俺様シリーズ | ナノ


 


 03. oneday/4月14日



昨日は散々だった。
お礼を言った後、アイツはニヤニヤニヤニヤしてて。
絶えれなくなったアタシが笑うな!って怒った瞬間カシャーって機械音。写メ、撮られた。

信じられない!

しかもその写メ、真っ赤になって怒ってるもんだから本当酷い顔だった。今度はそれ見ながら声あげて笑われたし。デリカシー無さすぎ!

思い出して憂鬱になってるともう店の前。
更衣室のドアを開けると今1番見たくない丸井ブン太の顔が目に入った。


『おー、今日早いじゃん』

「………」

『今日も不機嫌なわけ?』

「誰かさんのおかげでイライラしちゃってね!」


たーっぷり皮肉を言ってやると、さすがにアイツも驚いた顔をした。
フン、誰もが俺様を許すと思わないでよ!


『なんだ。ずっと俺のこと考えてたってことだろぃ』

「はっ、ハァ!?」

『夜な夜な俺のことを、ねー』

「何言っちゃってんの!?馬鹿じゃないの!?」

『さぁな。俺は先に店行ってるぜ』


バタン、とドアが閉まった後もアタシは固まっちゃって暫く動けなかった。
本当どんだけ自信過剰なのよあの男!!
…そりゃ、強ちハズレじゃないけど。でも普通あんなこと言う!?
だけど丸井ブン太の言葉ではっきり分かった。アタシの頭の中はアイツに侵食されてるってこと。


  □


「あー疲れた!やっと帰れるー」

『これで疲れてたらお前コンビニ以外で働けねーんじゃね?』

「煩いな、疲れたもんは疲れたの!アンタに関係ないし」

『おう、全く関係ないし興味も無い』


うわー…
丸井ブン太のこと気になってるって認めた瞬間これだよ。
アタシが可愛い言葉のひとつも言えないのが駄目なのかもしれないけど、ショック。


『うわ、やべー!』

「どうかした?」

『運動公園でテニスの約束してんだよ』

「て、テニス?」

『そ。俺テニスやってんの。格好良いだろぃ』


い、意外だ。
いつも手ぶらなアイツの肩には大きなテニスバッグが下げられてた。


『お先、また明日な』

「あ、うん…」


運動公園、か。
アタシの家から結構近いじゃない。
違う道から帰れば帰り道、だし。(すっごく遠回りだけど)
見てみたい。アイツのテニス。


  □


―運動公園テニスコート入り口

来ちゃった。
だってコンビニの丸井ブン太しか見たことないんだもん!見たいじゃない!
あ、キョロキョロ周りを見渡すと直ぐに赤い頭を見つけた。
こうゆう時便利ね、派手な頭って。


「ちゃんとやってんのかし、ら…………」


…言葉が出てこない。

アタシ迂濶だった。軽い気持ちで見に来たのに頭殴られたみたいな気分。
そこに居た丸井ブン太は今までコンビニで見てきたアイツとは全然違くて。
イキイキしてる。ボール追いかけてる姿が格好良いってゆうより、綺麗。

見惚れちゃう…
こんな姿見て惚れない女の子のほうが不思議だ。


『何しとん?』

「ひぃっ!!?」


無我夢中で丸井ブン太を見てたアタシは、後ろから声をかけられて肩が跳ねた。

び、ビックリしたー!
急に話し掛けないでよね、この人!


「何か用、ですか?」

『いやー俺の連れ、見とるけん知り合いかと思ったんじゃが』

「え、連れ?丸井ブン太の友達?」

『なんだブンちゃんの知り合いか。赤也辺りかと思ったのに』

「ど、どうも」


そっか、丸井ブン太の友達かぁ。
それよりアイツ“ブンちゃん”だって!超うける!


『ブンちゃーん』

「って、ええ!?」


なに人の許可もなく呼んでのよ!
嫌だまたからかわれる!勘弁してよ!


『仁王ジュースはー?ってあれ、』

「こんにちは…」

『何で仁王と一緒に居んの?』

『ブンちゃん見てるとこナンパした』

『仁王馬鹿だろぃ』

『プリッ』


なんか凄く呆れた顔してるような…
そりゃそうだよね、こんな所まで来て。下手したらストーカーって思われても無理ないな…


『ブンちゃん俺先行くぜよ』

『おー』


え。こんな気まずい雰囲気作っておいてあの人先に行くわけ!?
これからどうすればいいのよ…


『何しに来たんだよ』

「いや、と、通りすがりってゆうかなんてゆうか…」

『お前も馬鹿じゃん』

「うっ…」


返す言葉もありません。
アタシが俯いて黙りこんでるとアイツはアタシの頭をわしゃわしゃ撫でながら言った。


絶対来ると思ってた



(やっぱり俺様!)
(無断で人の頭触ってぐちゃぐちゃにしないでよね)
(アイツの笑顔と頭に感じる体温のせいでドキドキ止まんないじゃない)


(2009)


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