俺様シリーズ | ナノ


 


 01. oneday/4月14日



『従業員には説明しておいたから!名前ちゃん5日間宜しくね』

「はーい…」


親戚に制服を渡されて溜息1つ。
ケーキとバイトじゃわりに合わないんだけど。
でも美味しかったなーケーキ。やっぱ人気なだけある、あのチョコレートヤバイ!また食べたいなぁ…

ぶつぶつ独り言のように文句を言って着替えてると、更衣室のドアノブがカチャ、と音を立てた。


『あ、先客いたんだ』

「きょ、今日からお世話になります」

『今日から?あー、オーナーの親戚ってお前?』

「は、はい」


ぶっきらぼうにドアを開けたのは真っ赤な髪をした男の子だった。

うわー派手な頭。
でも、なかなかイケメン?
こんな人働いてたんだ、役得、とか思ったり。


『シフト一緒みたいだから宜しくな、俺、丸井ブン太』

「名字名前です宜しく、丸井、君」

『……………』


あれ?
アタシが挨拶した途端さっきまでニコニコしてた丸井君は黙りこんでしまった。
な、何、何で?
なんか変なこと言ったっけ?


「あ、あの…どうかした?」

『…何でもねー。っつーかお前俺のことジロジロ見すぎ』

「え、あ、ごめっ…」


だって格好良いんだもん!
見惚れちゃったりするじゃない!
丸井君はクチャクチャとガムを食べてて、プーッと綺麗な風船を作った。
パンッと音を立てて風船が割れると。


『なに、俺に惚れたわけ?一目惚れってやつ?』

「………は?」

『そんな熱い視線送られても困るんだけど。ま、惚れる惚れないはお前の自由だけどな』


な、な、な………。
今コイツ、なんて言った?


『それより着替えたんなら早く行け。ヘルプできたんだからちゃんと仕事しろ。俺の仕事増やすなよぃ』

「―――――!!」


ハァー!??
なにあの俺様っぷり!!

前言撤回!誰が格好良いんだ!何が役得だ!
最悪最悪、なにが“惚れる惚れないはお前の自由”だ!!ふざけるなー!

今の瞬間アタシの脳ミソには、丸井ブン太=何様俺様最低野郎とインプットされた。


  □


「有難うございましたーまたお越しください」


…とはいったものの。

悔しいけど。認めたくないけど。
アイツ、格好良い。
なんてゆうの、アタシのストライクゾーンなんだよね。
無意識に目がいっちゃう。
お握り並べてる姿でも絵になるってゆうか(しかも仕事中もガム噛んでるし!)
性格悪いのに顔が善いって卑怯よね。


『名前ちゃん、あがっていいよ!お疲れさま』

「はーいお疲れさまー」


そんな格闘をしてると、親戚の声がして早くも5時間がたっていてバイトの終了時刻だった。
更衣室のドアを開けると、また赤い頭があった。


『あれ、お前もうあがり?早くね?』

「…おつかれさまでした」

『何だその態度』


アタシは丸井ブン太と目を合わせないように下を向いた。
幾ら顔が善いってゆったってアタシはまだ怒ってるんだから!


『ま、いいけど。明日もシフト一緒だぜぃ』

「うわー嬉しくない」

『そう言うなって。分かってんだぜ?』

「はー?何を?」


意味深に言うもんだから思わず丸井ブン太の方を見てしまった。
更衣室を出ようとするアイツは、その瞬間ニヒルに笑ってアタシの肩に手を置いた。

見てただろ、
俺のこと


(バレてたなんて悔しい!)
(耳元でそんなこと言うとかあり得ないし!)
(ドキドキしてるなんて認めないんだから)


(2009)


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