スカイブルーに映える白、
それは眩しくて秀麗で、だけど儚い様にも思えた。
君を好きになった僕を
愛して下さい
captive.8 2人の横顔
『赤也、名前、おはよう………どうしたんだ仲睦まじく登校だなんて』
「はよーございます幸村部長!仲睦まじいとか照れるっすよー!」
『なんか赤也がね、ママが恋しいとか言っちゃって』
『へえ、それで母親離れ出来ない赤也の為に名前が手を貸してあげたって訳?相変わらず優しいな』
『後輩思いのマネージャーなので当然ですよね!』
「ちょっとそんな事一言も言ってねぇっすよ!マザコンみたく言うの止めて欲しいんすけど…」
一度繋いだ手を俺が離す訳もなくて、あのまま部室に入ればこの言われ様。そりゃ良い思いさせて貰ったけどさ、途端この扱いってちょっと酷くねえすか…ま、こんな冗談も慣れてるけどさ。
『そうだ、2人にも話しておかなきゃね』
「どうかしたんすか?」
『今日は昼から雨が降るから部活は休みだよ』
『え、本気で言ってるの?』
「今めちゃくちゃ晴れてるっすよ?」
『大丈夫、絶対大雨だから。それに最近は休みも無かったからね、たまには息抜きが必要だろ?』
『ゆっきー優しいけど…そんな言葉が出て来るなんて意外だよ』
確かに。この際予報的に雨が降る降らないは別として幸村部長がそんな労いを掛けてくれるとか、その発言のお陰で大雨が降る事を決定付けた気がするんすけど。
やれ気合い入れろ、やれ常勝立海の名に恥じない動きをしろ、1に練習2に練習3も4も5も練習…そんな部長の言う言葉とは思えない。口には絶対出さねえけど。
『名前も赤也も失礼だよ』
「おおお俺は何も言ってないっすよ!」
『まあ良いや、朝練は放課後の分までしっかりやれよ。明日からはまた十分にシゴいてやるからな』
「ういーす…」
明日はいつもの3倍くらい疲れるんじゃねえの…幸村部長の愉快そうな笑顔を見るとその予感は外れないんだろうって思って呑気に項垂れてたけど、視界の端に見えたのは俺の頭よりもっと下に落ちた頭だった。
「、名前先輩?」
『………………』
「どーしたんすか?大丈夫すか?」
『え、あ、なに赤也』
「気分でも悪いんすか?ボーッとして」
『ううん何でもないよ、ちょっと考え事』
「考え事?」
『そうだよ、これからコーヒー買うかフルーツオレ買うか迷って』
「じゃあ昨日のお礼っつー事で俺が奢ります」
『本当に?両方?』
「どっちかひとつに決まってるじゃないすか!2つ買ったって飲めないの眼に見えてるっす」
『そんな事ないのにー!朝コーヒー飲んで、授業合間にフルーツオレとかね?』
「駄目どっちかっすよ」
『赤也のケチんぼ』
そんな事言いながら俺の腕にしがみついてグイグイと自販機の方向へ引っ張てく先輩はちゃっかりしてる。朝練だってもう始めなきゃ何言われるか分かんねえ時間ではあるけど俺の足もしっかり自販機へ進んでて。どうせ怒られんのなんか慣れてるから良いやって、名前先輩に笑顔を返すけど。
やっぱり名前先輩は何処か可笑しい気がした。俺を見てるのに違うところを見つめてる錯覚さえ起こして、幸村部長だって今はまだ晴れた空を眩しそうに眼を細めて眺めてたから。
名前先輩も幸村部長も何かあるんすか?疑問は疑問のままだけど、2人を考えたら答えは何となく浮かんだ。きっとあの人の事なんだろって。
(20101124)
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