夢に見た2人は幼過ぎてガキで。
それでも愛慕があった。
君を好きになった僕を
愛して下さい
captive.7 空は青くて高いけど。
誕生日が1日違いで、家は隣同士。幼稚園も小学校も同じクラスで通学中も休み中もずっと一緒。
挙げ句にはどっちかの家に泊まる事も屡で晩飯を食べるまで距離は皆無。
兄妹より深く感じたのはきっと気のせいじゃねえ。名前先輩とあの彼氏には両親だって幸村部長だって、友達も俺も、誰も入れないと思った。
(平助、何してんの?)
(名前がお使いだって聞いたんじゃん)
(だったら何)
(迎えに来てやったんだろ!名前1人じゃ危ないってば)
(頼んでないし危なくないし!)
(ククッ!ハハハッ)
(何笑ってんの、嫌な感じ)
(好きだなぁって思っただけ)
(は?何言っちゃってんの馬鹿みたい)
(言わないで後悔すんの俺嫌だし。俺には良いけどさ、他の人にはちゃんと有難うって言えよ?)
(うるさいな!平助にはお礼言う様な事されてないじゃん!)
(そっか、それもそうかもな)
……だから?
名前先輩から話し聞いて、あの人に適う訳無いって思ったから?
だからこんな夢見んのかよ。
「……何でだよ、」
言わないで後悔すんの嫌だとか言うなよ。
背景は俺の知らない商店街。精肉也でミンチ、八百屋で玉ねぎを買った先輩を嬉々な顔して迎えに来たあの人。
名前先輩があんな険阻なとこ見た事もないのに、あの人だって話しでしか聞いた事ないのに。だけど多分、これは先輩の思い出だって思えた。だから、
「…先輩が好きなら、言い逃げしてんじゃねぇ……」
泣けた。
□
『赤也ー!おっはよー!』
「ちっす」
『あれ?元気なくない?』
「そっすか?普通すよ」
『じゃあ笑おうよ!笑ってる赤也のがアタシ好きなんだけど』
翌日遅刻しなかった朝、太陽を背負って笑う先輩を見ると幸村部長の言ってた意味が分かった気がする。
“言わないで後悔すんの嫌だし”
名前先輩はあの人の分まで生きてるんだって。俺や皆に好きだっていうのは気を持たせたいからじゃない。優柔不断な訳でもない。
単に、好きなものは好きだって伝えたいだけなんじゃん。あの人みたいに。
「名前先輩」
『なに?』
「俺の事キライって言って欲しいんすけど」
『はぁ?意味分かんないよ赤也クン!好きなのに嫌いなんて言えません』
「ハハッ、そっすよねー」
『、赤也?』
「そんなに好きなら手くらい勘弁して下さい!」
皆と同じ好きでも、やっぱり好きって思われてんのは嬉しくて。ぎゅっと手を絡めたら空へ顔を上げた。
「いつか越えるから」
『え?』
「好きじゃなくて愛してやるに変えてやるから覚悟しといて下さい」
『は、』
「あの人以上の男になるのは無理でも名前先輩の事好きなのは負けないんで!」
凹たれてた筈なのに何でだろうな。そんな強気な発言、自分でもビックリしたし許されねえ気がしたけど、
『あはははっ!馬鹿みたいじゃん赤也!』
「洒落にはならないんで馬鹿は余計だっつの!」
ちょっとだけ近付けた気分。
(20101112)
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