03. oneday/4月14日
あれからバスケ部である夏目君に、体育館で部活をしてることを見越して携帯を届けに行った。
何を思ってかニコニコしながら着いて来た幸村に『名前が勝手に携帯弄ってたよ』なんて言われたもんだから夏目君に軽蔑の眼差しされたのは言う迄もない。(送受信メール1件ずつ削除したわけだし)
「明日夏目君と顔合わせられない…」
『はははっ名前ストーカーだって思われてそうだしな』
「アンタが言うな!!」
携帯を弄ってたなんてリアルにストーカーだと思われても仕方ないじゃん…大体、幸村が携帯盗んで来て勝手にメール送って来たんだからアタシが悪者になるのは間違ってるんじゃないの?間違ってるよね?っていうか幸村に謝って欲しいんだけど?だけどそんな事言えない、言ったら5倍(否、10倍かな)で返ってくるし…なんて理不尽なの…!!
『名前、勝負しようか』
「え?」
『勝負だよ勝負。鬱憤溜まってそうな顔してるし俺が負けたら何でも1個名前のお願い聞いてやるよ』
「ほほほ本当に!?」
『今の名前の顔、不細工過ぎて見てるこっちが気分悪い』
ど、どんな理由……!
また何を思い付いたのかと厭な汗が出たけど、理由はどうあれ幸村に勝てば謝らせる事も跪かせる事も出来るんじゃん…!!
希望に満ちて心臓がドキドキ激しく運動を始めるけどちょっと待って。アタシがあの幸村に勝つなんてあり得、なくない?
「やっぱり止める、幸村に勝てると思えない」
『大丈夫だよ、テニスは勝負見えすぎてやる意味無いし、トランプにするから』
「トランプ…ある意味運の勝負ってことね…どうしようかな…」
『っつーか拒否権あるわけないだろこれだから馬鹿って言われるんだよ』
「……………」
結局は今回も幸村の遊び相手に抜擢されただけな気もするけども。何はともあれ、アタシが勝てば幸村をぎゃふんと言わせられるんだ、そう思うと俄然気合いが入る。
『じゃあ時間掛かるの面倒臭いしポーカーでいい?』
「うん」
『では5枚ずつ配りますよ』
ここは公平に紳士柳生にトランプを切って貰って配って貰う。
流石に幸村にも手が(魔力が)出せないみたいで手元に並んだ5枚のカードを見るなり眉を寄せた。
よし、幸村は良いカード無いみたいだし…アタシの方はエースのワンペアがある。
残り3枚を交換して更にエースが来ればアタシの勝ち間違いなしじゃん?
「アタシ3枚交換する」
『俺全部』
「ぜ、全部!?」
『何だよ文句あるのか?』
「いや、無いけど…」
柳さん、全部交換したらペア揃わない確率高くない?アタシからすれば願っても無いけど…
最終的に交換した3枚はてんでバラバラで何もペアにはならなかったけど、あっても大した事ないペアだろう幸村には勝てる、そう確信して両者同時にカードを見せた瞬間、
「エースのワ『ストレートフラッシュ』」
「へ?」
『俺の勝ちだな』
「す、す、ストレートフラッシュ…?」
幸村のカードは何でだか綺麗に5つの数字が並んでて。
それを前にすればアタシのペアなんてどんなにちっぽけなものか。
「うう嘘!!絶対詐欺じゃん!」
『失敬だな、負け犬は黙ってろよ』
「だ、だって…!!全部交換したのに都合良くストレートだとか魔力使わないとあり得ないってば!!」
『運も俺に味方してるってことだな』
「本当に、あり得ない…やだやだ、幸村に(謝って跪きなさいって)言いたかったのに……」
勝利を確信しただけにショックは計り知れなくて、もし幸村が跪くまでしなくても謝ってくれてたら…きっと今までのことも水に流して良いくらい達成感とか満足感とか優越感に浸ってだろうに。
そう思うと、たかだかトランプ如きに涙が滲みそうだった。
そんなアタシの思いを知らないのか、若しくは敢えて知らないフリをしてるのか、
『名前ってば意外とヘタレなんだな』
「え?」
『俺に付き合って欲しい、くらい普通に言えばいいのに』
「は?」
何とも見事な勘違い発言を爽やか過ぎる笑顔で言いきった。
それはもう蘭麝が漂いそうな勢いで。
『まぁ負けた訳だし、普通に言われたところで返事なんかしてやらないけど』
俺に勝ってから言えよ
(アタシ何でそこまで言われんの?)
(それにしても名前は何やらせても駄目だな)(アタシって言うより幸村がちょっとおか…、凄すぎるんじゃないかと…)(伊達に神の子って呼ばれてないよ)(そうですね…)(そうだなー、名前の気持ちも分かったところで何してもらおうかな)(え!?)(負けたんだから当然だろ)(アタシが負けた場合のことは何も言って無かったじゃん!)(自分1人良い思い出来るなんて思うなよ何事もそれなりの代償があるんだ)(ええ……)
(20090428)
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