俺様シリーズ | ナノ


 


 03. oneday/4月14日



「あれ、仁王?」


放課後、帰り道。
目の前を歩いてたのは仁王だった。


「なにしてんの?部活は?まさかサボり?」

『よく分からんけど、休み、じゃって』

「へーそうなんだ。幸村君、なにがなんでも休みとかしそうにないのに」

『皆ビックリしちょった』

「アハハ、だよね」


ムカつくこともあるけど(尋常じゃなくかなり)こうやって普通に話せる仁王は嫌いじゃない。
ファンの女の子達には大人だとか魅惑だとか言われてるけど、案外普通の男子高生で。


「でもテニスしたかったんじゃないの?」

『そうじゃなー、せっかくテニスバックも持ってきとったし』

「なんか残念だね」

『まぁ明日もあるし今日はゆっくりするぜよ』


テニス、ねぇ。
アタシは運動まるっきり駄目だから出来ないけど。
でもうちの学校の女テニのユニフォームは超可愛いから入りたいなーとも思ったことがあった。
動機不順だし、続きそうにないから入部しなかったけど。


「あ、ねぇ!ラケット貸して!」

『…ほれ、』

「ありがと!1回ラケット持ってみたかったの」


素振りなんかしてみて。
あれ、ちょっと様になってない?アタシ。
これでユニフォームでもあれば文句なしなんだけど。


『下手クソ』

「なんですって?」

『何も言うとらん』

「バッチリ聞こえたわよ」


ムカーっときてアタシが仁王に抗議してると、

ガンッ!!!
ブチィ!!!

嫌な音が聞こえた。


「…あ、…………」

『……………』


仁王の、ラケットはブロック塀にぶち当たって。
ガットが切れた。
うわ……ヤバイ。


「に、仁王…」

『名前、お前さん』

「ごごごごごめん!本当ごめん!」

『……………』

「幾ら仁王だからってこんな酷いことするつもりだったわけじゃなくて、本当ごめんなさい!」

『…………』

「にお…」


仁王はラケットを取って切れたガットを眺める。無言で。
絶対怒ってる……!


「ごめんね、弁償、するから…」

『…、大丈夫ぜよ。ラケットが割れたわけじゃなか。ガットだけ張り変えたら』

「本当、に?」


もうアタシの馬鹿!
詐欺師だとかふざけた奴だけど、テニスだけは特別に思ってること知ってるのに!
自分のドジっぷりに嫌気がする。


『まぁ、弁償もいい』

「でも、」


落ち込んでたと思ってた仁王は。


キス一回で
許すぜよ


ニヒルに笑った。

(落ち込んでたんじゃないの!)
(何してもらおうか考えちょった)
(調子に乗んな!)
(壊したくせに)
(事故だもん!)


(2009)


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