01. oneday/4月14日
高校入学早々、あり得ない人に出会った。
その人は、誰から見ても格好良くて。誰から見ても性格も良くて優しくて。
なのに、なんであり得ないのか。
それは。
『名前ー!』
「あ゛、きた…」
『毎日毎日、ご苦労様やな』
「そんな他人事にしないで!助けてよ美紀!」
『無理』
「そんな薄情な『名前名前名前ー!』」
「きゃあぁあああ!!!」
『なんや、その痴漢にあった時みたいな声、』
「いや、まさにそうじゃない!痴漢以外のなにものでもない!」
『アハハ、名前は面白いなー』
アタシの名前を大声で呼ぶ(しかも連呼しないで、注目されてるじゃない!)彼は、白石蔵ノ介。
食堂でメニューを選んでたアタシの傍に駆け寄って来たかと思ったら、後ろから思いっきり抱きついてきた。(それはもうタックルと言っても過言じゃない。)
親友の美紀は呆れ顔でアタシを見捨てちゃって。お願いだから助けて!
「もう止めて止めて!恥ずかしい!」
『なん照れてるん、俺等の日課やん!まぁ照れてる名前も可愛いけどな』
「いやいやいやいや、間違ってるから!」
そう。
こんなことが毎日だから、あり得ない。
付き合ってるわけじゃない、のに。(百歩譲って付き合ってたとしてもこんなの無理!)
大阪のど真ん中で東京人のアタシが物珍しいからって人をからかうのも大概にして頂きたい。
白石君は平気かもしれないけどアタシは、平気じゃないんだから!
「とにかく離して、アタシご飯食べなきゃならないし、」
『うん、そら食べなアカンな、ぎょうさん食べて元気出すんやで』
「あ゛ー!!!席が無くなってる…」
辺りを見回すと、食堂は人でいっぱいで。
美紀なんてとっととランチを受け取って同じクラスの子と笑いながらご飯食べてる。
何でそこにアタシの席は無いの!?美紀の馬鹿ー!!
ショックを隠しきれないアタシは眉毛がハの字になってること間違いない。
「もー本当嫌だ…」
『なんも心配することないんやで?』
「え?」
『俺が席とってやってるから』
「なに言って、」
右手首をグイッと引かれて、
お前の席はここやろ?と手を引かれ隣に座らせられる
(強制的に隣の席?優しいんだか自己中なんだか)
(でも、)
(手首に感じる貴方の体温はとても暖かいの)
(2009)
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