俺様シリーズ | ナノ


 


 04. oneday/4月14日



『到着、着いたでお嬢様』

「なんかソレ、ムカつく」


あーだこーだ言いながらも車はもう我が家の前。
今思えば学校から家路は短い時間だった。


『それより名前、独り暮らしやってんな』

「知らなかったっけ?1人で大阪に上京したの」

『阿呆。東京から来たんを上京なんか言わんわ』


言葉の例えを阿呆だなんて突っ込まなくていいのよ。これだから大阪人は。


「無理矢理だったけど、お礼言っとく。送ってくれて有難うオサムちゃん」

『ん、えーよ。気ぃつけて帰るんやで』

「玄関まで5メートルも無いんですけど」

『そこで油断したらアカン』

「油断って…」

『ええから早入り』

「はいはい、じゃあね」


玄関の前で何かあるとか聞いたこともないのに、心配性なのかしら!
部屋に入って開けっ放しだった窓を締めようとすると、オサムちゃんの車はまだ家の前にあって。


「え、どしたんだろ」


不思議に思ってると軽く小さな音でクラクションを鳴らして車は走っていった。


「………、部屋にちゃんと入るまで待っててくれたのかな…」


独り暮らしだから?
そんなことまで考えてくれるなんて、やっぱり大人だ。
悔しいけどそうゆう気遣い、じんと来る。
窓を閉めて昨日の残りのシチューを食べてながら今日の事を思い返した。


「凄い1日だったな、」


先生と生徒。
顧問とマネージャー。
ただそれだけの関係だったはずなのに今日1日でぐっと距離は縮まった気がして。
だけど本当にどうゆうつもりなんだろうか。
オサムちゃんが本気でアタシなんかを相手にするとは思えない。
歳だって10個も離れてるし、特別可愛いわけでもないし。

2週間で落とす、なんて言われたら嫌でも意識しちゃって。
アタシの頭の中は今まで見てきたオサムちゃんが巡り巡る。


「本当に惚れたらどうするのよ」


この場に居るわけでもないオサムちゃんに文句垂れてみて。当たり前だけど返事もなくて、誰も居ないんだって改めて思う。
シーンと静まりかえった空間に、寂しさを感じた。


「友達でも呼べば良かったかな、」


1人きりは慣れていたのに誰か居てほしい。
これがホームシックってやつかしら。
オサムちゃん、もう家に着いたかな…


「何でそこにオサムちゃんが出てくるのよ!」


♪〜

1人突っ込みをかますと不意に携帯の着メロが部屋に鳴り響いた。ディスプレイには知らない番号。


「誰、だろ、……もしもし?」

《名前?》

「え、まさかオサムちゃん?」

《当たりや》


正解やから1コケシな、なんて言ってみせて。
オサムちゃんから電話?
アタシの番号教えてないのに。
さっきバイバイしたのに、しかもこのタイミングでかかってくるだなんて凄い。


「なんか用ー?」

《そんな冷たい言い方すな》

「別に冷たい言い方なんて、」

《ご飯食べたんか?》

「今食べてた」

《そら食事中悪かったな》

「別に、いいけど」


温めたシチューが冷めきっちゃうほど呆けてたんだもん。
だから電話くらい、善いんじゃない?
そんなことは言わないけど。


「でも何で番号、」

《白石に聞いた》

「あ、そう」

《名前が寂しいーとか思っとんちゃうかと思てな》

「……………」

《ひくな阿呆》


用件はそれ?
アタシの考えてること、何でこうも分かっちゃうのよ!
ひいてなんかない。寧ろ感泣したいくらい。
だけど寂しかった、だなんてガキみたいなこと言えるはずなくて憎まれ口を叩く馬鹿なアタシ。


「オサムちゃん気持ち悪い」

《俺のどこがキショいねん》

「今日のオサムちゃん全部」

《よー言うわ…ホンマは嬉しくてしゃーないくせに》

「誰が!」


賭けたって
ええんやで


(ご自由に)
(なんて言ってみても)
(その賭けはハナからアタシの負けなのよ)
(貴方はズルい人)


(2009)


prevnext



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -