「ええすよ」

『へ?』

「名前先輩に告白するんやろ?」

『な、何でそれを…』

「顔に書いてますわ。あの人に惚れてますー、あの人に言いますーて」

『あ、いや…』

「別に俺に断る必要無いし、頑張ったらええんとちゃいます?」

『せやけど財前、』

「俺はあの人が誰と付き合うと関係無いし。まあ謙也先輩やからちゃんと言えるんかっちゅう心配はあるけど?」

『お前な……お、おお俺やってやる時はちゃんとやるに決まっとるやろ!』

「へぇーそれならええすわー安心しましたわー」

『ば、馬鹿にしとるやろ完全に…』

「嫌ですわー先輩を馬鹿にするなんや無神経な事、俺に出来る訳ないですやん」

『お前しか出来んやろその態度』

「謙也先輩って前から思てたけど大概失礼な男すわ」

『お前にだけは言われたないわ!』

「まあ、話しってそれだけやろ?俺トイレ行きたいんで」

『、ちょ、財前っ、』


“お前はそれでええんか?”
謙也先輩の口からその言葉が出る前に背中を向けてトイレへ入った。


「…そんなん、今更やろ」


俺が良いとか良くないとか、そんな問題ちゃうねん。全部あの人次第や、あの人が好きな様に生きれば良い。そこに俺の想いなんや関係無いですやん。
……それより、謙也先輩にまで俺の気持ちがバレてた事のんが俺にしてみれば大問題なんすけど。
せやけど、謙也先輩のくせに気を遣ってくるなんや少しだけ気恥ずかしくなった。


「…精々頑張って下さいよって」


俺は俺の遣りたい様に動く。山田太郎と山田次郎は俺が捕まえとくんで、謙也先輩も好きに動いたらええんですわ。
あ、せやけどそれなら謙也先輩に頼みたい事がある。後でメール入れといたらええか…とにかくまあ、これが、俺の生き方やねん。


(20110807)


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