俺様シリーズ | ナノ


 


 01. oneday/4月14日



「…あり得ない、」


授業中、堂々と足音を立てて廊下を歩くアタシも常識外れなのかもしれないけど。
だけど通り掛かる教室からは生徒も先生もこっちに注目して注意すらしてこない、それも非常識。
それよりもっと非常識なのは、


「ちょっと跡部君!」

『やっと来たか、遅ぇんだよ』

「授業中呼び付けて何なの一体!?」

『俺様に授業なんざそんなの関係ねぇ』


他の誰でもない跡部景吾ただ1人なのだ。
某お笑い芸人の台詞を普通にサラッと発言する辺りやっぱり可笑しい。その変人は社長椅子らしからぬフッカフカのどでかい椅子に座って肘をついて偉そうなこと極まりない。

偉そうな変人がしれっとした顔するのに溜息が出るのは、先生の声しか無い静かな教室に突如鳴るチャイムに一同が首を傾げると奴の声で『名字名前、今すぐ生徒会室に来い』だなんて校内放送を流しやがったから。
普通にあり得ない。


「…で、結局何の用な訳?」

『今からランチタイムだ。仕方なくお前を呼んでやったんだよ感謝しな』

「は?」


ランチタイム?
確かに時計はお昼の12時を回ってますけど、何度も言う様に今は授業中なんですよ?お分かり?
この授業が終わったらお昼休みなんですよ?大分間違ってません?

そんな常識的な突っ込みがアタシの脳内で繰り広げられる中、跡部君は指パッチン。
何かと思えばタブリエを来た男の人がぞろぞろ入って来てテーブルにクロスを引き、次から次へ料理を運んで来る。


「な、な、何これ…!」

『学校だからな、大したメニューじゃないが我慢しろよ』

「そういう意味じゃないから!」


テーブルに並べられたのは何処の高級ホテルのフルコースかっていう品々で、寧ろ何を材料に使って何を作ってるのかも理解出来ない。
これで大した事無いって、この男は普段何食べて生きてんの?超贅沢…ってそうじゃなくて。


『何だよ、早く食べろ』

「だからね、今授業中なんだってば!」

『アーン?』

「それに此処は学校なの!ちゃんと集団生活してお昼はお弁当か学食だって決まってるでしょ!?」

『俺様に指図するとは良い度胸じゃねぇか雌猫よ』

「指図じゃなくて常識範囲内の注意です」

『何言ってやがる、俺様が常識だ』

「ふざけないで」


どうやったらこんな性格に育つのか摩訶不思議だけどそれはこの際スルーして。
たかだかランチタイムの為だけにアタシは授業を中断させられて恥ずかしい思いをさせられたの?こんな男に付き合ってらんない…(この学校授業進むの早いんだから1時間抜けただけでサッパリなんだからね!)


「もういい、アタシ教室戻るから」

『何カリカリしてんだよ短気な女だな』

「誰のせいよ誰の!」

『待ちやがれ』

「、」


生徒会室から出ようと背中を向けると腕を捕まれて制止される。
そのまま顎を持たれてゆっくり顔が近付いてくるもんだからアタシの心臓は勢い良く活動しちゃって。
こんな非常識な男でも顔だけは良いから本当困る…!


『……お前、』

「な、何、」


お願いだから離して下さい。
このままじゃキスとかしちゃうじゃん?そんなの無理無理、っていうか美形は狡い!

これ以上跡部君を至近距離で見るのは心臓が保たない、ぎゅっと眼を瞑るアタシに奴はまたあり得ない一言を漏らすんだった。


『その性格…』

「、え?」


お前彼氏いないだろ?

む、むかつく。
ちょっとでもドキドキした自分が憎い。

(あったま来た馬鹿跡部!!)(アーン?親父の会社の取引先がお前の親父の担当だからから世話してやってんのに偉そうじゃねぇか)(アンタに言われたくないよ)(どうでも良いが早く飯食うぞ)(どんだけマイペースなの!)(アーン?この料理無駄にする気か贅沢な雌猫よ)(贅沢してんのも跡部でしょ!?その雌猫ってのも止めてよ!)(一言喋る度に威勢の良い女だな…なぁ“名前チャン”よ?)(そ、それも何かムカつく…!)



(20090522)


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