風邪じゃない病気、
そんなんあり得へんて。
夏の空に君が咲く
bloom.6 熱が上がる
『あ、おはようございます』
「、おはよう…」
さっきまで花火見てた筈やのにまた眠ってたらしい俺は名前が笑ったのにつられて口角を上げた。三度目になれば名前が居るのにも慣れがある、っちゅうか、そこに居って良かったとか安堵まで感じる様になった。
身体を起こすのは怠いけど、頭はスッキリして熱特有の寒気も熱気も何も無い。俺は元気だけが取り柄やし、あっちゅう間に治ったんやろなぁなんて寝起きで重い身体を起こした。
「…あれ?あれからまだ10分しか経ってへんの?もう少し寝てた気すんねんけど時計壊れたんかな」
『あれから1日経ってますよ』
「へ?」
『昨日花火見てから約24時間、謙也君はぐっすり寝てました』
「は、嘘や嘘やろ!?そんな冗談要らんて!」
『嘘じゃないですよ』
こんな意味も無い冗談なんかええって。そう思いながら携帯を開くと確かに日付は1日経った数字が並ぶ。
ほんまに24時間も寝てたん?なんぼなんでも熱あったからって寝過ぎちゃう?薬飲んだ訳ちゃうんやで?しんどかったけど何も食べてへんし飲んでへんし空腹で起きそうやん?
体調不良にはとにかく睡眠、それだけ俺が単純に出来てるって事か…我ながらどないやねん。そら身体も怠なるわ。
「ご、ごめんな」
『何がですか?』
「ほんまなら今日東京行く言うてたのに…」
『そんなの!気にしないで下さい!謙也君の身体が1番です!』
「いやせやけどタイミング悪くて」
『そういう時もあります!アタシはちゃんと待てるし、今は侑士の事より謙也君が心配なんですからしっかり治して下さい』
「―――――」
きっと深い意味は無いのに。
“今は侑士の事より謙也君が心配”
その言葉に心臓は面白いくらい煩くなる。な、何や。なんやねんて。お、俺やって目の前に寝込んだ人が居ったら心配ぐらいする。それが例え財前とか白石やったとしても心配ぐらいするに決まっとる。
せやのに一々喜んでどうすんねん、っちゅうか喜ぶってまずそれが何やねんて話しやん!そ、そんなん言うてたら俺が名前ん事好きみたいやんか………。
………ん?好き?
す、すすす、すす好きやと!?あほあほあほ!何考えとんねん阿呆謙也!
相手は侑士の元カノやで?今やって侑士ん事気にしてるし…の前に名前は幽霊やっちゅうねん!!れれ恋愛とかそれ以前の話しやわ!
『謙也君、やっぱりまだしんどいんじゃ、』
「だ、だだだ大丈夫や!!もう完璧回復や!おお俺の治癒力舐めたらあかんで!」
『う、うん、それならアタシも安心だけど…』
「そ、そういや侑士から着信があったんやった!昨日の電話に気付いてやっと連絡寄越して来たんやな、ちょうかけてみるわ!」
あかん。
一辺変な事考えたら意識してまう。ドキドキドキドキ、ドキドキドキドキ煩いわ阿呆ぉ!!
もう風邪やないのに顔と頭に昇った熱を冷ます為にも侑士へ電話を繋げる、けど、
「………あかん、やっぱりまた留守電や」
『前から忙しそうだったから、趣味とか勉強とか』
「8割趣味やな」
『あはは、そうかも』
「まあええわ、明日朝イチで行こ」
『え?』
「電話は繋がらんでも直接捕まえたら良えねん」
『―――、はい!有難う謙也君!』
「!」
熱は冷めるどころか一段と上がった気がする。
俺は多分変な病気なんや。
(20101013)
←