俺様シリーズ | ナノ


 


 05. oneday/4月14日



何分経ったんだろう。
きっと1分。ううん、それより短いかもしれない。
けど、アタシには何時間も何時間も経ったような気がして。

キスしてる。
白石君と。そんな甘い余韻に浸ってる場合じゃなくて、アタシの身体は酸素を求めた。
苦しい!ドンドン、と彼の胸を叩くとやっと解放された。


「ぷはっ、ハァハァ…」

『………』

「どうして、」


身体中に酸素が行き届くと脳が働きだした。
何でこんなことするのって。
キス、だよ?
そんなの恋人がすることなのに…


『したかったからや』

「なっ…何それ!アタシの気持ちはどうでもいいの!?」


期待してた。
キスされたことはあんまり腹立たなかったんだよ。

“好きや”
そう言ってくれるって期待したのに。したかっただけ、って。アタシの心じゃなくて身体だけなんだ…


「もういい、今のは、忘れる」

『ハァ?!』

「だから白石君も忘れて」

『嫌や!無かったことになんかさせへん!』

「んんっ!」


もう一度されたキスは深くて深くて。
さっきの触れるだけのものとは比べものになんてならない。
白石君でいっぱいになる。
なんともいえない感情に、思わず一滴、涙が零れた。


『…………名前、そない俺のこと嫌いなん…?』

「!」

『泣きたなるほど、嫌やってんな…ごめん』


パッと唇が離れた瞬間、白石君は切ない顔で笑ってた。
彼の方が今にも泣いちゃいそうな悲しい顔。涙を堪えるその笑顔は、アタシがさせてしまったんだ。


『つきまとうの、今日で終わりする。ホンマは迷惑やって分かってたのに、名前の顔見たら止めれへんかって…』


また涙が溢れてくる。
アタシは白石君のそんな顔、見たくない。心から笑ってる白石君が見たい。
だから、終わりだなんて言わないで…


「止める、なんて言わないでよ」

『せやけど、』

「アタシ、白石君が名前、って名前呼んでくれるの嬉しかった」

『……………』

「不安、だった。ただからかわれてるだけじゃないかって」

『そんなわけあらへん!俺は…』

「いつか夢が覚める日がくると思って、ある日突然彼女出来ちゃったり、」

『名前!』


白石君は俺の話聞け、といわんばかりに強くアタシの名前を呼んだ。
真剣な眼差しは、白石君がテニスしてる時と同じ。
ドキドキ、する。その瞳でアタシを捕らえてくれるのが嬉しい。


「そんなん言われたら俺、諦められへんやん」

『、うん』

「調子、乗るで?」

『うん』

「……めっちゃ好きや…俺、名前のことホンマに好きやねん…」


本気で嫌がらんと、やめへんで?と抱き締めて離してくれない

(いいの)
(もっと強く抱き締めてほしい)
(本当は貴方が好きで好きでたまらなくて)
(貴方が欲しかった)
(今更だけど愛してる)


(2009)


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