あり得へん珍妙さに頭はパンクしそうやったけど、
彼女はただ笑うだけやった。
夏の空に君が咲く
bloom.3 哀感に笑顔
結局、纏めるとどうなんの?
たまたま女の子に会うて、たまたま女の子を連れて帰って、女の子がたまたま侑士の元カノやって、その女の子がたまたま、幽霊、やった……………。
あっかーん!そんなん冗談でも笑えへんし誰が信じてくれんねん!俺自身どういうこっちゃ理解半分やのにどないしたらええか…!
せやけど、名前が嘘吐いとる様には見えへん、しな…
「なあ、ほんまに何も要らんのか?」
『はい要らないです』
「せっかくコンビニ行くのに俺が自分の飯しか買わへんのも、なぁ…」
『え、じゃあ、お水だけ欲しいです…』
「水!?そ、そんだけで良えんか?」
『、水が好きだから』
もう死んでるから飯要らん、そう言われたら外食するにも出来ひんくて近所のコンビニに向かう事にした。飯食って俺の頭が冷静んなったらもっとちゃんと話しをしよう、そうは思うけどやっぱり…真実味に欠けんねんな。
『あー謙也先輩』
「、財前!」
『何やってるんすか』
「何って、コンビニに、」
うーん、なんて首を捻ると入れ替わりでコンビニから出て来たのはさっき厭味を送って来た財前やった。一瞬どうしよ思ったけどちょうど良え。犬でも猫でもイグアナでも無いって教えたるわ!(ほんであわよくば財前も巻き込んでやな)
『ククッ、コンビニに餌買いに来たって?』
「せやから動物ちゃう言うてるやろ!此処に居るの見えへんのか!」
『見えへん見えへん何も見えへん』
「そういうんええって!俺の話し聞けや阿呆!」
『―――』
あれ、財前が面白可笑しくからかってくんのはいつもん事やけど…今の顔、何?
なんか――
『謙也先輩、幾ら彼女出来ひん言うてもそこまで行くとどうなん?』
なんか、俺が1人で変な事言うとる様な。
名前は俺の隣に居るのに。ちゃんと横で、俺と財前を映してるのに。
『……ま、今度メス猫見に来ますんで。ほな』
「……………」
『け、謙也君、』
「っ、」
財前に見えへんでも、名前は幽霊やって言うてたんやもん同然やんか。俺には見えるから財前にも見えるって思い込んで、1人で凹んでどうすんねん。寧ろ幽寂を浮かべるのは俺やなくて……
「ご、ごめんな」
『え?』
「俺、信じてへんかった訳やないけど…堪忍」
『……………』
「……………」
『えと、大丈夫です、』
「せやけど、」
『慣れてるから』
誰にも気付れへんくて空気みたいになってんのに、それに慣れてる?
そんな寂しいこと同然みたいに言うなや。それを普通にするなんか間違ってるやん。
『謙也君が、そんな顔する必要はないんですよ』
何でもないって笑った顔を見て、俺が思ってたよりこの状況は名前にとってキツいんやと気付いた。
(20100903)
←