04. oneday/4月14日
「……………」
『……………』
気まずい。
半ば強引に教室に残されたアタシ。
日誌も書き終えて、帰る気満々だったんだけれど。
白石君に阻止されて。断る術もなくおとなしくもう一度椅子に腰をかけたけど、それからはお互い黙り込んじゃって。
あのお喋りな白石君がだんまりとか、なんで?(妙な空気、流れてる気がするのは気のせいなんかじゃないと思う)
「あ、あの…」
『ん、どうしたん?』
「その、白石く『白石先輩!』」
『!』
アタシの言葉は、勢いよく開いたドアの音と白石君を呼ぶ女の子の声に消されてしまった。
“先輩”、ってことは後輩か。
『テニスコートに行っても居らんから、財前君に聞いて教室ちゃうかって言われて、』
『……なんか用事?』
『あっ、はい。話あるんやけどいいですか…?』
この雰囲気。
鈍いと言われるアタシでも分かる。
告白
間違いない。
白石君は一呼吸して、分かったって返答した。
話、聞いてあげるんだ…
『名前、』
「?」
『俺、行ってくるけど、待っといてな』
「…………」
そう言い残して女の子と教室を出ていった。
待っとけ?
……なんでよ。なんでアタシが白石君待たなきゃいけないの?
さっきの可愛い子に告白、されるんでしょ?
あの子にだって優しくするんでしょ?
自分に好意持ってくれてる子、無下になんて出来ないんじゃない。
アタシの脳裏には色んな妄想が膨らんで。
例えば、告白をオッケーするだとか。
“白石先輩、付きおうて下さい”
“うん、ええよ”
どうせ、そんな感じ。
アタシが知らないだけでモテる彼は他にもたくさん告白されてるに違いない。
なんだか泣きたくなった。
「馬鹿らしい…帰ろう…」
モヤモヤした気持ちが晴れるワケもなく、アタシは重い足取りで家に向かう。
明日、白石君の顔見たくない。
そう思ってると、後ろからバタバタ足音が聞こえてきた。
『名前!!』
振り返ると白石君が走ってきた。
会いたくない、のに。
アタシは前を向きなおして足を進める。
『なぁ、名前!』
「…………」
『待てや!』
「…………」
『待てって言うてるやろ!!』
肩を掴まれて白石君の方に向かされる。
「嫌だ!離して!」
『なんでや…何で先帰るん?待っててって言うたやろ俺』
「、待つなんて言ってない」
『なに怒ってんねん…』
「怒ってなんか…!」
『もしかして、あの子のとこ行ったんが気に入らんの?』
「!?」
今までにないくらい、白石君に腹が立った。
その言い方…どうゆうつもりなの!
もう、振り回されたくないの!
「もう、止めて」
『え?』
「アタシに構うの止めてよ!」
『いきなり何言うて、』
「アタシじゃなくてもいいんでしょ!?他に白石君のこと想ってくれてる子がいるじゃない!」
『………』
「アタシなんかじゃなくても…」
何言ってるんだろう。
腹が立ったとはいっても、これじゃあただの八つ当たりだ。
白石君だって、困った顔、してる。
だけど、そうゆう顔するってことは当たりなんでしょう?
『なぁ、それって嫉妬ちゃうん?』
「ちっ、違っ!そんなんじゃない、アタシはただ―――」
アタシが言い訳する間もなく。
反論はさせへん、と口を塞がれ息もできない
(苦しい)
(振り払いたくても)
(彼はアタシの顔をしっかり持ってて)
(されるがまま)
(2009)
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