04. oneday/4月14日
『今日中には無理だね。また明日取りにおいで』
あれから、なんとか貞操を守りぬいて(キスなんて絶対無理)テニスショップに行った。
本当は帰りたかったけど、アタシのせいだしそれぐらい付き合うのが筋かなって。
すぐ直るって思ってたのに。
“また明日”
なんてこった。
「あー……」
『マスター、急ぎでも明日になる?』
「仁王君の頼みでも今日は無理なんだ、悪いね」
顔見知りなのか、親しげに話すマスターは苦笑してそう言った。
マスター!アタシからもお願い!
でも無理なものは無理なのだ。
□
「テニスしたがってたのに、明日も出来ないね、ごめん」
『気にしなさんな』
「だけど、したいんでしょ?」
『、それなりに』
仁王がそれなりに。なんて言うのは絶対したいってこと。
アタシの超したいイコールそれなりなんだ。
本当、申し訳ない。
「アタシのこと、怒っていいんだよ」
『何言うとんじゃ』
「だって迷惑かけたのに何も出来ない」
『………そこまで言うなら「キスは無理」』
チッと舌打ちした音が聞こえる。
このエロガッパが!
こっちは本気で反省してんのに!
『明日はラケット無し、か』
ボソッと辛そうに呟いた一言をアタシは聞き逃さなかった。
『スマン、ちょっと肩貸して』
「、いいよ」
こんな仁王、初めて。
後ろからアタシの肩に顔を埋めちゃって。
他の人だったらそんなことって感じかもしれないけど、テニスは仁王の全てなんだ。テニスしてる時の仁王を見てたら分かる。本当に、いつもと違うから。
今までの態度は強がりだった?
本当は落ち込んでた?
罪悪感がこみあげてくる。
ごめんね、仁王。
アタシの肩でいいなら幾らでも貸すから、元気出して。
明日の辛抱、だから。
「仁王、ごめん………って、」
『ん?』
「ちょ、ちょっとソレ、は…!!」
『このくらい許しんしゃい』
「えっ、いやっ、むっ、無理!」
確かに顔は肩にのってるけど。
仁王の腕はアタシのウエスト辺りにあって。つまり後ろから抱き締められてるわけで。
仁王の心臓の音がトクントクンって動いてるのが分かるくらい近い。
仁王の匂いでいっぱいになるくらい近い。
こんな、彼氏にもされたことない、のに…!(彼氏居たことないからだけど)
「ごめ、もう無理!耐えらんない!」
『駄目』
仁王の腕をどけようとするけど出来ない。
この腕は揺るまることをしなくて、これが男なんだって思い知らされる。
「お願い、お願いだから離してっ!」
『………そうじゃな。じゃあ、』
好きって
言うまで離さん
より一層腕に力が込められた。
(ちょっと仁王、それおかしいって!)
(そうでもないぜよ)
(お前さんやっぱり細いんじゃな。胸はそれなりにあるのに)
(離せ!馬鹿!変態!!)
(最高の褒め言葉)
(2009)
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