俺様シリーズ | ナノ


 


 01. oneday/4月14日



「財前君は好きな人居ますか?」

『何なんですか急に』


“阿呆が居る”明らかに呆れた眼と冷めた声を向ける光は後輩から借りた(奪った)眼鏡を掛けてラケットでそっちを指すアタシを馬鹿にしてるみたいだった。寧ろリアルに馬鹿って思ってるに違いない。


「良いから答えなさい!」

『それってそういう趣味?それともそういうプレイを強制してるんですー?』

「ち、違うし!」

『ほな何ですかー』


遠巻きに見てくる謙也と蔵なんかは対照的で『何言うてんねん』て首を傾げる顔と『仲良えなぁ』て微笑ましく笑う顔。部活が始まる前の部室は個性が個性を呼ぶ様な多種多様の色があって、それでいて暖かいってことには変わりない。そんな雰囲気がめちゃくちゃ気に入ってるアタシだけどただ1人、光に関してはまた別の話し。


「もう良い質問変えます!財前君は彼女が欲しいですか?」

『……名前先輩』

「何ですか」

『それって新しい感じの告白なんスか』

「、はい?」

『素直なんか素直ちゃうんかよう分かりませんわー』

「だ、だから違うってば!!」


光が言う様にアタシがしたいのは告白じゃあない。それは断固として違うって言い切れる。じゃあアタシが何で教師風にこんな質問ばっか繰り返すのかって言えば本人も御察しの通り光が好きだからであって。
光に彼女が居ないのは2年も一緒に居れば難なく分かるし、ただの勘だけどそういう心配って大丈夫そうな気がする。寧ろ光だってアタシの事好きそうっていうか。これも勘だけどそんな気がする。
だけどそんな安堵も毎日感じればもっと慾が出てくるってもんで、高校3年生を迎えた今、最後の1年は彼氏彼女として付き合いたいって。だったら当然希望としては光から告白して欲しいし、無意味だと思われそうだけどもソレを促したいっていうのが狙いなワケ。だったら普通に聞けば良いのにそれが出来ないのは恥ずかしいとか照れ臭いとか、なんだかんだ言ってアタシも乙女乙女してるんだよね、だって女の子だもん。


『違うなら尚更意味が分からへんのやけど?』

「あ、アタシはそろそろ彼氏作ろうかなって思ったから、光はどうなのかなって、」

『フーン。誰か目ぼしい男でも居るんや?名前先輩やのに?』

「なっ、どういう意味!ああアタシだってね、これでもちょこっとはモテるし今日だって告白されたんだから!返事は保留にしたから、ちょっと考えてみても良いかなって、思ったもん」


悔しくてムカついて精一杯の嘘なんか言ってみたけど流石にソレには謙也も蔵も瞠若して法螺だってのは言わずとも分かるらしく。
言うんじゃなかった。後悔、その一言に尽きるって口が引きつりそうになったけど、


『へぇ、よっぽどの物好きが居るんや顔が見てみたいわ、紹介して下さいよって』


敢えて乗って来る、お得意の貶んだ笑顔のお陰で口だけじゃなく眉も歪んで顔全部が引きつってく。
ね、光ってアタシが好きだって思ってたんですけどそれにしては酷くない?何なのこの扱い。何々、散々自惚れてたのに結局はアタシの勘違いだってこと?
本当超ムカつくんですけど。


「ひ、光なんかに紹介する訳ないじゃん!ねえ謙也!!」

『俺に振られても…』

「うんって言いなよ気が利かない!」

『めっちゃとばっちりやんけ!』

「煩いよ馬鹿ばかヘタレ!」

『っちゅうか、』


鈍い鈍い謙也でさえも八つ当たりだって理解して怪訝をぶつけてくる。素直にごめん、なんて言えるアタシでも無いから胸中だけで謝ってるとそんなやり取りにも飽きたと言わんばかりに光の声が重なる。


「な、何ですか」

『名前先輩、見てて痛々しいんですわ。いい加減黙りません?』

「っ、」


それはムカつくって言葉で流せられるものじゃない。本気の本気でショックだし傷付く。
痛々しいとか黙れとか、本音だとしても普通ならもっと言葉を選んで平穏に済ませようって思うじゃん…光は、アタシに冷た過ぎるんじゃないの?

やっぱり自惚れは自惚れで、アタシの勘違いだったんだ。反論する元気も無くなって光のロッカーを睨んでると、不意に眼鏡が外されて5センチ前には光のアップ。


「ひか、る…?」

『俺の反抗心すわ』

「え?」

『阿呆なくせに名前先輩が俺を試そうとするから』

「、」

『どうせなら泣いた顔見せて欲しかったんやけど』


意地悪な男って思った。超絶性格悪いって思った。
でも、至近距離の光に見惚れて格好良いって思っちゃうアタシは所謂マゾってやつのかもしんない。

試すような真似したって無意味ですわ
(嘲笑う彼にも好きが募る)


(20100519)


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