俺様シリーズ | ナノ


 


 00. oneday/4月14日



「は?アタシがバイト?ぜーったい、絶対嫌!」

『ここのケーキ買ってきたら何でもするって言ったでしょ!お母さん2時間も並んだんだから』

「じゃ、じゃぁ要らない!」

『返品不可。食べたくて仕方ないくせに。お母さんから絶対命令』

「ぐっ…」

『明日から宜しくね』

「分かったよ、5日間だけだからね!」


ハァ、ついてない。
事の始まりは今朝まで遡る。


  □


お母さんが買い物に行くって言い出した。
行き先はアタシがずっと前から食べたくて仕方なかったケーキ屋さんのすぐ近くのショッピングモール。


「お母さん!そこ行くならケーキ買ってきてよ!」

『えー嫌だ面倒くさいってかんじー』

「何その言葉遣い。ギャルぶらなくていいし古いから!」

『古いとか失礼しちゃう』

「どーでもいいけどお願い!今日だったら絶対買えるの!!」


アタシが欲しいその店のチョコレートケーキは、朝イチで並ばないと買えないくらい有名で人気なもの。しかも1日10個限定ときた。
普段並んだって買えた試しなんかない。

でも、今日はケーキ屋が5周年記念だとかいって100個売り出すらしい。
朝から並びたかったんだけれど生憎外せないゼミがあって。学校が終わったらダメ元で並ぶつもりだった。


「買ってきてくれたらお母さんのゆうこと1個だけ聞いてあげるから!」

『えー、どうしよっかな』

「お願いお願い!一生のお願い!」

『…分かった、じゃあ買ってきてあげる』

「やったー!お母さん大好き!じゃあ行ってきます」

『いってらっしゃい』


そんな約束をしたもんだから、ケーキと交換条件で明日から5日間バイトをする羽目になったのだ。

行き先は親戚が経営してるコンビニ。
明日から5日間、バイトの子が冠婚葬祭で不在らしい。
冠婚葬祭は仕方ないけどいい迷惑。
ってゆうか普通それくらい他のバイトでなんとかなるでしょっつーの!

嫌だ嫌だなんて思っても、それでも朝はやってくる。


(2009)


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