05. oneday/4月14日
光の独占欲とも取れる温もりがアタシを包んでどれだけ時間が過ぎたんだろ。5分、10分?優に30分は過ぎたんじゃないかって錯覚しちゃいそうなくらい長く永く感じたけど実体は1分も過ぎてない。
ただそれだけ、アタシにとっては緊張してしまう時間で加えて夢の世界みたいで、時間が止まったみたく思えたんだ。
「あ、あの、光…?」
『…泣き止んだんです?』
「お、お陰様で」
光に抱き締められたとなれば泣いてる場合じゃないし、考えるより先に涙なんか消えていく。
ビックリと幸せと、好感情ばっかりで埋められて言葉だって浮かんで来ない。
なのに光と来ればアタシの気持ちを知ってるのか知らないのか、アタシの身体を離して『ハァ』とでかい溜息を溢した。
『泣き止むん早いすわ』
「え、」
『もっと泣けば良えのに』
さっきまでの温もりは霧散してしまった様な、対極にある冷たい視線は満たされた心を抉って砕くみたいに痛くて。
光の、気持ちが、全然見えない。アタシには、分からない。
「……………」
『何です?また泣いてるん?』
「……………」
『ククッ、良え顔してますわ』
何でそんなに楽しそうなの?
何で笑ってられるの?
光がアタシを好きだって仮定したとしても、その相手が泣いてそれを見て喜ぶ人って居る?絶対あり得ないじゃん。何がそんなに面白いのか分かんない。
「光は、」
『は?』
「光は、アタシが嫌いなの?」
『また何を阿呆な事言うてるんです?』
「あ、阿呆じゃないもん!光が何考えてるのかアタシには分かんない!」
『、』
「いつも人の事からかって、だけど優しくて…それなのに急に冷たくなったりして、本当はどうしたいの、アタシが嫌いだから、アタシで遊んでるんじゃないの!」
優しくしたり冷たくしたり。気紛れで気分屋でマイペースな人、それが光だって言えばそれまでだけどアタシはなんだかんだ言ったって光の奥に見える暖かさを好きになったんだもん。
冷たい態度見せたって何処か眼が優婉でいつもドキドキしてたんだもん。
『……名前先輩がそう思うならそれでも良えすけど』
「、」
『俺ってガキなんですわ』
「、え?」
『好きな女、苛めたくなる小学生気質っちゅうやつ』
「―――――」
見下した様に嘲笑ってるのに、やっぱり光の眼は優婉にアタシを映してて小さな音を立てながらおでことおでこを重ねた。
っていうか、好きな女って、アタシ…?
これが光の告白だったりするの?
『今度は偉い間抜け面すわ』
「だって、光が、」
『何です?』
「アタシの事、好きって…」
『はー、俺そんなん一言も言うてませんけど?』
「ちょ、光!」
『そうは言うてもまぁ、』
「、」
面倒臭そうに頭をガリガリ掻きながら背中を向けた光は振り返ってアタシを横目に見ると、
あんたの気持ちなんやとっくに知ってますけど
優越感に浸った眼で口角を上げた。
(く、悔しい)
(って事は結局、光の思惑通りな訳で主導権は握られたままって?)
(ムカつくのに、それだけじゃなくて、背中を追い掛けたいと思った)
(そろそろ素直になったらどうなんです?)
(20100603)
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