俺様シリーズ | ナノ


 


 03. oneday/4月14日



風がヒンヤリ心地良い、さっきまでのアタシは間違いなくそう思ってた。なのに何で。今じゃ日射しが強すぎて風の冷たさなんて感じれないし顔も耳も全身が熱くて仕方ない。
光を見ていたいのに、直視出来ない。


『顔がめっちゃ赤いんやけど、日焼けでもしたんですー?』

「うう煩い!」

『俺でかい声は出してへんけど?』

「挙げ足取らないで…!」


外方向いたアタシの顔を覗いては無理矢理に目線を合わせて、後退りする姿を見たら喉を鳴らしながら愉快に笑って。悔しいけど完璧オモチャにされてる。
心の底からそれが嫌だと迄は思わないけどやっぱり気持ち良いもんじゃないし形勢逆転してやりたいって対抗心が芽生えてくる。ま、どんだけ頑張ったとしても光みたいに狡賢い男に無垢な乙女のアタシは勝てる訳無いんだけど。それでも、やっぱり告白だけは譲りたくない。


『急に黙って何考えてるんです?』

「、何でもないから!」

『はぁ』


何考えてるって、光に告白されたい、とか言えないってば!言ったとすればソレが告白じゃんか…。馬鹿なアタシでもそれくらいは分かってるから!
っていうか、さっきからまじまじと舐め回す様に見てくんの止めない…?お陰で熱が冷めるどころか火照る一方で、暑くて熱くて仕方ないんですけど…!


『名前先輩?』

「は、はい」

『どうでも良えけど変顔は止めて下さいね』

「、分かっ……え?」

『せやから変顔やって』


人差し指でズイズイおでこを押されて、熱さなんか振り払っていざ冷静になってみれば『変顔』?アタシが?つまり不細工って?


「お、」

『お?』

「お、お、大きなお世話だよバーカ!!光なんかぜんざいの角に小指ぶつければ良いんだよ!」

『ぶっ』


逃げる時は吐き台詞が必須だとか思った側から間違えた。光が好きなものと言えばぜんざいだって思ったけどぜんざいに角は無かった。
ただでさえ不細工発言されて泣きたくなってんのに『ぶっ』て。『ぶっ』って何。不細工に加えて馬鹿だとか思ってんでしょ?酷過ぎる、最低、極悪人、でも好き…そう思っちゃう自分が憎々しい。


「あー……」

『名前?幸薄そうな顔してどないしたんや?』

「……謙也普通にムカつくんですけど」


羞恥心から居たたまれないでいたアタシは吹き出した光の顔を振り返って見る事なんか出来なくて、勢いのまま部室に駆け込むと今度は謙也が点火スイッチを押して来る。
このタイミングでソレは無いでしょ、いつもなら殴る勢いで謙也に飛び掛かるとこだけど今は…


「ね、謙也」

『お?今日は野獣化せえへんの?』

「聞かなかった事にしてあげるから答えて」

『、うん?』

「アタシって特別可愛いとは言わなくても普通に可愛いよね?不細工じゃないよね?」

『は?』


くだらないけどソレだけが引っ掛かる。
光に言われたから凹むし、謙也に聞いたって光の言葉じゃないなら意味が無いのに。でも誰かに違うよって否定して貰わなきゃ気が気じゃなくて。
完璧恋愛モードに入ってるアタシはただ真剣大真面目だったって言うのに、


『名前が可愛い?アハハハッ!そんな事あったら女は美人しか居てへんやん!』

「なっ、」


謙也はアタシの気持ちなんて知らずにお腹抱えて大爆笑。しつこいけど、いつもならめちゃくちゃムカついて躊躇わず殴り掛かってる。嘘だって、本当は可愛いんだって謝るまで謙也を責め続けるけど今日は……、


『、ちょ、名前?なな何で泣くんや…!!』

「うー…」

『こ、こんな冗談いつもん事やん!どどどどないしたっちゅうねん!』


光っていう前立てがあったから単なる冗語で済ませられなくて。
やっぱり光は本心からアタシが不細工だって思ってんだ。不細工だと思ってる女なんか好きな訳無いじゃん。告白されたいとか、アタシが1人勘違いして舞い上がって調子乗ってただけなんじゃん。


「げんや゛のばがー!!」

『す、すまんて!そんな気にする思わへんかってん!悪いと思ってる!』

『ほんま何曝してくれとんすか謙也先輩』

『、財前』

『名前先輩もまだ変顔続行中なんです?』

「、」


光だって何で居んの?仮にもアタシ泣いてんのに変顔続行中とか酷いにも程がある。悪罵しか出て来ないなら喋らないで居てくれた方が全然良い。


『財前、変顔って幾ら何でも無いやろ!』

『泣かせといてよう言いますわー』

『そ、それはやな…!』

『っちゅうか俺は名前先輩が可愛い、っちゅう意味やったんやけど』

「、え……?」


悪罵しか出て来ないって、思ったのに。
可愛い?変顔の意味が可愛い?良く分かんないけど本当は光、アタシが可愛いって思ってくれてたの?


『――なんて』

「は、冗談!?」

『ククッ、嘘ですわ思ってますって』

「ど、どっちなの…」

『ソレ。そういう顔』

「え?」

『他に見せんで下さい』

「、ひかる?」


期待して落とされて、もう信じられないとは思ってもやっぱり期待して。フッと光の顔から笑顔が消えればアタシの呼吸も一瞬止まった。

俺以外に騙されたらあかんで
(頭に置かれた手は光だとは思えないくらい優しかった)


(20100526)


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