05. oneday/4月14日
アタシがプリクラ貼ったんじゃないんだよ、
そんな正直なこと言える訳もなくてひたすら夏目君に謝りっぱなしのアタシ。きっと明日から夏目君は眼を合わせてもくれないんだろう。そう思うとちょっと泣きたくなった。
『良かったじゃないか、名前』
「はい?」
『だから良かったなって言ってるんだよ』
「えと、それはどういう意味なんでしょうか…」
幸せも何処か違う世界に飛んで行きそうな深い深ーい溜息を吐くと、幸村はまたも訳の分からない言葉を発する。
その度に肩が跳ねて厭な汗がでるアタシの気持ちなんて分かってないんでしょうね…否、分かってるからこそやってる?(タチ悪すぎ!)
『無駄な芽は早く摘み取れってことだよ』
「え?」
『夏目に対する名前の気持ちは無駄で無意味、時間の無駄。嫌われたら諦めつくだろ?』
何て失礼なことを…!
挙句には『寧ろ芽を摘んでやった俺に感謝して欲しいくらいだよ』なんて言ってくる始末。
そりゃね、夏目君がモテる事は十分分かってるけど…だけどそこまで言う?しかもとびきりスマイルで『天気良いね』なノリで言う?
ここまで来るともう幸村には天晴れとしか言えない。そしてアタシはお疲れ。
「幸村ってさ、本当に凄いよね…」
『なんだよ今更、そんな分かり切ってること言われても嬉しくないんだけど』
「そういうとこマジで尊敬する」
天上天下唯我独尊、そんな幸村にそれこそ何を言っても無駄で無意味だし、勝てる訳ないんだ。
だけどせめて人権が欲しいと願うアタシもどうかしてる。
『まぁ大丈夫だよ』
「へ?大丈夫?」
『素直な名前は気持ち悪いけど、誰に嫌われても生きていける』
「何、その大袈裟な言い方…」
もう気持ち悪いって言われたことはスルーしたとして。
案外大袈裟じゃないかもしれない。幸村と一緒に居る限りアタシは幸村のオモチャとなり下僕となり皆から嫌われていく運命なのかも…(あ、人生終幕?)
『大袈裟なんてないよ、どうせ未来は決まってるじゃないか』
「今度は未来…?アタシの未来は既に決まってんの…?」
『はははっ当然だろ』
「…………」
アタシの未来は幸村の手中にあるってことでしょうか。
一体いつからこんな事になってしまったの?アタシ、一生彼氏出来ないどころか一生友達出来ない気がしてきた。
『名前は何だかんだ言っても俺が好きなんだろう?』
「………、はい?」
『夏目に嫌われようが誰に構われなくなったって、俺が仕方なく一緒に居てやるよ』
「え、え、え?どういう意味、」
アタシがゆっきーを好きだって?誰がいつそんなこと…!!
しかも孤独前提な上に仕方なく?幸村は何考えてんの?訳分かんなくなってきたんだけど!
『名前は俺離れ出来ないんだろ、いい加減認めろよ。っていうかそういうとこで素直になれって話だよあんぽんたん』
開いた口が塞がらないって言うんでしょうか、幸村がこんな勘違いするなんて。(だけど否定する勇気は無いからあんぽんたんでいいよ…)
それでも、
『何だよその顔』
「え?」
『名前に同情されてるみたいでムカつくんだけど』
「そ、そそんなこと、」
『せっかくずっと面倒見てやろうと思ってたのに』
「、ずっと?」
それでも、憂鬱そうな顔しながらそんなこと言うから。
なに、俺が間違ってるってわけ?
(これも幸村の愛情かと思えば許せる気がした)
(間違ってない、かな…)(……は?何偉そうに曖昧にしてんだよ)(ごごごめんなさい、やっぱり幸村が正しいよね!アタシが悪かった!)(じゃあやっと認めるんだ?)(認める認める、アタシは幸村に面倒見て貰いたいな!)(フーン、どうしようかな)(え、どうしようって…)(“お願い”するなら考えてあげるよ?)(…………)
(200904)
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