俺様シリーズ | ナノ


 


 05. oneday/4月14日



ランチが終わると今度は紅茶が出て来て、これはまた物凄い値がするんだろうなぁって。

ぶっちゃけ紅茶を口にしたからってその価値なんて分からないけど、部屋中に漂った茶葉の薫りと注がれたカップのとんでもない高級感は味わったことがない。普段インスタントか午後ティーが妥当なアタシはたかだか紅茶を飲むっていうその行動にまさか緊張する日が来るとは思わなかった。


『何だ、紅茶嫌いなのか』

「き、嫌いじゃないよ好きだけど…」

『口に合わないのか』

「とんでもない!」


確かに良い意味で口に合わないとは思うけど。庶民なアタシがお紅茶様に文句言うなんて恐れ多いも程がある。
カップを持つ手が震えそうになるアタシとは反対に、優雅な雰囲気を纏った跡部は慣れた顔して紅茶を飲んだ。認めたくはないけど流石っていうか様になりすぎ。(なんか悔しいんだけど)


「…跡部って、本当に凄いんだね」

『アーン?』

「お金持ちだっていうのは分かってたけど、いざ目の前にすると気品漂い過ぎて…ちょっとビックリした」


一瞬眼を見張った跡部だけどカップを置くなり喉を鳴らした。


『漸く俺様の偉大さに気付いたか』

「偉大さじゃないけど…まぁいいやそれで」

『一般庶民のお前に急に俺様を理解しろって方が無理があるからな』

「…………」

『大丈夫だ心配するな。次期に慣れる』

「次期に慣れるって、慣れないよ…」


何がそんなに面白い?聞きたくなるくらい可笑しく笑い続ける失礼な跡部に怪訝を浮かべたけど、やっぱり何処か残念なのか的違いな返答に怪訝に拍車が掛かった。
アタシがこんな生活出来る訳がないのに慣れるも何も………、ちょっと待って。相手は跡部だもん、もしかして今後もこんな生活に付き合わせる気なんじゃないの?
いやいや、アタシは散々授業の大切さを主張したんだし流石に…。
文句を浮かべては頭を唸らせるけど、そう言われた訳でもないのに変な心配をするアタシも残念なのか。


『それより、だ』

「え?」

『佐々木とやらには言ったんだろうな』

「言ったって、何を?」

『好きな男はお前じゃないって事に決まってんだろアーン?』

「……………」


佐々木君だって告白してくれた訳でもないのに好きじゃない、とか言える筈ないのに何言ってるの?

だけど、やっぱり跡部を見てたら残念な事だって考えたくなる。
特別視されてるんじゃないかって思いたくなる。


「跡部って変わってる…」

『なんだと?』

「自信過剰だし見当違いな発言ばっかだし」

『……………』

「自己中なマイペースだし強引過ぎるし、それに、」

『“惚れちまったし”?』

「、」

『バーカ。お前が考えてる事くらい顔に書いてんだよ』

「か、勘違いだし、」

『嘘吐いたって無駄だ、名前。俺様の気持ち欲しくないのかよ?』

「っ、」

『分かったなら――』


跡部が伸ばす腕がスローモーションに見えて、近付く度に心臓が早くなる。
ドキンドキンドキン、頭が痛くなりそうなくらい大きな音で、大きな手が頬っぺたに触れたらアタシは首を振ることさえ出来なくなった。


正直に、好きって言えよ

初めは嫌いだったのにこんな短時間で好きだとか馬鹿じゃんか。だけど跡部がアタシに笑うから、跡部が悪い。

(…………)(早く言えって言ってんだよ馬鹿野郎)(ば、ばかばか言わないでよ…!)(馬鹿じゃなかったら何なんだ一体)(アンタねぇ…!)(ククッ、扱いやすい女だな)(!)


(20090831)


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