04. oneday/4月14日
今にもスキップしそうな勢いでニコニコ笑うのは閻魔様、もとい幸村精市。アタシからしてみれば既に魔王とか閻魔様とかそんな域を越えてて、正に“神の子”だと思う。
そんな機嫌の良い幸村はジョーカーを指で弾いてアタシに渡して来ては『バ・バ』なんて意味の分からないこと(それが怖いんだけど)言って、おもむろに手を伸ばしてくる。
「な、なに?」
『携帯』
「え?」
『携帯貸せよ』
それはお願いじゃなくて脅し、お金じゃないにしてもカツアゲされてる気分。
「けけ携帯どうする気?」
『どうするもこうするも名前には関係無いだろ』
いや、あると思います。っていうかアタシの携帯だし?最悪逆パカされたら堪ったもんじゃない…流石に幸村もそこまで酷い男じゃないと思うけど可能性は決して0じゃないんだから…
恐る恐る携帯を差し出すと、またもニコニコしながら親指をポチポチ動かした。
「ゆ、幸村、」
『なに』
「アタシの携帯どうするのかなーって…」
『だから黙ってろって言ってるだろ負けたんだから』
「そうかもしれないけど流石にプライバシーの侵害じゃ、」
『は?』
「すみませんでした」
『分かれば良い、っていうか始めから黙れよ』
「…………」
神様、何でアタシと幸村は出逢ったんでしょうか?一体何の為に?前世で何かしらしでかして、それの罪滅ぼしでしょうか?
立海にさえ入らなければきっと今頃楽しく青春送ってただろうに…
例えば四天だったら超格好良い部長居るし、氷帝もイケメン揃いだし…17にして人生の選択ミスチョイスだなんて哀しくなってくる。
『はい、いいよ返す』
「あ、ありがと、ございます」
なんて口に出せない事を考えてると意外にも早く帰って来たマイ携帯。
何でお礼言ってるのかも分からないけど、そこは深く考えずに変わったところは無いのかと適当に携帯を弄った。
『なんだよ警戒心強いな』
「そりゃそうで………え?」
『スッキリしただろ?』
自分がスッキリしてるんじゃんって言いたくなる顔してる幸村から帰って来た携帯は、
「で、電話帳が無い…!!」
電話帳に登録した友達何人かのデータが無くなってた。
『あるだろ、ちゃんと見ろよ』
「いやいやいや、テニス部メンバーと家族のしか無いし!!」
『十分じゃん』
「友達だって要るってば!!何てことするの!?酷い…!!」
普通にあり得ない。否、あり得ない事をするのが幸村ではあるんだけど。それにしても電話帳削除って……(しかも幸村の着信音は勝手にラヴソングに設定されてるし)
本当に信じられないし、ご丁寧に発着信履歴と送受信メールまで削除されてリアルに誰の番号も分からなくされてる…!ねぇ、何様なのこの人…!?
『うわ、うざ』
「へ、」
『口だけじゃ足らず頭ん中で文句ばっか言って超むかつくんだけど』
「言いたくもなるでしょ!?それに脳内くらい自由にさせてよ…アタシもうすっごいショックなんだから!」
『……へぇ、そんな事言うんだ』
「、」
次から次へと上からの物言いを並べる幸村にどうしたらそんなに自由に生きていけるのか、顔を顰めてるとタイミング良く(悪く?)携帯が鳴って取り上げられた。
『ははっ夏目からメールだよ』
「え!?夏目君!?ウソウソ何で!!」
気になるのに、さっき嫌われたはずの夏目君からのメールだなんて超気になるのに笑い声を出す幸村が無表情なもんだから携帯を奪い返すことなんか出来ない。(怖すぎでしょう)
『そんなに夏目のメール嬉しいんだ?』
「え、あ、いや、その…」
肯定したいのに素直に「はい」と言えないのは幸村の目力なんだろうか。肩が竦む思いのアタシなんか余所に、幸村は携帯の両端を持って笑った。
壊してもいいんだろ?
(やっぱり逆パカな運命なの!?)
(いいよもう、メール返せば?)(へ?)(どうせ嫌われてるんだし)(え……“何で勝手に人の携帯にプリクラ貼ってるんだよ。剥がしていいんだろ?”…何これ…)(俺が名前のプリクラ貼っちゃった)(ほほほ本当に馬鹿じゃないの!?何考えてんのよ幸村ぁぁあ!!)(誰が馬鹿だって?)(あ、アタシです…)
(200904)
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