俺様シリーズ | ナノ


 


 01. oneday/4月14日



帰宅前のLHR中に眺めてたのは1週間前に渡された進路希望調査と三者面談のプリント。高校生活3年間今まで何度か似たようなものを渡されては来たけど、進路希望と三者面談が同じ1枚の紙になってるなんて初めて見た。
教師が面倒だと思ったのか、それともそれだけプレッシャーを与えてるのか。前者はどうなのって感じだし後者は後者で配慮不足というか。

どちらにしろ流石にそろそろ、迷いは捨てて決心しろって事だよね。いつまでも高校生で居られる訳じゃないし、大学や専門学校に向けて受験勉強をするか就職試験に向けて勉強するか、2つにひとつ。
まぁ、なんだかんだ言ったって大学に行きたいって事は決まってるし自分相応の学校にするかちょっと上を目指すかどちらかってとこだけど…とりあえずは上を目指しながら両方受験する、そう決めた時だった。


『フーン。お前そこ受けるんや』

「、ユウ君」

『名前の頭で受けるんは無謀やろ』

「ちょ、ちょっと勝手に見ないでよ!」

『第一はダメで第二希望確定やで、阿呆やから』

「う、うるさいな…」


後ろの席から控え目に身を乗り出してプリントを覗いて来るユウ君に怪訝の眼を向けたけどそれも本人にしてみたら無意味な抵抗ってやつで。冷眼に加えて口角は上を向いてるって、本当にアタシを馬鹿にしてるらしい。
受験だってまだ数ヶ月も先だっていうのに今から落ちるとかダメとか止めて欲しいんですけど。


『っちゅうか俺と同じやし』

「え?」

『大学。俺と同じや言うてんねん!ツンボか』

「嘘、そうなの?」

『狙ったくせに白々しいわー!高校も3年間クラス同じで大学も同じやとは立派なストーカーやで気色悪い』


それはまた散々な言い種じゃないですか。クラス替えがあるのは毎年必須で希望出来る訳でもないし大学だってたった今初めて聞いたっての。なのにストーカー呼ばわりは酷くない?気色悪いって、そろそろ言われ慣れては来たけど傷付くんだからね。


『――では今日のホームルームは以上!チャイム鳴ったら帰って良えで、せやけど名字!』

「、はい?」

『ちょっと』

「はぁ…」


今度は担任からの指名に『何やらかしたん?』とかお説教される事を前提に『阿呆やから何やったんかも分からへんか』なんて言われる始末。ユウ君から見てアタシってどんな存在なの…!
傷付くだとか言ってみたって本当は同じ大学で嬉しいって思ったのに。乙女心、全然分かってない!こんな口が減らない男に惚れたアタシもどうかしてんのかな。


「先生何ですか」

『今日、山田が休みやろ?』

「あーそうですね」

『で、明日は進路希望提出日や』

「あーそうですね」

『山田にプリント持ってって欲しいねん』

「、は?」


アタシと山田君に何の関係が、突っ込みたいのを我慢してみればプリント届けろってどういう事?
今さら渡さなくても1週間前に皆貰ってんじゃんか。何でアタシがわざわざ貰ってるものを運んであげなきゃなんないのって話しですけど。


『真面目な山田の事やから大丈夫やと思うねんけど、まだ提出されてないし、もし無くしてたらあかんやろ?』

「……考え過ぎじゃないんですか」

『それにやなぁ、今回は親御さんに三者面談の希望日を書いて貰う必要がある。そうなると念には念を、っちゅうやつやな』

「だとしても何でアタシが」

『住所調べたら1番近くに住んでるんお前やねん適任や!』

「えー…っていうかアタシ部活もあるし」

『テニス部マネージャーか。大丈夫やマネージャーにも休息は必要やしな、渡邊先生なら笑顔で行って来い言うてくれる筈やで』


そりゃオサムちゃんは適当主義だから言うだろうけど。それでも仲が良い訳じゃない男の子に見覚えある紙を持って行くなんてこと…向こうにどう思われるかも分かんないのに正直気が進まなかった。それでも先生の押しが強くて根負けしたのはお人好しな証拠なんだろうか。だって住所聞いたら帰り道の途中だったし『名字は優しい奴やしな』って言われたら…断りづらいじゃんか。

さっきまで眺めてたプリントを手に席へ戻ると肘を付いたユウ君がまた何か言いたそうにこっちを見てくる。


『何で名前が山田ん家に行くねん』

「そんな事知らないよ、家が近いからって理由だけじゃん」

『山田やって体調崩したとこに名前が来たら悪化すんで』

「知らないってば!アタシだって好きで行くんじゃないもん!とにかくそういう事だから部活は休みます蔵に宜しく伝えてね」

『……………』


何にしても口を開けば悪態ばっかり。いい加減、好きな男だって言っても頭に来る。
山田君がアタシに会って体調不良悪化するなら勝手にすれば良い。アタシには関係無いっての。


『名前』

「何、まだ何かあんの?」

『俺も行く』

「は、」

『しゃーなし、貸し1やで』


掴み切れない言動に脳内が困惑してきて、それでもお構い無くユウ君は珍しく嫌味じゃない笑顔を作ってた。

一緒に行ったってもええで

(それって、どういう意味があるの?)(どんな気紛れ?)


(20100626)


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