03. oneday/4月14日
時刻はPM7:45
部活も終わって部室で日誌を書いてるアタシ。
いつもは皆が待ってくれててワイワイ騒いでるってゆうのに。
『ゆっくり書いたらええで』
部室内にはアタシとオサムちゃんだけ。
今日に限って。
頭痛いらしいから俺が車で送っていくわ、なんて言うから。
皆も皆で俺等用事あるしそうしてもらいーなんて言って。
ああ、誕生日の為の打ち合わせなのね、嬉しい。でも、今日じゃなくてもいいのに。
「オサムちゃん、アタシ頭痛くないし、」
『そうやった?』
「うん。バリバリ元気、至って健康。だから、」
『出血大サービスで助手席やな』
送ってくれなくていい。
それは言わせてくれないのね。
「…オサムちゃん今日、おかしいよ?」
『なんで?普通やん』
「だって…」
今まであんな素振りなんて見せなかったじゃない。
どうして急にアタシのこと好き、みたいなこと言うの?(まだ好きとは言われてないけれど)
『お、日誌書けたんやな。ほな帰ろか』
「いや、だから、」
『名前、行くで』
「…………、うん…」
差し伸べられた大きな手を振り払うことなんてアタシには出来なかった。
車に乗り込むと、煙草の匂いでいっぱいで。オサムちゃんの匂いだ。変な感じ。
普段からお構い無しに煙草を吸うから、煙草の匂いなんて慣れてるはずなのに。無性に鼻につく。
でも居心地悪いわけじゃないの。
『シートベルトしたな?ほな出発やー』
「れっつごー」
『アカン、お前テンション低いわ』
「気のせい気のせい」
話を合わすだけのアタシに納得いかないような薄い目をこっちに向けた後、まぁええわっとエンジンをかけた。
そういえば、オサムちゃんの車に乗るなんて初めてだなー。
善いなぁ車、アタシも18になったらすぐ免許取りに行こうかな、なんて呑気に考えてると、オサムちゃんの手がにゅっと伸びてきた。
「!!」
ピー、ピー、と音を鳴らす車はバックしていた。
喰わえ煙草で助手席に手を置いて運転するオサムちゃん。
な、なんだ、バックするのに手置いただけ、か…
ビックリした……
思わず俯いちゃったアタシは変に緊張しちゃってバクバク言ってる心臓を落ち着かせるのに必死で阿呆みたいだ。
オサムちゃんは、至って冷静にハンドルをきって。無意識に目をやるとアタシはビクッと跳ねてしまった。目の前にはオサムちゃんの首。
すっと伸びた首筋に、また心臓は高鳴っていく。こんなところ、見たことなくて、やらしい。
あー!!お願いだから静まってよ!アタシの心臓ちゃん!
『………なん?』
「へ?」
『そない顔して…見惚れてた?』
「まっ、まっ、まさか!!」
『やっぱり普段やらんこと、してみるもんやな』
それってどうゆう意味?
バックする姿勢のことを言ってるのか、送ってくれてることを言ってるのか、言葉の意図は分からない。
けれどどっちにしてもアタシは善い迷惑よ!
『俺の事好きや、ってときめいたんやんなぁ?』
「は、ハァ!?う、自惚れないでよ、アタシはオサムちゃんが好きとかじゃない、し」
『ククッ、噛み噛みやん。そないなことで真っ赤になっとったら、』
いつまで
保つか見物やな
(ドキドキしたなんて)
(死んでも言えない!)
(きっと気のせいだもの)
(2009)
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