04. oneday/4月14日
一緒に山田君の家へ行って。
家まで送って貰っちゃって。
バレンタインの予行練習まで上手くいっちゃって。
アタシ、今人生最大の絶頂期なんじゃないかと思う。
『おい、すかぽんたん』
「、すか…?」
『お前の事やって』
「そ、そうですか」
自称絶頂期で浮かれたまま昼休みを迎えると阿呆よりランクアップしてそうなユウジ語で呼び止められた。ユウ君で頭いっぱいなだけに肩が跳ねるけど、とりあえずは、すかぽんたんの意味を説明して頂きたい。だからって聞いたところで『うっさいボケ死ね』くらい返って来そうだし適当に右から左にするのが妥当かなって。
アタシ的解釈ではあんぽんたんと大差ないんじゃないかな、多分。
『弁当持って何処行くねん』
「ちょっと部室に」
『午後の授業サボる気か』
「そんな事したら蔵の雷落ちるから」
『フーン』
「なに、どうかした?」
『何もないわ!俺は小春に会いに行くねんからお前もさっさと行けやボケ!死なすど!』
下手な事を言ったつもりはないのに結局は死なすとか言われてるし。ユウ君の地雷って広くない?
ドカドカ足音を立てて教室を出て行くユウ君を横目に、それならすかぽんたんの意味聞けば良かった、そう思いながら部室を目指した。
「…うわ」
どうせボーッと過ごすだけなら昼休みに昨日の分の掃除をしておこうと、優等生ぶって出来る女アピールしようかなっていざ部室を開けたけど1日掃除してないだけで酷い有様だった。別にゴミが落ちてる訳じゃないけど土足なだけに砂が凄い。ちょっとでも騒げば白い砂埃が舞いそうじゃん…
朝練の時に部室の中に入らなかったから余計不安ではあったけど、お弁当より先に掃除かな……。お腹は空いてるのに。
まあいい、まずは窓を全開にしてドアも開けっ放しにして、換気状態が整えば掃除用具入れからホウキを漁って内から外へ掃いていく。雑巾掛けはもう部活中で良いし砂だけ何とかすればとりあえずのお弁当!
いっそスリッパでも用意させて土足厳禁にしてやろうか、なんて気合いを入れて入り口から外へ思い切りにホウキを走らせた時だった。
『げっ!!』
「え?」
部屋中からかき集めた砂を追い出したのに、眼に映るのはまんま砂を被った男モノのシューズ。
な、なんか、見慣れた靴、なんですけど…?
『名前お前、俺に喧嘩売ってんのか!せやったら買うで!俺は女やからって容赦せん!寧ろお前相手ならとことん死ぬ気で闘ったるわ!!』
「ちょちょちょ、ユウ君!違うから!わざとじゃないし掃除してただけだから…!」
『とか油断させといて気が緩んだ俺にもう1発砂掛けんねやろ』
「あの、アタシそこまで性格悪いと思われてんの…?」
“そんなに言うなら許したっても良えけど”ふんぞり返った様な物言いだったけど安堵の息が漏れる。
まさかユウ君に砂ぶっかけるなんて…謙也なら良いけどユウ君に嫌われたらどうすんの!せっかく絶頂期だったのに台無しじゃんか!
あれ、まさかもう絶頂期終わりとか、ないよね。
「ご、ごめんねユウ君」
『わざわざ掃除しに来たん?』
「あ、うん」
『他に誰も居らんのか?白石とか』
「今日は誰も居ないよ」
『あっそ』
言うだけ言って出て行く後ろ姿は何とも寂しく感じて。ユウ君が来てくれたのに一瞬で帰っちゃうとか、最初から居ないより切ない。けど待って、だったら何しに来た訳?小春ちゃんは?
小春ちゃんに会って漫才でもやってたんじゃないの?
足りない頭では理解出来ずに呆然としてるとまた、緑のバンダナがゆらゆら近付いて来る。
え、戻って来たの…?
『俺も昨日サボったし』
「、何を?」
『部活やボケ名前!掃除手伝ったる言うてんねん!お前に白石の機嫌取りとかされたら俺がどやされんねんで阿呆!』
「……………」
舌打ちしながら頭を描く左手とは裏腹に、右手にはいつの間に持ってたのか湿らされた雑巾。
じゃあユウ君はアタシの為に部室へ来てくれたの…?似合わない掃除までして?
「ユウ君、ありがと…」
『何がや!小春が用事あるっちゅうからしゃーなしやでしゃーなし!ほんまは嫌やねんめんどいねんたいぎいねん!』
「うんそれでも良いやありがとう」
『うっさい!黙って手動かせやシバくど!』
雑巾でロッカーを磨くなんてやっぱりユウ君には似合わないけど。もし結婚でもしたらこんな感じだと良いなって都合良く妄想しちゃうとつまらない掃除時間はあっという間だった。
ええ暇潰しにはなったなぁ!
(偉ぶって言ってても結局磨いたのは小春ちゃんと自分のロッカーだけとか)(らし過ぎて可愛い)(って、アタシのロッカーにはすかぽんたんって書かれた紙がガムテで貼られてるんですけど!)
(20100724)
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